【感想・ネタバレ】宇宙開発と国際政治のレビュー

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Posted by ブクログ

技術面からの宇宙開発の書籍はよく見かけるが、本書は政治の視点から宇宙開発を読み解いたものである。各国の宇宙開発の現状とそれに至までにどのような遷移があり、国の情勢とどう関係しているのか幅広くまとめてある良書だと思う。分量はあるが、それを感じさせないほど内容は新鮮で面白い。本文でも触れられているが、日本では宇宙開発は技術研究とその成果が度々クローズアップされて来ているが、こうして世界の中で宇宙開発がどのように行われて来たかというのを俯瞰してみると、日本の宇宙開発の歴史はかなり異質なのだと認識させられた。

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2014年03月19日

Posted by ブクログ

「はやぶさ」の快挙等、近年日本の宇宙開発に世間の注目が集まっています。
本書はこの宇宙開発を各宇宙先進国毎に政治的側面、社会的ニーズなどの視点から分析し、最後に今後の国際的な宇宙開発の展望を述べた内容となっています。

著者は序章において本書における分析のキーワードとして

・ハードパワー
軍事面での宇宙利用

・ソフトパワー
国家の国際的評価の向上や国内に対する政権の正当化目的での宇宙開発

・社会インフラ
社会的ニーズを満たす手段としての宇宙開発
(例:インドにおける放送衛星開発)

・公共事業
失業対策としての宇宙開発
(例:アポロ計画後に発生したNASAの余剰人員カットの回避を目的とした宇宙開発)

の4つを挙げており、以降、第一部(1章から6章)でこれらを用いてアメリカ、ロシア、ヨーロッパ、中国、インド、日本の宇宙開発史を分析し、それぞれの国家(国家群)が持つ国内事情や外交関係が、その国家(国家群)の宇宙開発の行方に影響を与えていった過程を解説しています。

そして第2部(7章から終章『9章』)で

・デブリ(宇宙ゴミ)対策
・宇宙先進国が非先進国に外交的、商業的に提供する人工衛星、もしくはそれを活用したサービス
・非先進国同士による共同宇宙開発

等に触れつつ、これまで地上の政治にはどことなく縁遠い存在であった宇宙開発が、
今では国際政治や国内政治の双方に(そして当然ながら私たち個人の生活にも)影響を与える存在となりつつある現状を解説しています。

著者はこの変化を踏まえ、ガガーリンの偉業から50年以上たった今、今後の宇宙開発は実用性、信頼性、低価格を重視する実利的なもの(例えると家電製品の開発の様なものでしょうか?)へと変えるべき時期に達していると結論付け、本書を締めています。


本書で解説されているアメリカの宇宙開発史は、正直に言えばこれまで様々な所で触れられてきた内容の焼き直しと言った感じです。

またロシアの宇宙開発については、今ではそれを専門的に解説している「ロシアの宇宙開発史」(冨田信之/著)と言う書籍があり、同国の宇宙開発史について興味をお持ちであればそちらを読んだ方が良いでしょう。

#上記は紙面の問題もあり仕方がないのでしょう。

しかし、その他の内容、ヨーロッパや中国、インドの宇宙開発史についてはそれらを解説する日本語資料は中々お目にかかれないのではないかと思いますので、それらが比較的コンパクト(しかし要所はきちんと押さえている)に解説している本書は、その点だけでも価値があるかと思います。

またこの点に関しては非宇宙先進国の取り組みや国際的なデブリ対策の現状等についての解説も同様です。

読者の宇宙開発の現状認識を深めてくれる内容となっていますので、宇宙開発に対する認識が「宇宙開発=人類の未来」と言ったある種、夢やロマン的なものが多くを占めている場合、それを修正するのに役立つ一冊です。

正直に言えば、時折、もう少し内容を深めてくれればと少し残念に感じた個所もありましたが、全般的には間違いなく興味深い内容です。

おすすめです。

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2013年06月30日

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