【感想・ネタバレ】歌われなかった海賊へのレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

冒頭で、フランツ・アランベルガーの自宅にある「歌われなかった海賊へ 歌わなかった住民より」と書いてあるプレートの意味が分かったとき、フランツがただの変な人ではなく、自分なりに葛藤してエーデルヴァイス海賊団について伝え続けてきたのだと知ることができた。
フランツは児童文学作家であり、戦災孤児の支援や教育支援を惜しみなく行っていたのに、彼を偏屈と捉えていた市民が多く、誤解が解けないまま亡くなってしまった。
「だめなんかじゃないよ、ってアランベルガーさんさ言った。君が悩んでいるのは自分の正体を見つめようとしているからだ。とても真剣に生きているからだって。そして君のように、少数派である人が思うままに生きていけるかどうかによって、社会がどの程度上等か分かるんだよ、って。俺はそれを知っているんだって…」

この本は戦争と現代をつなぐ話だった。戦争中の描写に今現在にも通じるところが多く感じた。ドイツ人が収容所の存在に薄々気づいていながら、そこで大量に人が死んでいることに冷淡になれるところ。
私たちはガザ地区で、ウクライナで、多くの一般市民が、子どもが殺されていることについて非常に冷淡になれている。このことをおかしいと命をかけて発言できるヴェルナーやレオンハルトのような海賊がいま必要なのかもしれない。
歌わなかった住民が歌う日が日本にも訪れますように。

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2024年05月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ところどころにレオは同性愛者なのかな?と匂わせる描写があったのですが、まさかヴェルナーに助けられてたヒヨッ子だったとは…
そんなんされたら恋に落ちちゃうよね〜と思いつつ、彼らの運命的な出会いと悲劇的な別れは“おとぎ話”のようだなと。
でもこのおとぎ話はナチの望むものでは決してない。彼ら自身のもので、語り継ぐフランツのもので、そのわずか一部分を我々は読ませていただいているんだなと思いました。
ウクライナやパレスチナ、今も世界のあちこちで大変なことになっていますが、皆が文化を共有していつか共存できますように。

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2024年05月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

前作『同志少女よ敵を撃て』に続き今回も自身の在り方を問われる作品だった。
ユダヤ人虐殺はもちろん知ってるけど、でも残酷なリアルを知りたくなくて目を背けていた。いやいまも背けてる…。そんな見ないふりをすることさえ罪であると本作では言われてて、世の中の大多数の人が当てはまる傍観者な人間には訴えかけてくるものがあった。

作内でアマーリエ・ホルンガッハー先生は偽善者の悪人のように書かれてたけど、大多数の人はこの人のようだし、この先生だって実際悪人ではないよなあ…こう言ったらあれだけど海賊団のみんなは若いから他に守るものもなくて危険なこともできたけど、先生はもしナチスに背いて犯罪者になったら自分だけでなく家族も巻き込んでしまうかもしれないから見ないふりするしかない。
先生は確かに貧しい家の生徒に自分の食糧をわけてあげるという善性は本物だったわけだし…

後半の防空壕でヴェルナーたちはレオンハルトたちを助けるために警察へ抗議してくれって訴えたけど、それはもしかしたら犯罪者として自分も罰せられるかもしれない危険があったんだからあそこにいたのが自分でもやっぱりヴェルナー側にはつけなかったかなと思う…だってそれで死ぬことって結局シェーラー少尉の少年たちが戦争で死ぬことこそ正義ってのと同じな気がするんだよな…
でも歴史を変えてきたひとたちは沈黙せずに行動してきたひとたちだから戦うことって本当に難しいなと思う。

歌われなかった海賊へ、歌わなかった市民より。フランツ・アランベルガーさんの看板の意味が後半わかると、過去の戦争を過去のこととしてのうのうと生きてるわたしたちも責めてるのかなと思った。

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2024年04月12日

Posted by ブクログ

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 『同志少女よ、敵を撃て』に衝撃を受けて、その筆者の第二作目ということですぐに買ってしまった。
 途中まで読み進めて、なにか物足りなさのような、重厚感の不足のようなものを感じたのが正直なところである。前作『同志少女よ、敵を撃て』が、戦争という渦の中心で戦う者たちの物語であったのに対し、どちらかといえば今作は戦争という渦の外側・戦争というものの陰で苦しみを抱え、それに抗う者たちの物語というスケールの段階から差を感じたために、そのような感覚を覚えたのかもしれない。『途中まで読み進めて』と申し上げたが、最後まで読み切る頃には前作とはまた違った面白さを感じることができた。
 前作と比較して、今作にしかない魅力は、現代と過去両側面から物語が描かれていることだと思う。物語に占める現代パートの割合は多いわけではないが、それがあることによって過去についての物語が単なる過去についての記述にならず、『文化』として現代へと継承されていく様を生き生きと感じることができた。エーデルヴァイス海賊団の題名のない歌が、現代へと継承されていく希望を感じさせつつ本作がエンディングを迎えることもその最たる例だろう。
 内容に関していえば、ナチスドイツという巨悪との戦いを軸にしているというわけではなく、人々の心の中の虚構を中心として話が進んでいくというところがまた前作との差ではないだろうか。今作の中で印象的だった『コインの裏表』という表現。
・祖国において理想とされるもの(理想的なアーリア人の在り方など)はコインの表
・そうでないもの(エーデルヴァイス海賊団を含む)はコインの裏
として、ナチスがコインの表側だけを人々に見せようとしていたこともまた事実であるが、実際には人々もナチスがコインの表側だけを見せようと画策していたことに薄々は気づきつつも気付かぬふりをして、さらにはコインの裏側が見えそうになれば自らコインを元に戻して表だけを見ようとした。『自分たちは騙された被害者だ』と主張する者たちも、実際には騙されてなどいなかったのだ。自分にとって都合の良い表側だけを見ようとして、都合の悪い裏側は見なかったことに、見えないことにする。今作ではナチスが見せようとしたコインの表側に限らず、そういったコインの表側という虚構を作り出し、それしか見ようとしない人々に対する『エーデルヴァイス海賊団』の存在を中心に物語が進行していく。(彼ら自身もまた虚構を作り出していた)
 どうしても、前作との比較で今作を読んでしまったこともあり期待通りの一作とはいえないにしても『歌われなかった海賊へ』はその作品単体で見ればやはり素晴らしい。前作からの筆者の表現力は健在であり、色鮮やかに本の中の世界を私たちに伝えてくれる作品であったと思う。

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2024年05月19日

Posted by ブクログ

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【前作「同志少女よ、」よりも現代人が自分ごとにして考えることができる作品】と感じる。
今、作中のような状況になったとしても、きっと自分は、駅舎で列車から伸びている腕を、見て見ぬ振りをするおじいさんのように立ち振る舞う。それこそが賢い生き方だ、あの子達は愚かだと自分や周りに言い聞かすことで自己を正当化させるだろうなと。この本を読むまでは、その状況に違和感を覚えなかったかもしれない。

結果、“賢く立ち回った”人たちが平穏な暮らしに戻り、自由のために戦った人たちが、絶望にも似た感覚を覚えて戦後を迎えていたことに胸が締め付けられる思いだった。現実的だがやるせない。
またこの作品は、今現在、他の地域で起きている事柄に重ねて考えることができる。よくできた作品だと思った。

追加:「関心領域」という映画にも通づるものがある。また別の角度からの作品。

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2024年03月19日

Posted by ブクログ

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ナチス政権下において、その統制に反発して生まれた14〜18歳程度の若者達のグループの1つ、エーデルヴァイス海賊団のメンバー、ヴェルナー、レオンハルト、エルフリーデ、ドクトル、フランツによる、強制収容所に繋がる鉄道のトンネル、橋の爆破に至る物語。
政治的、思想的信条を持たない彼等が何故命懸けでその様な行動をしなければならなかったのか。それは、表向き人々に隠されているとは言え、皆気付いている筈の虐殺を彼等が実際に目にしてしまったから、と彼等は言う。
支配する体制側について巨悪も見て見ぬ振りをせざるを得ない多くの市民、大人に対して、自由を求める若者特有の純粋さの為せる技か(勿論、若者といえど多くは体制迎合であろうが)。

改めて映画「関心領域」を早く観たいと思った。

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2024年04月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

終戦間際のドイツ、エーデルヴァイス海賊団の物語。

自分の正義を貫く少年少女。
見習うべき姿があるが、自分にはそんな度胸はない…

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2024年04月07日

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