【感想・ネタバレ】負けくらべのレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

シミタツ節が円熟味を増して帰ってきた!
訊けば、御歳86歳にして書いた傑作国産ハードボイルド。年齢を聞かずして読んで「変わってないなぁ」と感じていたのだが、登場人物たちの大半が60歳以上、それでも自分より年下ってことだからなぁ。

ハードボイルドって言うても、派手なアクションシーンは後半を除きほぼなし。それでも登場人物たちの生き様だけで十分ストイックで渋くて危険な香り。介護職の家族思いの60代おっさんがこんなにカッコ良く描けるってのは、ほんまシミタツならでは。

しばらく時代小説に傾倒されてはったようだが、現在舞台の小説もまた描いてほしい、もちろん量産とはいかないだろうからマイペースでOKOK。
読み損ねてきた時代小説も追いかけていきたいと思う。

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2024年03月14日

Posted by ブクログ

 読み終わった後もいつまでも残る作品だ。熾火のようなものが心に残り、その後しばらくしても存在を示してゆく。もしかしたら、こちら読者側の思い入れかもしれない。志水辰夫の現代小説にかつて夢中になり、作品を貪り、全作を熱い想いで読んできた自分史ということから来る極めて個人的なほとぼりのようなものなのかもしれない。

 ぼくは1990年代を軸にインターネットの前身でもあるパソコン通信Nifty-Serveで冒険小説&ハードボイルドフォーラムを主宰していた。国産小説では、特に冒険小説が多く書かれ、読まれた時代で、船戸与一、佐々木譲などとともに、志水辰夫は代表的な冒険小説作家でもあった。とにかく途轍もない人気を誇る作家で、名うての読書子たちからの尊敬を勝ち得て止まなかった。一つには確かな文章力と日本語による国産ハードボイルドという文学性でも勝負できる作家であった。数ある賞をいくつももぎ取った作家である。

 21世紀に入ってからは時代小説に活躍の場を移したが、およそ20年ぶりに我らのジャンルにこの作家が還ってきてくれた。記録によれば1936年生まれだから今現在、88歳の年齢のはずである。それなのに本書を読むと、古びたところなどいささかもなく、現代ならではの状況をこれでもかとばかりに用意し、現代のスマホ、ネット、また株式、会社経営などのバックボーンを取り揃えて驚くほどリアルに作品を展開させている。志水辰夫がいささかも錆びることなく現在に輝き続けていることをこの作品で確認してどれほど驚かされたことだろうか。

 しかもスケール感も一層膨れ上がっている。作品から類推される志水辰夫の過ごした時間の濃密さは、驚愕に値する。序章で、主人公三谷の表と裏の職業が驚くべき事件とともに記述される。一気に読者を引き寄せる小手調べのようなトラップ。継いで、舞台は自然の豊かな里山に移る。ここで偶然、ある会社の敷地に迷い来み、財団のトップである大河内と出会うことになる。本作のストーリーは、この出会いからスタートすると言って良い。

 大きな企業グループの中での権力闘争に巻き込まれた主人公三谷は、多くの心理的特殊性を持ち、企業側からその特殊能力を買われ、
本業である介護職に従事しながら危険な都市での国際的企業戦争に巻き込まれることになる。スケールも大きいが一介の介護職員である初老の主人公というところが、シミタツらしく今も変わらない。

 シミタツの主人公は大抵、大変な闘争や暴力に巻き込まれては、追いつめられる状況を、気力の強さとなけなしの体力とで覆してゆく。そして意志の強さとぼろぼろの肉体で最後に独り戦場に残る。その構図が、今も変わらないだろうかと冷や冷やさせられながら手に汗握りページを繰る時間。ああ、これがシミタツ節なんだよ。わかっていながらページを繰る手に力が入る。

 あの幸せな時間がまた戻ってきたのだ。信じ難いが御年88歳にならんとする作家の手で、こんな作品がしっかりと現代の読者たちのもとに戻って来たのだ。耐えて耐えて、また耐えて、最後に爆発するこの構図にかつていくたび心を揺すられただろうか。そして今も、この作家は凡百の推理作家などではなく、ヒューマンな冒険小説のタフな書き手であるのだ。シミタツよ、未だ行ける。もう一作。そして可能ならばさらにもう一作を!

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2023年12月27日

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北方謙三、大沢在昌、馳星周らが絶賛!
80オーバーの高齢でこの迫力!素晴らしい!!
ヨカッタですよ~

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2023年12月03日

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50年ほど介護の仕事をする三谷孝。内閣情報調査室関連の仕事をしている。趣味のバードウォッチングをしていたら偶然知り合った大河内牟禮は財団理事長。なんだか気に入られて秘書的なことをしていると巻き込まれる事件。

久しぶりのシミタツ。「背いて故郷」とか「裂けて海峡」 よりも白石一文っぽかった。しかし、リーダビリティ抜群ですごく好みだった。昭和史の裏側、三谷の無色透明な感じ、大河内のエネルギー。読んだことのない興奮。

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2023年11月29日

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主人公となる初老の介護士・三谷孝はギフテッドと見做され、高い知能や特定の分野で優れた才能を発揮していた。
対人関係、調整力、記憶力などが秀でていて、介護士としての能力にも大いに貢献していた。
その能力を評価され、内閣情報調査室に協力する顔をも擁する三谷は、ハーバード大卒のIT起業家・大河内牟禮から声を掛けられ、後に二人の親密な交流が始まる。
大河内が経営するベンチャー企業は、母親の尾上玲子が率いる巨大企業・東輝グループの傘下にあった。
大河内は自らの意志でグローバル企業を立ち上げたいのだが、玲子は大河内の勝手な行動の前に立ち塞がり、暴力を含めての妨害に出る。
大河内をサポートする三谷も、金杯主義に塗れた輩からのトラブルに巻き込まれてゆく。
そして三谷は妨害者から誘拐・監禁され、大河内に協力した恨みつらみを一身に背負って命を狙われるのだが、そこからの脱出劇が、まさにシミタツ節で綴られるのだ。
危機迫る様子が美しい散文詩で謳うように描かれ、リアルに三谷の脱出の光景が浮かんでくる。
この緊迫感が、志水辰夫氏が綴るハードボイルドの真骨頂となる。
現代版のシミタツ節を19年待っていた甲斐があったというものだ。

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2023年12月10日

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ネタバレ

志水辰夫氏は86歳か。
そんなお歳なのに頑張って書いたんだな、と思いながら読んだ。
氏の公式HP「きのうの話」はずいぶん前から読んでいる。年齢を重ねて体力的き苦労されている様子がうかがわれていたが、こんな長編をよくぞ書き上げたなと。
一気に読み終えてしまったが機会があればもう一度じっくり読んでみたいと思った。

作品紹介・あらすじ
伝説のハードボイルド作家、渾身の現代長編 初老の介護士・三谷孝は、対人関係能力、調整力、空間認識力、記憶力に極めて秀でており、誰もが匙を投げた認知症患者の心を次々と開いてきた。ギフテッドであり、、内閣情報調査室に協力する顔を持つ三谷に惹かれたのが、ハーバード大卒のIT起業家・大河内牟禮で、二人の交流が始まる。大河内が経営するベンチャー企業は、牟禮の母・尾上鈴子がオーナーを務める東輝グループの傘下にある。尾上一族との軛を断ち切り、グローバル企業を立ち上げたい牟禮の前に、莫大な富を持ち90歳をこえてなお采配をふるう鈴子が立ちはだかる。牟禮をサポートする三谷も、金と欲に塗れた人間たちの抗争に巻き込まれてゆく。それぞれの戦いの結末は!?ギフテッドの介護士は、徹頭徹尾、人の心に寄り添える。 【編集担当からのおすすめ情報】 伝説のハードボイルド作家86歳、19年ぶりの現代長編!「さりげなさが、なぜこれほど心に食いこんでくるのだろう。人生の逆説が行間に浮かびあがり、私はその衝撃にしばしば足を停めた」――北方謙三氏「主人公はどこまでもごくつましく、声もひそかに生きる、われらが隣人である。その彼の『平凡さ』を特異な資質とみなす『時代』との摩擦、相剋が、この作品でもあらためて語られるのだ、とまでは明かしてしまってもいいだろうか。志水辰夫待望の新作、待った読者を裏切らない現代小説である」――佐々木譲氏「作家には、円熟という果実を産み落とすことのできる豊穣な場所、境地が存在するのだということを、本書によって知ることができた。後からゆく同業者として、なんともありがたい本に出会えたことを、深く感謝したい」――夢枕獏氏「老いることの哀しみ、恐怖、そして救い。志水辰夫(シミタツ)シルバーハードボイルドを堪能した」――大沢在昌氏「シミタツ節健在なり! 志水辰夫の現代を舞台にした小説をもう一度読めるとは、これ以上の至福はない。舐めるように読んで堪能した」――馳星周氏

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2023年11月27日

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特殊能力を持つ中年男が主人公の現代日本のハードボイルド。作者は86歳という。新作はいつ以来なのか。すごい。どうせなら主人公のか歳をもう少し上にして書いて欲しい。

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2023年10月31日

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主人公の三谷の性格が素晴らしい。見込まれたからには最後までやり遂げるし拉致されても最後まで諦めず命がけで戦う姿勢にドキドキしながら読み終えた。

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2023年10月29日

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志水辰夫待ちに待った19年ぶりの新作、読んで作品『行きずりの街』以来かもしれない。介護士三谷の意外性のある活躍にヒーロー的存在を感じた。ラストのハードボイルド感はすごかったです。ハードボイルド健在の作品に乾杯。久々の新作にぜひあなたも堪能して下さい。

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2023年09月23日

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ネタバレ

 前半は、どこへ連れていってくれるのだろうかと期待したのだけれど。
 ハードボイルドなのか、シミタツファンにとっては。もっとドライな作品ならば、乙川さんの近作の方が。好みの問題ではあるが。
 
 

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2024年04月05日

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もう読めないだろうと勝手に高を括っていたシミタツの新作。
そして題名や装丁からしみじみとした過去を振り返るような作品なんだろうと思いましたが、しっかりハードボイルド小説になっていたのでびっくりしました。
登場人物の登場人物の年齢層が高くなっていましたが、しっかりとギラっとした所が有る小説に仕上がっています。

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2024年03月18日

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絶対的な記憶力を持つ介護士が主人公。
新たな企業の若手社長に請われて秘書室長になる。企業家一族、諜報員、中国との戦いに巻き込まれていく。

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2024年01月07日

Posted by ブクログ

確かに凄い作家さんだった記憶がある。久々の新刊に飛び付いた。
60半ばの介護士が主人公。ギフテッドつ呼ばれる特殊能力を持ってたから仕事には困らないが、それを利用した政治中枢からの依頼もうけている。と始まるが、うーん、期待してただけに少し残念。

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2023年12月24日

Posted by ブクログ

御年86歳の著者の、なんと19年振りの現代長篇小説である。最近の時代小説はあまり読んでいないけれど、デビュー作からほぼリアルタイムで追ってきた身として“読まずに死ねるか!”(笑)
期待しながらページを捲るが、うーん、乗れない……。主人公の三谷は65歳の介護士で、特殊な能力をもつ“ギフテッド”だ。あるきっかけで知り合った起業家と関わりを深める中、様々な思惑をもつきな臭い連中が現れ……。三谷は狂言回しで、彼が動かなければ話は進まないが、特殊能力はいらなくない?と思ってしまう。話自体も何が主題なのか曖昧な印象だった。

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2023年11月23日

Posted by ブクログ

なんとの現代物で、まさか介護小説?と思わせてのお家騒動?からのハードボイルドな展開。ただ、65歳でここまでできるのかな。

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2023年10月30日

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