あらすじ
芥川賞受賞第一作。
公私共にわたしは「いい子」。人よりもすこし先に気づくタイプ。わざとやってるんじゃなくて、いいことも、にこにこしちゃうのも、しちゃうから、しちゃうだけ。でも、歩きスマホをしてぶつかってくる人を除けてあげ続けるのは、なぜいつもわたしだけ?「割りに合わなさ」を訴える女性を描いた表題作(「いい子のあくび」)。
郷里の友人が結婚することになったので式に出て欲しいという。祝福したい気持ちは本当だけど、わたしは結婚式が嫌いだ。バージンロードを父親の腕に手を添えて歩き、その先に待つ新郎に引き渡される新婦の姿を見て「物」みたいだと思ったから。「じんしんばいばい」と感じたから。友人には欠席の真意を伝えられずにいて……結婚の形式、幸せとは何かを問う(「末永い幸せ」)ほか、
社会に適応しつつも、常に違和感を抱えて生きる人たちへ贈る全3話。
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Posted by ブクログ
歩きスマホ。
やっちゃうなぁ。私も。
だめだけど。
でもそれにこんな風に不快感を持つ価値観の人がいる。
こわい。
高瀬さんは人間が怖いと思わせる天才。
自分も歩きスマホをするのに自分が理不尽を押し付けられるのは許せないのが人間の性で。
私も歩きスマホしている人がぶつかってきたら。
道路に押したくなる気持ちがいつか芽生えるかも。。
自分のこの思考回路を植え付けられたような気持ちになる。
読むのが楽しかった。
嫌な気持ちになりたいときにもう一度再読しよう。
Posted by ブクログ
主人公の直子は結局、いい子なのかもしれない。
というか、いい世の中になることを、実は1番諦めていない人なのかもしれない。
・・・
ここからは本文の解釈を。
今の世の中は気がつく人が損をする。搾取される。心の綺麗な大地でさえ、浮気しているのだ。じゃあ、「いい子」ってなんだろう?と考えさせられる。
「いい子は搾取される」という事実が悔しくて、でもそれを公言するほどの強さもなくて。だから、直子は小さく復讐している。
直子だって人は汚い、世の中は悪いと思いたくはないんだと思う。でも目につくのは悪いことばかり。
そんな世の中での処世術は「いい子」でいることだったんだろう。そりゃ、そんな考えのもとで「いい子」を演じているのなら、辟易するよなぁ。
だからこそ、彼女が本当に望んでいたのは、“いい子”でなく“直子”でいられる瞬間だったのだろう。
警察署から出てきた直子に、望海からお見舞いLINEが届いたことで、彼女の中に「嘘偽らずに話してみようかな」という考えが浮かんだのだから。
その心の変化とメッセージを、
「わたしはまっすぐに歩き続ける。どうか、と祈りながら。」
という最後の一文で受け取った。
今までの直子の思考は、「どうせ避けないからぶつかってやろう」だったのに、最後は「どうか避けてくれますように」と祈ってる。
世の不条理さへの訴えと変わることへの願いを、直子の言葉に乗せて届ける感じがすごく面白い。深読みできる作品。