【感想・ネタバレ】歌われなかった海賊へのレビュー

あらすじ

1944年、ナチス体制下のドイツ。父を処刑されて居場所をなくした少年ヴェルナーは、体制に抵抗しヒトラー・ユーゲントに戦いを挑むエーデルヴァイス海賊団の少年少女に出会う。やがて市内に建設された線路の先に強制収容所を目撃した、彼らのとった行動とは?──本屋大賞受賞第一作/電子書籍限定でカバーイラスト全体を特別収録

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Posted by ブクログ

ネタバレ

自らの誇りを胸に罪のない人々の命を守ったエーデルヴァイス海賊団の活躍に胸を打たれたし、反対にそういったものから目を背け続けた大人たちの振る舞いには憤りを覚えましたが、果たして自分が同じ立場に立った時どちらの行動を取るのか考えたらやはり自らが生き延びることを最優先にしてしまうと思いました。そういった意味でもこのような悲劇は繰り返されるべきではないし、クリスティアンとムスタファのように次の世代まで引き継いでいくことが大切だと思いました。

あとレオンハルトからの手紙であり得ないほど泣いた。
ドクトルも疑ってごめん、1人だけ本名明かされないしなんかどんでん返しあるのかと思って読み進めてたけど結局めちゃくちゃいい奴でした

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2025年10月31日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 物語の至る所に伏線が散りばめられていたり、動きのある場面には迫力があったり、まずエンタメ小説として面白かった。
 それだけでなく、深く考えさせられる小説だった。人種や信条で人々を恣意的に区画し、差別を行なったナチだけでなく、自分の知る枠組みの中で勝手に相手を理解した気でいる人々の傲慢さも、当時のマイノリティを苦しめていたのだと感じた。後者は特に現代を生きる私たちにも通ずるものがあり、理解しないでそっとしておく優しさを見習いたいと思えた。
 また、大人たちが自己防衛の為に口をつぐんで目を背けた事実が語られず、歴史から消えていく様が鮮明に描かれていた。しかし、それでもフランツはヴェルナーたちがナチに抗ったという事実を音楽とともに次の世代へ繋ぐことが出来、そこに救いを感じた。自分の郷土史の中にも知られざる物語があるのかもしれないと思いを馳せるきっかけになってくれた小説だった。

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2025年10月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

鳥肌が立った。

丁寧で細やかな文体は全く長さを感じさせない!
展開が読めないので、先が気になってやめられない。
悲しい結末だけど、希望もあるような終わりだった。

戦争の悪影響は、世代を超えていく。
改めて恐ろしさを感じる。

表紙が3人なのは、理解できるような少し寂しさも感じるような気持ち。

素晴らしい本をありがとうございます。

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2025年09月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

誰しもが心の中で思っている「都合のいいことだけ信じたい」「自分は何も見てない聞いてない」という"見て見ぬふり"こそが、戦争やいじめの根幹にあるのだと感じた。今までは忠実にナチスに従っている大人が都合よく敗戦後のことを見越して"おとぎ話"を作っている場面に震えた。こういう八方美人が大多数で得するんだろうな。

レオンハルトお前…手紙で大泣きした。

戦争小説であり、青春小説であるけど、多様性だと言って他人を理解した気になってる現代社会への風刺でもあると思った。

「歌われなかった海賊たちへ」たしかにあの時のエーデルヴァイス海賊団の子たちは、見て見ぬふりをされたかもしれない。たしかにあの時のフランツは歌わなかった住民かもしれない。だが、これからの未来に、エーデルヴァイス海賊団の4人が、エルフリーデの歌が、歌われる日が来るのを願って。

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P107
「そうやって、自分が見た他人の断片をかき集めて、あれこれ理由をつけて、矛盾のない人物像ができあがると錯覚して、思い上がって、分かろうとして、理解したつもりになる。そうすればあとは簡単だ。人を集めて、種類に分けて整理して、一つの区画、一つの牢屋に追い込んで、服に貼った標識見て安心するんだ。私はそんなに傲慢じゃない。そうだ、私はそんなに傲慢じゃないし…」

P149
「私たちは、ドイツを単色のペンキで塗りつぶそうとする連中にそれをさせない。黒も、赤も、紫も黄色も、もちろんピンクの色もぶちまける。私たちは、単色を成立させない、色とりどりの汚れだよ。あいつらが若者に均質な理想像を押しつけるなら、私たちがそこにいることで、そしてそれが組織として成立していること、ただそのことによってあいつらの理想像を阻止することができるんだ。バラバラでいることを目指して集団でいる。だから内部が単色になることもなければ、なってはいけないし、調和する必要もないんだ」

P363
「人は、自分が受け取った他人の、断片化された一面をかき集め、空白を想像で埋め、矛盾のなさそうな「その人らしきもの」の像を組み立てる。そして自ら作り上げた虚像を眺めることで、他人を理解したつもりになる。」

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2025年08月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

一気読みでした。途中で投げ出すなんて考えられず家事をしながら早くこの世界に戻りたいと時には苦しくなりながら、終わりが見えないで欲しいと思いながら読んだ。人は断片的にしか見えないのにどうして決めつけられるであろうか、自分を守ろうとするあまりにここまで人は滑稽になれるのだろうか。ハッとすることが度々あった。
歌わなかった市民たちが憎いと思ったが完全に責められる訳でもなく、私も同時代にいれば共犯者なのでは無いかと考えさせられた。
決して昔の話ではなく、現在も形を変えて問いが存在しているのだろう。
大きな問題に圧倒されながらも未来志向の姿勢に自分も鼓舞されているようだった。

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2025年08月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

本当にナチスの支持者でない人たちが反体制的な活動をしていたかはわかりませんが、今もある複数企業が間接的にナチスを支援していたってことは覚えておくべきだし、多くの人が見てみぬふりをしていたってのは自分も振り返るべき話だなと思いました。戦時下で、勇気ある行動をとった主役3人はもちろんですが、ドクトルもフランツもカッコよかったです。
フランツについて、ずいぶん自分を卑下するような書き方をするなと思っていたら、フランツが書いたという設定だったからなんですね。しかし、フランツが死んで、役所の人にこれまでの活躍が評価されてて、あれから並々ならない努力があったんだろうと思うと、人は変われるんだなをいう希望を持たせてくれます。ヴェルナーやレオンハルトたちの意思は引き継がれてるんだなって思いました。
人種差別に限らず、昨今話題にされる性的マイノリティーなどにも触れられていて、昔の話しながら今を考えさせられる話でした。

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2025年08月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

なんと表現すればよいのか、読み終えて体の力が抜けてしまいました。

ナチス体制下のドイツを舞台に、反ナチスの象徴的存在として描かれるエーデルヴァイス海賊団の物語。

一面を切り取れば、少年少女の冒険活劇とも思えるし、そんな感じの疾走感と爽やかさと儚さでサクサクと読んでいけるのだけど、その背景にはファシズムやユダヤ民の強制収容と虐殺といった暗い影が覆っていて、とにかく心を揺さぶられっぱなしの読書時間でした。

同性愛、反体制、戦時下の反戦、様々なマイノリティたちが描かれていて、マイノリティの立場で正義や信条を貫けるかという問いかけをずっとされている感覚でした。

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2025年07月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 逢坂さんのちょっと前の作品。疑問なのは、なぜ逢坂さんは外国を舞台にした作品を書くことができるのかってことです。海外旅行すらしたことがない自分には、現地の人が読んだらどう思うのかとても知りたいです。

 エーデルワイス海賊団というのは実在したらしいです。日本なら中学生ぐらいでしょうか。ナチスのやり方に疑問をもち、抵抗した若者たちがいたのですね。もしこれがほぼ史実なら、ドイツでさえ日本ほど徹底した管理社会ではなかったって思いますね。食べ物に不自由している様子もないし。

 逢坂さんの文章はとても読みやすく、小学生でも高学年なら読めそうです。これからもどんどん戦争などの題材を扱ってほしいですね。

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2025年07月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「同志少女」が良かったので読んでみましたが、
前作ほどではなかったです。
題材のスケールはやや小さくなったし、
いろいろ話がややこしい。
前作もそうだったけど、同性愛の描写が出てくるのが好きじゃない。前作のは意味があったと思うけど、
今作のそれは不要な印象でした。
2寄りの3

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2025年09月06日

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