【感想・ネタバレ】言葉の風景、哲学のレンズのレビュー

あらすじ

言葉のコミュニケーションは、希望と切実さと複雑さに満ちている。

「紀伊國屋じんぶん大賞2023」第2位『言葉の展望台』著者が贈る、最新哲学エッセイ!

「痛み」を伝える言葉、webの中の私の「言葉だけの場所」、「どういたしまして」の可愛さ、当事者視点からの語りかた、「からかい」が起きる場面、メタファーが見せてくれるもの、定義することへの懐疑、カミングアウトの意味とその先……。

さまざまな哲学の概念や理論はそれぞれが一個のレンズで、このレンズを使って見た風景と、別のレンズを使って見た風景と、その両方を通した風景はすべて違っているかもしれないし、そのどれかが正しいわけではないかもしれない。でもいろいろなレンズを通してみることで、裸眼で見たのとは違う風景の可能性に気づき、新しい仕方で物事を理解したり語ったりしていくきっかけになるかもしれない。(本書「はじめに」より)

【目次】
痛みを伝える
言葉だけの場所
「どういたしまして!」の正体
該当せず
からかいの輪のなかで
たった一言でこんなにもずるい
給料日だね!
言葉のフィールド
カミングアウト
ぐねぐねと進む
安全な場所ーー『作りたい女と食べたい女』
命題を背負う
一緒に生きていくために

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Posted by ブクログ

今読みたい本だった。
トランスジェンダーの方が更年期障害の治療のため婦人科で医療行為を受けようとしただけで、医師にセクハラをしに行こうとしてるんだ、露出狂なんだと決めつけられる国、
政治家が、同姓カップルなんて見たくもないと発言する国、そんな国に住んでいるんだなあと思った。
心や体に違和感を抱えている人が、心に合わせて生きようとしただけなのに医療機関に断られるのは、人権侵害だと思う。理解できない人たちを無理に理解させるのは難しいと思うが、理解できる人だけでも社会を変える努力ができたら良いなと思った。

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2024年12月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「会話を哲学する コミュニケーションとマニピュレーション」の作者のエッセイと知り、手に取りました。

日々のコミュニケーションのなかで引っかかっているけど上手く言語化できないことについて、コミュニケーションについて考えている哲学者だからこその視点で言語化されていると感じました。

印象に残ったのはあとがきで、筆者自身のことを「そんなに整理のついていないごちゃごちゃした人間」と述べていたことでした。
整理された人間なんていないのかも、と考えさせられました。

引用されていた「布団の中から蜂起せよ」にも興味が湧きました。

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2024年10月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

学問としての哲学のものの見方や考え方を、分かりやすい例えで噛み砕くことで問題提起してくれているのだけど、やっぱりちょっと難しくて…途中何度か音読しながら理解しようと頑張らないと読め進められなかった
ちょうどオリンピックで女子ボクシング選手の問題もあり、当たり前のことながら、一概に語れることではなく各々のケースによって状況は異なるけれど、まずは正しく知ること、考えること、思いやること、どうしても生じてしまいがちなコミュニケーションのズレを埋められるようになりたいと思った

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2024年08月10日

Posted by ブクログ

哲学は結構好きだけど、時折痛いところを突かれることがある。
日常的に言葉を扱っているくせに深く考えずに発言しているんだよな。
『からかいの輪の中で』を読むと、嫌な気持ちと後ろめたい気持ちが同時に沸き上がる。
何故あの子はあんな顔をしたのか。
どの言葉に引っ掛かりを覚えたのか。
答えを知る術は無いのに今でもモヤモヤすることは意外と多い。
毎度の事ながら、こういうモノの見方があるんだなあと気づかせてくれる三木さんの著書は好き。

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2024年02月17日

Posted by ブクログ

初めてこの著者の本を読んだ。
タイトルに魅かれて手にした。

言葉のコミュニケーション、
話し手の言葉は、その人そのものがどんな立場でどんな力があるかによって、聞き手の人に伝わり方が違うと思う。
時には、話し手の真意が捻じ曲げて取られることも少なくない。
とくにSNSの中では、いい事も悪い事、拡散される。

コミュニケーションをとる前提に、話し手と聞き手の人間関係がどうなのか、重要に思う。

著者がカミングアウトをして、家族や友人に受け入れられたことはとてもよかった。
母親は、幼少期からきっと気づいているものだけど。
世界中でたった一人でも味方がいれば、心強い。

よく、色眼鏡で見る、というが、
誰しも、レンズには多少の色は付いている。
哲学の透きとおったクリアなレンズで物事が見られたら、ありのままで受け入れられるだろうに。
法律や憲法ではけして決められない、人の生き方。
全ての人がその人らしく、ありのままで生きられる世の中になりますように。

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2024年01月07日

Posted by ブクログ

同氏による著書『言葉の展望台』が面白かったので本書を手に取った。どちらも哲学エッセイで面白いのだが、本書ではややカミングアウト後のトランスジェンダーの生き辛さに触れる私的な内容が多かった気がする。

哲学は視点を増やすと同氏はいう。ものの見方を多様化するには、いろんな角度から考える作業が役に立つのだろう。そうした「役に立つ」という利点に目を向ければ確かにそのような効用がある。私は、カントの永遠平和の思索が国連の理念に、マルクスの思想が社会主義国家を、ルソーの一般意思が共和制を、ジョンロックが議会制民主主義をという具合に、哲学が制度設計に繋がっている事例を考えると、個人的な利得の話に限定されない哲学の偉大さを感じることができる。

しかし、そんな壮大な視座ではなくとも、トランスジェンダーとして「ものの見方」に嵌まらない自分自身の生き辛さの方がよほど重要だという感覚も良くわかる。我々は世界平和よりも、先ずは自らが飢えず、暴力を避け、平和に生きられることを望む。

― 「からかいの政治学」では「からかい」が「遊び」の文脈にあること、それゆえ女性やその他のマイノリティへの攻撃に「からかい」という装いを与えることで、それに対する抗議を「おとなげないもの」や「理不尽なもの」として無効化する働きをすることが論じられていく。さらに女性がもともと性的な「からかい」の対象とされてきたがゆえに、女性解放運動への「からかい」に対する真面目な主張や抗議は、特有の仕方で意味を捻じ曲げられるという。

一文を引くが、「からかい」とか「茶化し」というのは私も日ごろから気になっていた内容だ。コミュニケーションのテクニックとして認められる部分もあると思うが、対象を自らの編集範囲の対象として捉えることで、自分自身を落ち着かせるために相手を利用する作法だという気がする。それは「あだ名」にも似ている。本来、私はあなたの世界の住民ではない。しかし、これらのテクニックにより、私はあなたの世界に無理やり引きずり込まれるのだ。そしてその世界が嫌だと拒む事が「おとなげない」とされる。これは暗黙の了解のような礼儀作法やマナーの延長にあり、それは、上下関係等の比較が前提としてあるものだ。

トランスジェンダーが否応なくこの上下関係に組み込まれるために、生き辛さを感じるのだろう。哲学のレンズは、異なる世界を見せる。時々、そのレンズを付け替えてみるべきなのかもしれない。

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2025年03月05日

Posted by ブクログ

言語哲学の本だと思っていたので、どの話にもジェンダーがベースに出てきたことに単純に驚いた。本の紹介文や「はじめに」に、記載しておいていただけるとありがたい。
哲学を実生活に落とし込むような試みが興味深い。失礼な言い方にはなるが、ごちゃついているような印象を受けるのも生活感があった。
色々と思考している著者と比べるとカケラも考えていない自分がヒトとして同時に生きていること自体、面白いなあと思うような内容だった。

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2024年12月30日

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