【感想・ネタバレ】待ち遠しい【毎日文庫】のレビュー

あらすじ

これはきっと「あなたの物語」

住み心地のいい離れの一軒家で一人暮らしを続ける北川春子39歳。母屋に越してきた、夫を亡くしたばかりの63歳、青木ゆかり。裏手の家に暮らす、今どきの新婚25歳、遠藤沙希。偶然の出会いから微妙な距離感のご近所付き合いが始まった。「分かりあえなさ」を越えて得られる豊かな関係を描き出した珠玉の一作。

「わたし以外のほかの誰かが決めることじゃないんです」
人と比べられて気まずい思いを強いられたり、「みんな」と同じ条件や要素を手に入れられないことに疎外感を持ったりする世の中にあって、その言葉はすべての「わたし」の人生を支えてくれるお守りのようなものだろう。いうなればこの小説は、ひとりの人間が自分の内側からその言葉を紡ぎ出していく過程を丹念に言語化したものなのだ。(倉本さおり(書評家)「解説」より)

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Posted by ブクログ

ネタバレ

主人公の春子が尿管結石で入院した展開にはっとした。同意書に名前を書く場合となっても一人暮らしだとどうすればいいのか、真剣に考えておかなくては。

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2025年01月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

友だちから「いつも仕事が楽しそう」と言われたことがある。いや、確かに自分にあった仕事に出会えたことは恵まれているとは思うけれど、いいことばかりじゃないし、いやなこともあるし、つまらないこともあるし、毎日「仕事やだー!」ってのたうち回りたい気分だし、そのなかで、「これは楽しい」を自分でどうにか見つけて、楽しんでいるだけだが?……とは返せなかった。

そういった友だちは友だちで、自分の選んだ仕事と、積み重ねてきたもの(こなかったもの)に大いに思うところがあるだろうというのは、重々分かっていた。

気の合う友人でもこういうことはある。
ただ近くに住んでいるだけの隣人なら余計だろう。

昔は、東京は誰とも他人で入れるのがいい、みたいなことを真に受けて、ほざいていた時代もあるけれども、年齢を重ねるにつれて、いざというときのネットワークとしての近所づきたいというものの大切さに気付くようになる。
面倒でもやらなきゃいけない。

そして、どうも価値観が違うよなと思う人たちも、それぞれが積み重ねてきたもの、こなかったもの、選んだもの、選べなかったものがあって、そのうえでの今がある。

年代の違う3人の交流は、日常的で、ときにざっくりと(おそらく互いに)傷を作りながらも、それでもあえてそれ以上踏み込まないことで、日常に回帰していく。
それもまた、互いの関係性を維持するやり方の一つ。

ゆかりさんの年を重ねたからこその、落ち着きみたいなものと、あの年代だからこその踏み込みすぎた感じ、逆に沙希からあふれでる若さ(時に図々しさ、遠慮のなさにもなる)に、うへぇとなりつつも、まぁ、それなりの距離をとっていければいいんじゃない?と思えるのも、40代後半になった今だからの感想かもしれない。
(多分20代とか、30代前半で読んでたら、もっとイラっとしていたんじゃないか)

最後に、結構前だったけれど、おじいちゃん役をよくしていた俳優さんがバラエティに出ていて、「もうすぐ70歳、70代なんて人生で初めて経験するから楽しみで」と、本当に心底楽しそうに言っていたのが印象的で(名演技だっただけかもしれないけれども)、以来私も年を重ねることを楽しめるように意識している。
それだけでも、人生や日常が少しは変わると思う。

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2026年09月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

単行本でも文庫でもカバーに3人の女性が描かれている。
私は沙希を、きらたかし「赤灯えれじい」のチーコのド金髪で思い浮かべていたのだが、文庫カバーではゆるふわな黒髪だった。
確かに直球ヤンキーな長距離トラックドライバーと、マイルドヤンキーとはいえ医院の受付とは、随分違う。
解釈違いだった。

柴崎友香の小説で私が好きなのは、カッコつきの「淡々とした日常」の中で、視点人物が町や建物や対人関係についてあれこれ考える、そのどこかのタイミングで日常がグニャリと変容するような気づきを得る……結果的に高度な都市論や記憶論が小説として展開されている、という点。
その意味で本作はやや「淡々とした日常」寄りすぎるかな、とか、「毎日新聞」連載だから読者層を慮っているのかな、とか邪推したが、そんな自分の読書中の感想は、間違っているな、と読後気づいた。

作中、様々な形で、「生きづらさ」や、性愛や生殖にまつわる「抑圧」が、押しつけられる。
40がらみの男性として、アラフォー女性の「昨今のあるあるネタ」だろうと軽く見ていた、かもしれない。
春子は、その都度、それこそ「グニャリとする」くらいの怒りを、覚えていたのかもしれないのだ。
わかりやすい漫画なら「はい~このオッサンブッ殺す」と書いていたかもしれないレベルの抑圧が、たびたび差し挟まれているのだろう(5ちゃんねるのスレッドが思い浮かぶ)。
しかもその「圧」は、年配男性からだけではなく、図式的にいえば同胞であってもいいゆかりや沙希からも、(ゆかりの場合)やんわりと、(沙希の場合)ツンケンと、齎される。
……非公開の読書メモ用に、誰が何をしたというあらすじをメモしながら読んでいたが、そこには反映しきれなかった、「春子はこう思った」という点こそが、作者のメッセージなのだろう。
似た状況の読者にとっては、春子はある意味で救い主(日常生活と地続きの「ヒーロー」)のように感じられるのだろう。

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2023年04月25日

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