【感想・ネタバレ】時雨の記〈新装版〉のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

目次
・時雨の記
『時雨の記』によせて
・見事な捨身 河上徹太郎
・或る高度の愉しさ 宇野千代
・恋を描き得た小説 江藤淳
中里恒子 案内
・中里恒子・人と作品 阿部昭
・中里恒子年譜

二十年ぶりに再会した熟年の二人。
実業家の男性と夫と死別して一人で生きる女性。
なんか渡辺淳一臭がプンプンしていそうじゃないですか?

しかし全然違います。
二十年ぶりに再会したといっても、男・壬生の方は覚えていても、女・多江の方は「以前会ったことがありましたか?」とにべもない。
めげずに多江に接近する壬生。

あのね、この二人最後までプラトニックなのよ。
純情ぶっているわけではない。
互いを大切に思うから、無理強いはしない。
気持ちが追いつくのを待つゆとり。

どのシーンを切り取っても、絵になる。
光と影、涼やかな風や、しんとした空気、しっとりとした湿度。
饒舌じゃないのに、情景がきちんと立ち上がる。

吉永小百合が、この作品を読んで映画化を強く望み、大手の映画制作会社にお願いしたけど叶わず、ノーギャラと多数のトークショーを行う条件で製作したのだそうだ。
うん。いかにも吉永小百合が好きそう。
たおやかで、凛として強い女性。

明治生まれの作家の書いた作品とは思えないくらい、瑞々しい作品。
そしてこの作者、女性初の直木賞受賞者なんですって。
いや~、久しぶりに文学読んだ気がするわ~。

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2022年06月28日

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