あらすじ
平安文学研究者出身の作家・奥山景布子が、「フェミニズム」「ジェンダー」「ホモソーシャル」「おひとりさま」「ルッキズム」など、現代を象徴するキイワードを切り口に「源氏物語」を読み解く。そこに浮かび上がってきたのは、作者・紫式部の女性たちへの連帯のまなざしだった。時空を超えて現代の読者に届くメッセージ――希望ある未来へとバトンを繋げる新解釈。著者初の古典エッセイ。
<目次>
はじめに 「サブカル」、そして「ジェンダー」「フェミニズム」――紫式部の追究した「人間の真実」
第一講 「ホモソーシャル」な雨夜の品定め――平安の「ミソジニー」空間
第二講 「ウィメンズ・スタディズ(女性学)」を古典で――「女の主観」で探る夕顔の本心
第三講 ほかの生き方が許されない「玉の輿」の不幸――「シンデレラ・コンプレックス」からの解放
第四講 「サーガ」としての「源氏物語」――光源氏に課せられた「宿命」と「ルール」
第五講 「境界上」にいる、破格な姫君・朧月夜――「マージナル・レディ」の生き方
第六講 宮家の姫の「おひとりさま」問題――桃園邸は平安の「シスターフッド」?
第七講 「教ふ」男の「マンスプレイニング」――紫の上の孤独な「終活」
第八講 「都合の良い女」の自尊心――花散里と「ルッキズム」
第九講 平安の「ステップファミリー」――苦悩する母たちと娘の「婚活」
第十講 宇治十帖の世界と「男たちの絆」――「欲望の三角形」が発動する時
第十一講 薫の「ピグマリオン・コンプレックス」――女を「人形」扱いする男
第十二講 「自傷」から「再生」へ――浮舟と「ナラティブ・セラピー」
おわりに 古典を現代に
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Posted by ブクログ
フェミニズム的な視点で源氏物語を読み解く。
源氏が紫の上や玉鬘に「教ふ」ことが多いこと、どれもキモいんだけど、それを「マンスプレイニング」でまとめるとなるほどなと思う。昔も今も、おっさんは若い女性に上から目線で教えたがるもの。
薫は誠実な男性の印象が強いけど、妻ではなく都合よく関係を結べる召人が結構いた、とか、大君の人形を作りたがって中君に引かれているとか、むっつりスケベ感が意外と強くて印象が変わった。浮舟は大君に似た人形として薫に愛され、主体性のない女性なんだけど、匂宮が戯れに渡した硯で書いた歌に無意識の本心が表れてしまったり、自殺未遂後に手習をして独詠歌を何首も詠み、そこで自分の言葉を獲得していたり、そして最終的には薫を拒絶するそのあり方が、女性の自我の目覚めみたいで興味深い。浮舟が、一番多く歌を詠んでいる女君らしい。