あらすじ
ハロウィーンの夜、少女が殺された。彼女は死の直前、殺人を見たことがあると嘯いていた。口封じのための殺人か? ポアロが暴く
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Posted by ブクログ
ケネス・ブラナー版『ベネチアの亡霊』は原作と全然違うと知り、映画が気に入ったので読んでみた。全然違う。別物。原作の方がいろいろな事件や人間関係が入り組んでいるように思う。
面白かったけど所々「?」とモヤる箇所あり。エムリン校長先生に書いて見せた4つの言葉は何だったんだろう?とか、レオポルドが殺されたくだりがあっさりしてたなぁとか。魔女が歌っていた井戸の歌は偶然ヒントになったのか、それとも何かしら知っていたからこそあの場面で歌ったのかなぁ…などなど。私に読解力がないからかもしれないけど。
これが私の初クリスティーだったので、他の作品も読んでみたい。
Posted by ブクログ
途中で最初の事件とは関係ない話が展開し、どうなっていくのだろうと思っていたら最後は綺麗に集約されて行ってさすがだなと思った。
途中で少年犯罪について語る一節があり、それが印象に残っている。
"彼女が気にかけている相手か、もしくは、ポアロが思うにこちらの方が可能性大だが、彼女が守ってやりたいと思っている相手、おそらくほんの子供と言って良い年齢の者。ミセスドレイクから見ると、自分がしたことの恐ろしさがよくわかっていないように思われる者。
ポアロは、ミセスドレイクのことを性格はきついが誠実な人物だと思っている。こういうタイプの女性は、結構いる。しばしば治安判事になったり、協議会や慈善団体の運営に関わったり、いわゆる事前活動に関心を寄せたりする女性。情状酌量の大切さをやたらと信じ込み、若い犯罪者をかばおうとする女性。思春期の少年とか、まだ判断力に欠ける少女とか。すでに、えっと……どういうのだった、施設に入ったことがある子とか。
図書室から出てくる姿をミセスドレイクが見たのがそういう子だったなら、彼女の保護本能が働き始めたと考えても良さそうだ。今の時代、子供たちが犯罪に走ることは結構ある。幼い子供たち。7歳や9歳位の子供たち。こういう子供が少年裁判所の法廷にたたされたとき、どう扱えばいいかと関係者は頭を悩ませる。子供のために色々な言い訳が用意される。壊れた家庭、子育てを放棄した独親。しかし、子供達を最も熱心に弁護し、あらゆる言い訳を持ち出そうとするのは、大抵ロイーナドレイクのようなタイプの人間だ。厳しくて口やかましい女だが、こういう時は別人のようになる。ポアロ自身は、そのやり方には同意できない。彼は、常に正義を第一に考える人間だ。知識というものに、行き過ぎた慈悲に疑問を持っている。ベルギーとこの国の両方でかつて学んだことだが、行き過ぎた慈悲はしばしば、さらなる犯罪の元となる。正義を第一に考え、慈悲を第二にしておけば、被害者にならずに済んだはずの人間が、その犯罪のせいで命を落とすことになる。"
これは、アガサクリスティー自身の少年犯罪に対する私見でもあるのかなと思う。慈悲よりも正義。目先の優しさよりも先々のことを考えて厳しくすることが、かえってよりよい結果を招くこともあるというのはその通りだと思う。
こういった少年犯罪を匂わせる文章が多かったので、少年少女が犯人なのかなと思っていたら真相は金と独善的な美学に酔いしれた大人による犯行だったから全く予想できなかった。最後に出てきたマクベス夫人とナルキッソス、そしてイフィゲニアはそれぞれギリシャ神話とシェイクスピアからの引用。アガサクリスティー作品は、たまにこういった古典作品や神話、聖書からの引用がある。引用元の作品を知っておいた方がより深く味わえると思うので、この辺りの知識も身につけたい。
Posted by ブクログ
少し前に映画を観て、原作はどんな感じだろうと思い拝見。内容が違いすぎて呆然としました…。ですが、別物と思って読むと、複数の事件と人が重なったとても面白い作品でした。特に子供に対する自分の印象は少々変わったかもしれません。
また、映画のポアロとは違い、悲壮な感じが無く、登場人物もミステリアスでクールな人が多く、時々コミカルなので実に読みやすかったです。
自分はミステリ小説をあまり読んだ事が無いのですが、子供が犠牲になる、という所と、子供と言えども虚言や脅迫など中々アクの強い子達が登場してきて強烈でした。まさに「教育とは聖なる領域」。教える事、学び続ける事で人格が形成されていくのかと改めて思います。ただ、今となってはこの話をポアロとしているのが、犯人という所がなかなかパンチの効いた皮肉に思います。マクベス夫人についてとても興味が出てきました。
子供は親に全てを話すとは限らない。その通りかもと思うのですが、大人は親には話すと思い込んでしまう事が多いと思いました。何が起きているのか、恐怖が感じ取れない。とても難しい事ですが、注意して見たり話したりしないといけないなと思います。
また、犯人や被害者の発言がミスリードである事。
特に被害者を周囲の人達が非難する為、読み手としては同情してしまい、嘘が本当だったと信じてあげたくなるという。本当に巧妙な罠でした。
そして、犯人では無いのに疑ってしまった登場人物達に何となく申し訳ない気持ちになるという。
自分は探偵には向いていなと学びました。
それにしても、残酷な結末です。親が友達を殺して、更には自分も殺されそうになって、そして勝手に自殺されたという。せめて他人であって欲しかったです。とりあえず洗脳が解けると思いたいです。
今回原作オリヴァーに会えて良かったです。映画では心が腐っているのかな?と思わせる人物でしたので、変わった人ではあるけど、ポアロの友人で心の底からホッとしました。
他、この本の中で未だ気になる事と言えば、オリガの居場所を当てた魔女は本当に魔女なのではないだろうかという所です。ハロウィンらしい演出でした。
映画
映画が面白かったので原作も読んでみたくなって買った。全然違った。別物として楽しめたけど、犯人との直接やりとりとか逮捕劇も無く、最後の答え合わせ的なのがあっさりしてて少しがっかり。少女がピンチになるところはハラハラして良かった。再度、映画がみたくなった。
Posted by ブクログ
あの人が目撃したものは。
殺人を目撃したと吹聴した嘘つきの少女ジョイスが殺された。彼女は口封じのために殺されたのか。パーティーに居合わせた推理作家のオリヴァーは、ジョイスが自分の気を引くために嘘をついたのだと自責の念にかられ、ポアロに助けを求める。村にやってきたポアロが様々な人から話を聞いて見つけた過去の事件とは——。
校長先生の勘すごい。誰もが怪しい感じで出てくるし、遺言書の偽造とかも出てくるし、何もかもが関係しているのかと思いきや、真実として出てくるのは、「ジョイスは嘘つき」「遺言書の偽造はあった」「世話をしていた外国人女性の失踪」最初から示されていたことはその通り。解釈次第なのだ。どのように結びつけるかが問題。
雰囲気のあるイケメンが実はかなり強い独自の思想にかられた犯人の1人だったということで。儀式っぽいかたちで死んでしまうのも絵になる。そもそもハロウィンパーティーということでミステリアスな絵が最初から示されている。雰囲気を楽しむ作品。
Posted by ブクログ
クリスティのミステリって大抵、キーとなるトリックや引っ掛けがあって、それ以外は大して重要ではないことが多い。
今作で言えば、それは殺人を目撃したのはジョイスでなくミランダであった点だろう。こういう引っ掛けは面白いし好きなんだけど、事件の真相がやや薄く感じてしまう。あと共感できない動機、混乱しやすい過去の複数の事件… すらすら読めるものの、少し流してしまった。ごめんなさい。
読んでいて楽しいが、満足できる作品とまではいかなかった。ハロウィンに読もうと思って買ったのでハロウィン感もう少し欲しかったというただの欲張り( ∵ )
Posted by ブクログ
★は3.5というところ。いやはや、クリスティー作品にはこんなテイストもあるのか!とまたもや驚かされてしまいました。
これは10月に読もう、と前から決めていてやっと手に取ったのだけど、会話が多いせいかスラスラ読めてしまい、気付けば1日で読破。そして休日の終わりに「はぁ今作も面白かった」と満足感いっぱいなわけです。当初はドレイク夫人と富豪の老婦人との関係がつかめなくて混乱しましたが、家系図が整理できてからはスッキリ。甥夫婦は別の舘に住んでいたということですね。
さて今作では子供が犠牲になってしまうということで、これまでにない緊張感と胸の痛みを感じました。もともと子供好きではない私からしても、さすがにこれは……。
重要な舞台である〈石切り場庭園〉のイメージが難しかったので、これはスーシェ版ポワロに期待したいところ。ナルキッソスのごとく美しい男をどなたが演じるのかも見ものです。
読む方にとっては後味の悪い内容かもしれませんが、個人的にはこれはこれで好き、な作品でした。なにより、『エッジウェア卿の死』もそうですが、自分の信念(と呼んでいいのか)に迷いのない犯人は、読者としてはたいへん印象的ですよね〜。