あらすじ
TSMCはどうやってインテル、サムスン電子を追い抜き世界一になれたのか?
「護国(国を守る)」のためには、現代の先進国が日常生活や産業、国防などで不可欠な技術を保有していることが欠かせない。(中略)もしそのサプライチェーンが途絶えたら、日常生活や産業に大きな影響が及ぶだけでなく、大国の国防や軍事のための高度な武器が機能しなくなるかもしれない。大国は重要なリソースが途切れないようにするため、当然、その保護に力を入れる。この観点から見ると、TSMCの状況は「護国」の条件に合致している。(中略)30年以上にわたり磨き上げた高い生産技術を有する製造チームが、あらゆる分野で必要とされる半導体を全世界に供給する。そう考えると、TSMCは世界で唯一無二の存在であり、「神山」といえるのではないだろうか。(本書『序文』より)
ここ数年で、TSMC(台湾積体電路製造)は、世界各国の政府や企業、メディアの注目を集めるようになった。その一挙一動は、世界の主要産業のサプライチェーンを安定的に運営できるかどうかにも影響を及ぼす。本書では、TSMCの強みはどこか、なぜそれほど強いのか、競合他社がなぜこの先10年間でTSMCに勝つことが難しいのか、その理由を明らかにする。
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Posted by ブクログ
TSMC(台湾積体電路製造)がどのようにして世界最大の半導体ファウンドリーとなったのか。台湾有事が叫ばれる今だからこそ読むべきである。1987年にモリスチャンにより設立されたTSMCは、「ファウンドリー専業」という独自のビジネスモデルを採用し、当初はローエンドだったもののエヌビディアからの高性能グラフィックチップ受注獲得により評価を変えていった。顧客と競争しない戦略を徹底し多くの企業と良好な関係を築けたこと、高度な技術力、歩留まり率の向上、安定した供給力(短納期・高品質)が強みであり、従来の半導体企業とは異なる道を選んだことで、今や護国神山と呼ばれ台湾の経済安全保障に深く関わっている他、世界のテクノロジー産業に不可欠な存在となっている。
Posted by ブクログ
半導体は世界的な分業、水平統合の極みになっている。かつて日本が席巻した日も今は昔。
台湾では国家プロジェクトのごとく「護国神山」としてTSMCを育てた。
資源の乏しい国がいかに世界と伍していくかのモデルと言える。
更に、創業者の精神も素晴らしく効率を求める一方、人間的な働き方と文化を確立している。
脈々と価値観が継承され「やるべきこと」と「やってはいけないこと」が明確で軸がブレない。
加えてチャレンジや学びの機会があり楽しさもある職場環境、利益還元の制度と社内のモチベーションはいかほどか。
そして、半導体製造に欠かせない電力や水の確保のためインフラにも投資を欠かさず、持続可能性を高めている。
こんな好循環なTSMCにライバルと言える存在はいるのだろうか。
世界各地にTSMCの工場が建ち半導体サプライチェーンが再構築されているが最先端は常に台湾にある。
国レベルでやるべきことがはっきりしている。