あらすじ
米中交代のシグナルはどこを見れば分かるか。
過去の類似する時期を学べば、これから起きる事に対応できる。
世界最大のヘッジファンド、ブリッジウォーター・アソシエイツ創業者が、世界秩序のサイクルを明かす。
●伝説的投資家で世界的ベストセラー『PRINCIPLES』の著者レイ・ダリオは、半世紀以上をかけて世界各国の経済とマーケットを調べ上げてきた。その彼が、過去500年に起きた政治的・経済的な激変を研究し、現在に生きる人々が経験したことのない根本的変化が、将来、発生し得ることを解説する。だが、これらの激変は、過去の類似する時期に起きてきたことなのだ。
●数年前、ダリオはこれまで経験したことのない大きな出来事を目撃した。巨大債務と、ゼロあるいはゼロに近い金利が同時に生じ、世界の3大準備通貨で大規模な金融緩和がなされた。過去1世紀で最大と言える経済的・政治的格差と価値観の相違により、各国で大きな政治的・社会的な対立が生じた。それはとくに米国で顕著だった。新たな世界的勢力(中国)が興隆し、既存の世界大国(米国)と世界秩序に挑戦するようになった。これらにもっとも類似する出来事が起きたのは、1930~1945年だ。これを目の当たりにしたダリオは、過去500年の主要な帝国とその通貨の興亡を研究し、その盛衰の背後にあるパターンと時空を超えた因果関係を探求した。その成果が、本書である。
●パートIでは単純化した典型的な帝国の興亡を解説。パートIIでは過去500年間に準備通貨国となったオランダ、イギリス、米国について深く掘り下げ、さらに米中対立についても1章割く。パートIIIでは、これらすべてが将来にどういう意味を持つかを論じる。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
ブリッジウォーターアソシエイツの創業者がまとめた世界予測の本。予測と言っても根拠なく未来を予想するのではなく、過去の歴史を振り返り教訓とすることで、未来をあゆむための方策、対策を考えて備えることが大事だとある。
未来は予測不可能であるが、歴史は繰り返されるどの前提で分析されており、納得出来ることが多かった。今後を生きる上で1番大事だと思ったのは、全ての通貨は切り下げられるか死んでいくと言うこと。円通貨ベースで資産総額を評価することがどれだけ意味があるのか?を考えさせられた。
Posted by ブクログ
国の隆盛と衰退を経済史から紐解く
資本主義(株式会社と証券取引所)を生み出したオランダ帝国、産業革命からの大英帝国、第二次世界大戦からアメリカ帝国、そして百年国恥を経た中国へ
歴史のビックサイクルからこの先を見通す
「なぜフランスではなくイギリスが覇権をとったか」は大変興味深い。このまま中国が次の覇権国塚になるのか、それとも別の勢力が待ったをかけるのか。ただ台湾は「一つの中国」=レッドラインと思われるし、資源獲得という昔からある典型的な戦争の火種として南シナ海の覇権問題から、このままだと遅かれ早かれ米中の戦争に至るというのが歴史のサイクルから見たメインシナリオであることは恐ろしい。
Posted by ブクログ
--
歴史上の覇権国のアップダウンを一般化して、
現在の米中関係について語ったもの。
覇権国は力と金が全てで、通貨は重要な位置付けされており、
基軸通貨含めた全ての通貨は、
ハードマネー→兌換紙幣→不換紙幣
と流通性が増し、債務のインフレにより価値の切り下げや最悪の場合破綻まで進む
受け取る金利がそのリスクに耐えているかは常に確認する必要あり
(切り下げは偶発的かつ非漸進的に実行される)
産み出した債務が生産性向上や投資収益獲得に有効的な場合のみ、健全的に世界が回りバブルにならない
債務サイクルの観点からは、米国が覇権を維持するのは厳しく、中国に抜かれるのは時間の問題とのこと
(強みは経済軍事教育通貨のシェアが依然首位、という爆アドだけ)
--
資本主義のプロパガンダか感情的な偏見か、
中国という社会主義国が世界を牽引する姿が見えなかった
が、
過去の論理展開的にも米国の衰退、つまり中国の成長はなるほどありそうと思ってしまった
因みに人生の中で覇権国が変わる経験はないため、現状からの変化は想像しづらいらしい
米国日本の両国で不健全なインフレが進んでいる以上、
通貨価値や生産性向上上昇も見込める投資をしたいが
それが中国、、、?
本筋ではないがこれを書いてて、
社会主義についても考えさせられた
Posted by ブクログ
内容は文句無し。膨大なデータに基づいた分析から、債務問題がいかに国家を不安定させるか、議論の余地無く示している。経済にフリーランチは存在しないのだ、と言う当たり前のことを改めて思い起こさせてくれる。当たり前なのだが、この現象から逃れられた国家が存在しない、と言うことは、もう少し重く見られても良いと思う。
国内で消化していようがいまいが、債務問題を抱えていれば、いずれは通貨の価値が下がることは避けられない。だからこそマネタイゼーションが禁じ手とされている訳だし。資本主義、市場主義である限り、"This time is different" などは結局、存在しないのだろう。
個人の資産運用に置いても、債務性資産やドルをどの様に持つべきか、どうすれば決定的な破局を回避できるか、という点は、ダリオ氏の言う通り、今後は益々大事になるだろう。もっとも、個人でピュアアルファファンドのような高度な分散は無理だろうが。
気になるのは、アメリカに代わる覇権国家として中国、ドルに代わる基軸通貨として元を考えているところ。データからはアメリカの衰退を予想せざるを得ず、努力しても衰退を緩やかにすることしか出来ない(衰退を避けられた国家はない)わけで、それに代わる国家としてはデータ上は中国しか無い、というのは理解できる。だけれども、ダリオ氏は本当にそれで良い、と思っているのかが分からない。
そこから先は信条になってしまうので、資産運用と言う分野では障害になってしまうのだろうが、あるべき世界かどうか、と言う問いから逃れ続けることは出来るのだろうか(この辺り、パッシブ投資の没倫理性とも根を同じくするが)。
中国が長期的視野に立って国家運営しており、他国との無駄な軋轢を可能な限り避ける戦略を採っている事は一見素晴らしい事ではあるが、それらは(少なくとも現時点では)あくまで強権的な支配体制を成り立たせる為のものでしか無い。そんな社会にしたいのか、と言う問いを投げてみたいと思うのは、不躾なのだろうか(なので、開発中というAIダリオにちょっと期待)。答えの無い議論を避ける為に敢えての事と思うが、その辺りの意見を全く書いて無いのが、個人的には本書で唯一の不満であった。
もっとも、古代ギリシアでも寡頭制が最良と考えられていた時はあったので、もしかすると、気候変動等も含めて混迷の度を深める時代には、政治体制すらもここ50年ほどの考え方とは変える必要がある、という事かも知れないが。