あらすじ
夫と死別して一人けなげに生きる多江と、実業家の壬生。四十代の女性と五十代の男の恋は、知人の子息の結婚式で二十年ぶりに再会したことから始まった。はじめて自分の本音を話せる相手を見つけた男と、それを受け止めてなお甘えられる男に惹かれて行く女。人生の秋のさなかで生涯に一度の至純の愛にめぐり逢った二人を描き、人の幸せとは、人を愛するよろこびとは、を問う香り高い長篇小説。雅びな恋愛小説を数多く遺した中里恒子の作家案内と自筆年譜付き。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
今でいうセカンドパートナーなのかな。
心は通じて居心地の良い二人。
壬生は50代既婚者。多江は40代寡婦。
この場合、壬生が家庭が地獄であるので、仕方ないよねって思う。
どんなに法律的に妻は妻の権利があるとは言え、壬生の悪妻を誰が良いと思うだろうか。嫌悪感しかない。金はほしい、自由なことをする、わがままで壬生の意見は聞かない。そのくせ別れもしない。壬生が亡くなった後の、悪妻の行動もしつこくて、壬生が気の毒だったのが浮き彫りになっている。
壬生と多江の二人の時間が幸福で安心感がある。
気が合うとはこういうことか。
短い期間だったけど、二人は出会えてよかったと思うな。
一生のうちでよい出会いというのは、そんなにあるわけではない。
ない場合だってあるのだから
Posted by ブクログ
目次
・時雨の記
『時雨の記』によせて
・見事な捨身 河上徹太郎
・或る高度の愉しさ 宇野千代
・恋を描き得た小説 江藤淳
中里恒子 案内
・中里恒子・人と作品 阿部昭
・中里恒子年譜
二十年ぶりに再会した熟年の二人。
実業家の男性と夫と死別して一人で生きる女性。
なんか渡辺淳一臭がプンプンしていそうじゃないですか?
しかし全然違います。
二十年ぶりに再会したといっても、男・壬生の方は覚えていても、女・多江の方は「以前会ったことがありましたか?」とにべもない。
めげずに多江に接近する壬生。
あのね、この二人最後までプラトニックなのよ。
純情ぶっているわけではない。
互いを大切に思うから、無理強いはしない。
気持ちが追いつくのを待つゆとり。
どのシーンを切り取っても、絵になる。
光と影、涼やかな風や、しんとした空気、しっとりとした湿度。
饒舌じゃないのに、情景がきちんと立ち上がる。
吉永小百合が、この作品を読んで映画化を強く望み、大手の映画制作会社にお願いしたけど叶わず、ノーギャラと多数のトークショーを行う条件で製作したのだそうだ。
うん。いかにも吉永小百合が好きそう。
たおやかで、凛として強い女性。
明治生まれの作家の書いた作品とは思えないくらい、瑞々しい作品。
そしてこの作者、女性初の直木賞受賞者なんですって。
いや~、久しぶりに文学読んだ気がするわ~。