あらすじ
2001年の池田小事件をきっかけに、05年に施行された「医療観察法」。この法律では、殺人、傷害、放火、強盗、強制性交、強制わいせつを行い、刑法第三九条の規定によって、心神喪失者または心神耗弱者とされ、無罪、あるいは執行猶予、不起訴、起訴猶予になった人を、「加害者」という代わりに「対象者」とする。対象者は精神科病院での鑑定入院を経て、地方裁判所で医療観察法の処遇を受けるかどうかの審判を受ける。医療観察法が適用されるとなった場合、医療観察法病棟のような指定入院医療機関への入院か、指定通院医療機関への通院が決定する。
全国に35施設ある医療観察法病棟では、どのような治療が行われているのか? 対象者はどのような過程を経て、社会に復帰するのか? 病棟内を取材し、現場で働く医療者、退院者、被害者遺族、法律に反対する人など、さまざまな立場の人を訪ね、制度のあるべき姿を考えるルポルタージュ。
【目次より】
第一章 「対象者」
第二章 医療観察法病棟
第三章 医療観察法の誕生
第四章 医療観察法病棟の内側から
第五章 医療観察法病棟立ち上げのエキスパート
第六章 医療観察法に異を唱える人たち
第七章 元対象者が感じる負の刻印
第八章 医療観察法反対運動の源流としての社会運動
第九章 被害者の悲痛な思い
第十章 医療観察法と社会復帰
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Posted by ブクログ
【目次】
第1章 「対象者」
第2章 医療観察法病棟
第3章 医療観察法の誕生
第4章 医療観察法病棟の内側から
第5章 医療観察法病棟立ち上げのエキスパート
第6章 医療観察法に異を唱える人たち
第7章 元対象者が感じる負の刻印
第8章 医療観察法反対運動の源流としての社会運動
第9章 被害者の悲痛な思い
第10章 医療観察法と社会復帰
Posted by ブクログ
触法精神障害者と被害者、それを取り巻く法に関する支持者、反対者。著者があとがきで記しているように、対立軸として書き表していたであろう痕跡が全体的に残っていたかもしれない。 「対象者」への取材にも被害者への取材にも著しい困難があったことが読み取れる。とはいえ様々な関与者の意見が書かれていて、概観を知れた気がする。難しい問題だからか、著者の主張が固まっているわけでもないところに好感を持ちました。
Posted by ブクログ
タイトルから、法に触れるほどの犯罪をした精神障害者が、医療観察法の下、医療観察法病棟でどう変わっていくのかの話と思ったけれど、筆者も最後で言っているようになかなか対象者に直接インタビューはできないから、周辺の精神科医や心理職の方等へインタビューし、医療観察法・医療観察法病棟の是非を考えるという本。
しかし、刑法39条との関係や、保安と治療の兼ね合い、
医療観察法が一つのスティグマとなり退院後のグループホームや作業所の受入れ先が見つからない問題、被害者遺族が意見陳述できないこと、対象者が事件に対してどう内省したのか、被害者遺族は直接はもちろん、間接的にも聞くことができない問題など、いろいろあり過ぎて正直何も自分の考えはまとまらなかった。
そんな中、被害者遺族でありながら、精神障害者の社会復帰や自立支援活動を支援されている木村さんがただただ、ひたすら凄いなと思う。
本を読む限り、医療観察法の対象者は、妄想や幻聴で犯罪に至ることも多いようで、対象者側に立てば医療観察法で治療をすることは、もちろん大事。
退院後孤立させずに社会に適応させるのも大変だけれど。
しかし逆に、妄想や幻聴が原因の犯罪は被害者も被害者遺族も本当にやりきれなくてしんどい。
せめて、医療観察法病棟でどう内省したのかぐらいは知りたいだろうなと思うし、悲しみ、怒りを対象者にぶつけたいだろうなと思う。