【感想・ネタバレ】待ち遠しい【毎日文庫】のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

単行本でも文庫でもカバーに3人の女性が描かれている。
私は沙希を、きらたかし「赤灯えれじい」のチーコのド金髪で思い浮かべていたのだが、文庫カバーではゆるふわな黒髪だった。
確かに直球ヤンキーな長距離トラックドライバーと、マイルドヤンキーとはいえ医院の受付とは、随分違う。
解釈違いだった。

柴崎友香の小説で私が好きなのは、カッコつきの「淡々とした日常」の中で、視点人物が町や建物や対人関係についてあれこれ考える、そのどこかのタイミングで日常がグニャリと変容するような気づきを得る……結果的に高度な都市論や記憶論が小説として展開されている、という点。
その意味で本作はやや「淡々とした日常」寄りすぎるかな、とか、「毎日新聞」連載だから読者層を慮っているのかな、とか邪推したが、そんな自分の読書中の感想は、間違っているな、と読後気づいた。

作中、様々な形で、「生きづらさ」や、性愛や生殖にまつわる「抑圧」が、押しつけられる。
40がらみの男性として、アラフォー女性の「昨今のあるあるネタ」だろうと軽く見ていた、かもしれない。
春子は、その都度、それこそ「グニャリとする」くらいの怒りを、覚えていたのかもしれないのだ。
わかりやすい漫画なら「はい~このオッサンブッ殺す」と書いていたかもしれないレベルの抑圧が、たびたび差し挟まれているのだろう(5ちゃんねるのスレッドが思い浮かぶ)。
しかもその「圧」は、年配男性からだけではなく、図式的にいえば同胞であってもいいゆかりや沙希からも、(ゆかりの場合)やんわりと、(沙希の場合)ツンケンと、齎される。
……非公開の読書メモ用に、誰が何をしたというあらすじをメモしながら読んでいたが、そこには反映しきれなかった、「春子はこう思った」という点こそが、作者のメッセージなのだろう。
似た状況の読者にとっては、春子はある意味で救い主(日常生活と地続きの「ヒーロー」)のように感じられるのだろう。

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2023年04月25日

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