あらすじ
京の呉服屋の三男坊ながら、戯作者を夢みる喜三郎(きさぶろう)に、婿入りの話が持ち込まれた。しかしその相手には、許嫁が短命に終わるという「婿殺し」の異名があり、戸惑う喜三郎は、知人の寺に相談に行く。するとそこには見知らぬ琵琶法師がいて、「救うべきは、その娘だ」と告げられる――。芝居小屋の怪、拐(かどわか)される幼子、人の心を狂わす妖刀……。京で大人気の芝居誕生に秘められた、悲しい真実を巡る感動の時代ミステリー。文庫書き下ろし。
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Posted by ブクログ
序幕
鴻鵠楼の怪/子隠の辻/蜘蛛手切り/呼魂の琵琶
終幕
喜三郎の身に起きる不思議、怪しい出来事を解くのは謎の琵琶法師。喜三郎は戯作者になれるのか??
Posted by ブクログ
「幽玄の絵師」シリーズが良かった作家さんの単発もの。
今回は『呉服屋の三男坊ながら、戯作者を夢見る喜三郎』と『不魔』と呼ばれる不思議な琵琶法師『無情』との宿縁を描いた物語。
自らが生まれたのと同時に母親を失った喜三郎は、母親代わりに育ててくれた母方の祖母の影響で芝居の魅力に取りつかれ、幼い頃に通い詰めた〈鴻鵠楼〉(現在は主の死と幕府の派手な芝居の禁止令により廃業中)を買い取り自ら書いた戯作を掛けるのが夢。
しかしその〈鴻鵠楼〉買い取りには既に手を挙げている者がいた。それは喜三郎の婿入り話の縁談相手・千代であり、彼女にはこれまで縁談のあった相手二人が婿入り直前に亡くなるという不吉な噂があった。
千代の噂の真相、連続した子供の神隠し事件、抜くと人を狂わせる刀という不思議な事件を、無情という不思議な名前の琵琶法師が琵琶の語りで解決するというのが基本的な展開になっている。
ただそこに喜三郎の活躍も入っている。
最初は苦労知らずのボンボンが無情と出会うことで少しずつ変わっていく話なのかなと思っていたが、喜三郎の芝居好きの原点には意外な事情があり、思っていた以上に無情との宿縁があったことが分かった。
また喜三郎の理解者であり無情を客として迎えている住職・清韻が良い感じで力を抜いてくれるし、縁談相手の千代も予想とは違ってパワフルな商才ある人だったのが良かった。
そして芝居に傾倒する喜三郎を苦々しく思っている父・富之助にも彼なりの愛情があったし、二人の兄も弟の喜三郎を思う良い兄で、結果的に悪い人はいなかった。
序章の部分から本編はかなり遡るので、もしかして続編があるのか?と思ったが、結構駆け足でまとめられた。ちょっと残念な気もする。
終章になって、序章の意味が分かると喜三郎の変化にも驚く。
喜三郎は逢いたい人に逢えるのか。