【感想・ネタバレ】演歌の虫のレビュー

あらすじ

演歌歌手を育てて世に出すことに情熱を燃やすレコード会社のディレクターの夢と挫折を、冷めているようで暖かい女性作詞家の眼で描く「演歌の虫」、毎日美しく髪を結っては旦那が訪ねて来るのを待ち続ける老芸妓の心境を淡々と描く「老梅」の第93回直木賞受賞作2作のほか、だめな男に金を貢ぐのをやめられない女の心理をおそろしいほど正確に描く小説「貢ぐ女」、プロ野球選手とポルノ女優のしがらみを生々しく描く「弥次郎兵衛」を収録した著者会心の短篇集。

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Posted by ブクログ

男女間の駆け引きとしがらみを描いた短編4つ。思っていたのとは違い、なかなか重みのある作品群。

表題作は、仕事の腐れ縁というか同朋による、仕事の楽しさと苦しさを描く。演歌歌手のディレクター(プロデューサーか?)、作詞家、作曲家が業界の不満と3人でそれを打破する夢を語り、心を通わせるが、実は温度差が有ったことが、室さんが亡くなったときにわかってくる…。

あとの3作は、男女の関係が不倫やら二股で首が回らなくなっていく話。ショーモナイと言われればそうだけど、筆致の癖もあり、なかなか重くて読み応えがある。

全体に、最後の「演歌の虫」ではないが、演歌(艶歌)の歌詞を読むような、不思議なねっとり絡みつくような文章が印象的。普通の文が会話だったり、その中に「そうね。」なんて文章になっていない単語が入ってきたりして、他の作家ならイライラするようなポイントが、この人の場合はいい感じのリズムになっている。

初読だったのもあり、最近の作家かな?艶歌っていうのは、ハズシのネタかな?なんて錯覚して読み始めたものの、実際には昭和50年代だった。だったのだが、十分に今でも楽しめる話だ。

未来に置いても、古典として残っていく価値の有る作品ではないかと思う。
あとからわかったが、本人の体験(作詞家、銀座のママ、スポーツ記者)的なものが多く含まれている、私小説の部分が多いのだな。そう言われると重みのあるのも納得行く。

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2018年03月15日

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