あらすじ
命の終わり、その場所はどこがいいですか?
住み慣れた自宅で幸せな最期を迎えるために。
親子の絆を探す3年間の遠距離看取り体験記。
(目次)
第1章 看取りのはじまり
第2章 介護保険が打ち切られた
第3章 コロナ禍の葛藤
第4章 父と娘の終末期
第5章 臨終まで
第6章 看取り後の気づき
〈父は入院も施設入所も拒み、住み慣れた家でひとり暮らしをつづけた。
私は終末期の父に付き添い、介護し、
死にゆく傍らでその一部始終を見ていた。(中略)
あくまでも個人的な体験ながら、父と私に降りかかったさまざまな出来事を
ありのままに綴りたい。父と同じように住み慣れた家で最期を迎えたい人、
家族を在宅で看取りたいと思う人たちに「家で死ぬ」というリアルを伝え、
真に納得した最期が訪れるよう、本書が一助となることを願っている〉
(「はじめに」より)
感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
昔は家で死ぬのが当たり前だった(と思う)けど、今は家で死ぬのが大変なことがわかった。
介護やケアの問題はもちろんだが、終末期から臨終までの話があまりにも知られていないと思った。「枯れるように静かに逝った」という話をよく聞くが、そんな話ではなかった。特に死に際、本人は壮絶に苦しむ。その様子を家族は見ていられないと書かれていた。ここで救急車を呼ぶと病院で看取ることになる。救急車を呼ばずに耐えられるか。耐えたとしてトラウマにならないか。
亡くなった後も大変だ。死体を運び出す問題がある。例えばマンションだった場合はエレベータを使えるのか(充分な広さがあるか、苦情がこないか)。一軒家でも同様の問題がおきる。搬送車をとめてストレッチャーを出し入れできる場所が必要になる。近隣の駐車場に停めて公道を歩いて運ぶ場合は通行人への気遣いが必要になる。
Posted by ブクログ
3作続けて終末期医療や看取りがテーマのものを読んだ。(小説2、ノンフィクション1)自分自身の自宅での親の介護と看取りの経験を、今でも折にふれ何度も何度も思い返してあれでよかったのかと自問自答している。つまり死に方を見せてくれた親には感謝と尊敬しかないが介護していた自分の未熟さや傲慢さを自覚しているのでいまだに思い出として落とし込めていないから、このような本を読んでみたくなるのだと思う。この石川さんの本は本当にリアルで経験したものなら深くうなづけることばかりだった。あとがきで「亡くなった人は生きている人の中で生き続ける」とあった、よく言われることなのだがこうして書かれたものを目にすると持つべき思いを再確認できる。作中のおとうさんのエピソードで60年も前の教え子をフルネームで呼んで覚えていることを語るシーンが父と重なってうれしくなった。
Posted by ブクログ
ライターの石川結貴氏による独居の父親の看取りの過程を描くドキュメンタリー。介護拒否、病院拒否、自立心旺盛、そんな父親を遠方の娘がイライラ・ハラハラしながら面倒を見る様子が綴られます。
・・・
作品を語るにおいて、なんというか、内容の良しあしを言うのではなく、石川(筆者)家はこういう家なのだなあ、とそのまま受け止めるべき、と感じました。
高齢者を自宅で看取ったという事例としては非常に貴重であると思います。
まず、石川家のおじいちゃん、非常に独立心旺盛です。88歳にして近くの畑で農作業をしたり、毎日公営温泉に行って地域の人とおしゃべりをしたり。
で、このおじいちゃん、かなり頑固みたいです。
病院が嫌い。専門的な医者ではなく、(多少腕がなくても、否、あるいみヤブでも)地域の医者が良い。介護士が家に上がるのは嫌。心配されるのが嫌。
っていうか、自分と似ている!? 中高年以上の男性は大体こんなんな感じもします…。
・・・
こうしたおじいちゃんを取り巻く環境は、ややネガティブな模様。
例えばセールス。銀行員がいい顔をして寄ってくる。卒寿に手が届きそうなじいさんに外貨建て保険を売るとかを平気でする。筆者は何とかクーリングオフまで持って行ったものの、阿漕な証券会社でもなかなかそこまではしませんよ。
また公営温泉でも、一度転んで救急車で運ばれたおじいちゃんがまた温泉に来ることに、運営者側はいい顔はしない。独居老人?家族は遠方に居るの?何かあったらどうするの?ってこうなりますよね。
さらに介護保険。おじいちゃんが「俺は大丈夫だ、自分でできる!」と独立心をがなり立てて、介護認定が取り消される。
結局、娘さん(筆者)が仕事をセーブしつつ、実家にちょこちょこ顔を出すことで折り合いをつけた模様ですが、その負担たるや想像に難くありません。
増してやフリーランスという立場上、仕事をしないということは収入がないということですから、本人の不安は大きかったはずです。
ちなみにこの石川さんはシングルマザーとのことで、連れ合いは頼れず、ご兄弟も難病のお兄さんが一人とのこと。大変に厳しい状況であったと思います。
最終的におじいさんは、自宅にて腎不全でおだやかに亡くなります。
娘さんは死に化粧から何から一通りを介護士らと共に行ったとのことでした。
・・・
ということで、自宅で看取りを終えた石川氏のドキュメンタリーでした。
突然死ではなく、計画的に自宅で亡くなるというのが実は結構大変であることが良く分かりました。障壁がなんのかのとあるのです。
先の短い老父母のやりたいようにさせるか、介護する世代の都合にあわせるのか、或いは折衷させるのか、ご家庭によってケースバイケースでしょうが、本作では老父にあわせた形です。
親御さんやその他お世話する老年の親族がいらっしゃる場合は参考になる本だと思います。