あらすじ
中央銀行の使命を歴史から問い直す
インフレ、雇用、金融危機――。経済の変化にどう対応すればよいのか。
ノーベル経済学賞受賞の元FRB議長が歴史を通して未来を展望する。
■現代の経済をコントロールする最強の権能をもつ中央銀行。その目指すべき姿を探るには歴史の扉を叩くことが不可欠である。
■なぜ1970年代、大インフレが生じたのか? ボルカーのインフレとの戦いを支えたアイデアとは? グリーンスパンをどう評価すべきか? バーナンキ時代の危機対応の真相は? イエレン議長の果たした重要な役割とは? パウエルの独自性とは?
■大インフレ、バブル、世界金融危機、低インフレ・低金利、そして、ゼロ金利の解除、金融不安定化、インフレへの対応、中央銀行としての独立性の確保――。連邦準備制度(Fed)は雇用の最大化、物価の安定を二大責務としつつ、いかにして経済・金融の変化に対処し、現在の姿にたどり着いたのか? そして、これから先に何が待ち受けているのか?
■連邦準備理事会(FRB)議長を務め、ノーベル経済学賞を受賞したベン・バーナンキが、自らの議長時代を含む過去70年間のFedの政策立案の歴史を解き明かす。あわせて経済環境が劇的に変化するなかで、21世紀におけるFedの金融政策の手段、枠組み、コミュニケーション戦略の劇的な変化、そして新たな課題を示す。
■また、量的緩和、フォワード・ガイダンスなど、世界の中央銀行の中でイノベーティブな政策を次々と先駆的に打ち出した日本銀行の政策についての評価も行う。
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Posted by ブクログ
過去30年ぐらいにわたる金融政策の変遷(基本的哲学、制度、技術)などについての素晴らしい解説。研究者でありFED理事会議長の双方を経験した人でないと書けないような書。
Posted by ブクログ
アメリカ連邦準備制度理事会の第14代議長を2006年から2014年まで務めたベン・バーナンキによる米国の金融政策に関する本です。世界最大の経済であるアメリカ中央銀行総裁によるリーマン危機時の対応や、20世紀の歴代議長に対する評価、現議長であるパウエルによる金融政策の舵取りに関して記されており、とても興味深く読みました。
連邦準備銀行(FRB)のReserveとは、市中銀行がFRBに保有する預金を指し、FRBの負債に計上されます。資産としては、米国債、MBS(GSE-Government Sponsored Enterprises, Fannie Mae, Freddie Mac, Ginnie Mae e.g.の発行するMBSで政府保証付き)や、市中銀行への貸付金などが計上されます。
市中銀行は、Federal Funds Rate (FFレート)を利率として、資金を融通し合います。FRBは、市中銀行の保有するReserveを増減させることにより、その利率を調整してFFレートに影響を及ぼします。保有する米国債などを市場で売却することにより、市中銀行のReserveは減少します(米国債購入者がFRBに支払いを行うため)、Reserveの総額が減ることにより市場流動性が減少し、FFレートが上昇する仕組みです。Reserveを増やして、市場に流動性を供給することによりFFレートを下向させるときには、米国債などをFRBが購入し、その代金をReserveを通じて支払います。この一連の取引は、FRBのOpen Market Deskが、primary dealerと執行します。
一般に、FRBの金融政策が、失業率をターゲットにしている状態をDoves, インフレ抑制に動く場合を、Hawksと呼びます。
こうした一般的な中央銀行の金融政策を踏まえ、バーナンキは21世紀における先進国の中央銀行の政策が何を中心に据えるべきかを述べています。一般にも読みやすくかみ砕いて説明をしており、彼の明晰さが伝わってきます。