あらすじ
文化人類学者で友人の畑中幸子が滞在する、数年前に発見されたシシミン族のニューギニアの奥地を訪ねた滞在記。想像を絶する出来事の連続と抱腹絶倒の二人の丁々発止。有吉ファン必読。
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Posted by ブクログ
内容を詳しく調べず、タイトルだけで読み始めたので、もっと楽しい旅行記かと思っていたがまさかこんな始まりとは…
ニューギニアでの良いことと、やはり日本は恵まれているというふたつを感じながらずっと読んでいた。
ニューギニアに住む彼らは1日1日を生きるのは大変だろうが、毎日のことに必死になって生きていく。それはそれで良いこともあるだろう。しかし、やはり日本に生きている身からすると、こうした不便な国がまだ世界にはあるのかと考えさせられた。濾過器を見せただけで驚く、音声を再生したら喜ぶ、そういった日本に生きている我々からしたら当たり前のようなことも彼らにとっては新鮮で、まだ新鮮に受け取る人々がいるんだ、という視点は欠けていたなと感じた。
まあ有吉さんがニューギニアに行っていた時からもう数十年経っているため、今の現状は変わっているだろうが、日本の外側の世界に触れることができて面白かった。
またやはり畑中さんは面白い。こんな人がいたらいいととても思う。そして有吉さんとの関係性も憧れる。嫌なことは嫌という、軽蔑したと思った軽蔑したという、しかしそれで関係が崩れることはない。今の現代社会の人間関係において大切なのはこれではないかと思う。反対意見をぶつけても、それで関係が崩れることがない関係、それが一番大切なのではないか。そうした素直に言い合える関係性、私もそういった関係性を築きたい。
またテアテアの話も興味深かった。お礼としてパンツをあげたりしているうちに、それまでオドオドしていたのに、位が高くなったように感じて横柄な態度を取るようになり、仕事もしなくなる。発展していない国の人になにか物をあげたくなるのは、発展国、経済的に上に住んでいる人はやりたくなるのではないだろうか。私はやりたくなる。しかし、それが良い効果をもたらすだけではないということを感じられた。文明の発展はあるだろう。しかしそれによって人と性格が変わってしまうほどの変化も生じる。パンツをあげることで彼は自信をつけたのかもしれない。自尊心も高くなったかもしれない。そう考えればよかったのかもしれないが、どことなく寂しさを感じてしまった。
最後の帰国の場面、また山を登るのだと思っていたため、それにしてはページ数が少ないなと頭を捻っていたが、まさかヘリコプターが来るとは。本文でも書かれていたように思うが、本当に「事実は小説より奇なり」なのだと驚いた。まさかこのような帰国になるとは。急な別れ。ニューギニアに私は行ったことがないが、筆者と同じようにそこで生活していたような感覚がずっとあり、ニューギニアを離れるシーンは、これまでいた場所がなくなってしまう。でもこの辛い日々、食べ物は十分なものが食べられないし、夜は暗いし、いつか殺されるかもしれない、という日々からすぐ抜け出せるかもしれないという希望。その全てが入り混じった、なんともいえないノスタルジーを感じた。
こんなところには住みたくないという気持ちと、でも読み進めていると面白くて笑ってしまう、2つを行き来する面白い読書だった。