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Posted by ブクログ
この本を手に取ったきっかけは、NHKのドラマ。
私自身、管理栄養士として働いたことがあるが、栄養士と言えば、学校や病院、保育園、給食会社、保健所が多く、刑務所栄養士の話は今まで聞いたことがなかった。
私が観たのは第二話で、「イカレモンフライ」なるメニューが出てくるのだが、それが西尾市の学校給食発祥だと紹介され田ため、「ん?愛知県の話?」とさらに興味が湧いた。
刑務所栄養士は献立作成が主で、基本的に調理はしない。調理をするのは受刑者で、厨房(炊場=炊事工場)に入れるのは素行の良い「優秀な」受刑者だけ。
しかし、調理経験がほとんどないものがが多く、「麺をゆでる時は、くっつかないようによくかき混ぜる」とか、「耳たぶくらいの硬さ」など、調理の常識やあいまいな指示は通じないそうだ。
数量に厳しく、公平に分けないと争いが起こるとか、バナナは闇タバコになるから禁止とかの話は面白かった。
著者の、「通常、栄養士は厨房の調理員さん達にあれこれ気を遣って働いてもらうが、ここではその必要はない」という言葉は新鮮だった。
Posted by ブクログ
著者は刑務所の管理栄養士。ご飯自体は刑務所内の受刑者自身が作っている。彼らを指導しメニューを考えるのが筆者の役目である。刑務所に入って初めて料理したという人も多い。生活に無頓着だ。刑務所内では一番の楽しみが食事なので、なるべく美味しく作りたい。
給食の調理場のことを炊事工場、略して炊場と呼ぶ。係は準備係、下処理係、炊飯係、揚げ物係にわかれている。炊場担当の刑務官は見張ってるだけ。炊場には素行の悪いものは配属されない。刃物や火もあるし、嫌がらせで異物混入などする恐れがあるからだ。作業報奨金も他部署より高い。夕方5時には食事が終わるので、朝まで空腹に耐えるのが大変。刑務所で毎日風呂に入れるのは炊場受刑者の特権。
バナナの皮でタバコができてしまうので、バナナの皮は禁制品。アルミホイルをコンセントで通電すると火が作れるので、アルミホイルもダメ。みりんはお酒替わりになるからダメ。調理酒もダメ。
祝日にはお菓子が配られるが予算60円。給食費も1日で520円。
Posted by ブクログ
この本、小説だと思っていたがエッセイだったのか…とちょっとガッカリしつつ読んだら、面白かった!
私も栄養士の資格を持っているので、この著者のマインドは共感しかない。
語り口もユーモラスなのでとても読みやすく、オススメです。
ほとんど料理出来ない受刑者たちが、限られた時間での安全な大量調理をするために、やむを得ずレトルトや冷凍惣菜を使用している。
しかしそういったものは割高なので、提供量が少なくなる。
受刑者たちは、我々の想像よりはるかに食事を楽しみにしているので、美味しく少しでも量を増やして、腹持ちの良いものを。と著者が工夫して受刑者を指導し、手作りのものや新メニューを取り入れていく。
その姿勢が素晴らしいと思った。
前科のある人を色眼鏡で見てしまう気持ちは、正直私にもある。
人となりを知らなければ怖いなと思うし、その人が本当に更生しているのか疑ってしまう気持ちもある。
だけど、黒栁さんの
『被害者が加害者を恨んだり許せないと思ったりするのは当然。でも、この本を読んでいる大多数の人は第三者ではないだろうか』
という言葉にハッとした。
積極的にかかわらなくても、忌避する必要もない。
願わくば、出所後の人生に幸あらんことを。
と思った。
Posted by ブクログ
「刑務所の献立ってどんな感じなんだろう?」
素朴な疑問から、手に取った本だった。
いちばん心に残ったのは、延長作業をする受刑者のため、一人40円以内でドーナツを二つ作る場面。
黒栁さんは自家製ミックス粉を工夫し、トッピングにも変化をつける。
ただ空腹を満たすだけでなく、食べる楽しみまで届けようとする心遣いが伝わってきた。
黒栁さんは受刑者たちを「炊事場の息子たち」と呼ぶ一方、近づきすぎない。
その距離感にも温かさがある。
愛情は、手間や品数を増やせば伝わるものではないのかもしれない。
大切なのは、差し出す側の満足より、相手が何を求め、どんな形なら受け取りやすいかを考えること。
料理に限らず、優しさとはたくさん与えることではなく、必要なときに必要なものをそっと渡すことなんだと思った。
Posted by ブクログ
面白かった。受刑者の食事ってこうやって作られてるんだな。知らない仕事がまだたくさんあるな。
限られた予算、不平等が一切許されない配膳、そして作るのは受刑者といったいろんな制約の中で奮闘していて大変だなと思うけど、著者はどこか楽しそう。
イカフライのレモン風味は美味しそう。愛知の味を確かめにいくか、自分でつくってみたい。
炊場の受刑者は受刑者の中でもエリートなのね。
調理師免許も取れるのか。
この刑務所はいつか出所する人が大半みたいだし、出た後に生活できるようにすることで再犯を防げるしいい仕組みだな。
受刑者の中には漢字が読めない者や字が読めない者もいるからとさらっと書かれていて、犯罪を犯してしまうのはきっとそういったもどかしい特性や生育環境が起因しているのかなと。明るい口調で書かれるから時折忘れていたけど、そうかこれは刑務所の話なんだと思わされた。
あと初犯の受刑者としか接していないとあったから、受刑者の中でも長期刑ではない初犯で反社との繋がりのない受刑者であること、そのうちのエリートが炊事場担当だから、そこまで受刑者っぽくないのかも。
網走監獄の白鳥も警察官に優しくされて態度が変わったらしいし、人間認めてもらって人に優しくされると、自分も優しくなるのかな。炊場はいい場だと思う。
著者の言葉ではないけど、
善意で教えるより、損得で教える方が早い。
いい言葉だな。本当にそう。善意なんて不確かなものに頼るべきじゃない。
刑務所や受刑者の生活の一部や、法務技官の栄養士のことを楽しく知れたいい本だった。
Posted by ブクログ
刑務所の栄養士として働く著者が、受刑者の食事作りや刑務所の日常を綴ったエッセイです。
タイトルだけを見ると少し変わった仕事紹介のように思えましたが、刑務所の食事は受刑者自身が作っていることや、限られた予算や厳しいルールの中で試行錯誤を重ねる様子が、ユーモアを交えて描かれています。
相手が受刑者だからと特別視するのではなく、一人の人間として向き合い続ける姿勢にも考えさせられました。
特に印象に残ったのは、刑務所という閉ざされた場所でも、食事一つで人の気持ちが少し変わることがあるということです。普段知ることのない世界だからこそ驚きも多く、ニュースだけでは見えてこない現実を知ることができました。
読み終えた後には、“更生とは特別なことではなく、誰かが当たり前の仕事を積み重ねることで支えられているもの”という気持ちが残る一冊でした。
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