あらすじ
ユダヤ教やキリスト教、イスラム教の聖典に描かれ、史跡が数多く残る古都エルサレム。今も世界中から巡礼が訪れる。その文化は、古代イスラエル王国が興った紀元前一〇〇〇年ごろから現在まで、諸民族の激しい攻防をくぐり抜け、受け継がれてきた。本書は、貴重な現地写真など一五〇点以上の図版と共に、「聖なる都市」の唯一無二の魅力を紹介。聖地の起源を物語るエピソードを随所に交え、美術館を巡るように街を探訪する。
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Posted by ブクログ
「専門的研究に裏打ちされたような情報を一般向けに判り易く説く」というのが“新書”なのだと思うが、本書は正しくその「新書らしい」という感じの一冊に纏まっていると思う。
今年は「2023年」だ。これは「イエス・キリストの生誕の年」ということになっている年を「紀元」とした数え方の「西暦」だ。この「西暦」というようなモノが始まった頃、更にそれ以前からの歴史が積上げられている都市というようなモノの存在は、「何やら凄い」と思う。極個人的には、幼少の頃に「住んで居た家の近隣の建物が竣工していない様子で、それらの工事現場を毎日眺めていた」という経験を有している、言葉を換えると「眼に留まる近所の建物の悉くが、未だ幼かった自身より“若い”」という状況下に在って、更に国内でも「古い街」の歩みが「相対的に少し短い」という地方に育っていて、100年を超えているような経過を有する建造物等を然程視ないままに長じたという面が在る。故に、本書が取上げる「エルサレム」というような場所は「詳しく知るでもないが、何やら凄い…」という程度に思ってしまう面が在る。
本書はそのエルサレムの長い長い経過、現在に伝わる史跡等を紹介する内容の一冊である。「西暦」というようなモノが始まった頃、更にそれ以前からの歴史が積上げられている都市の経過と、知られている史跡がよく判る内容だ。殊に、「西暦」の「紀元」とされる「イエス・キリストの生誕の年」ということが在るが、そのイエス・キリストが実際に活動したとされるのがエルサレムの辺りで会ったと伝わっている訳で、関連の事項が本書では非常に詳しい。
イエス・キリストの物語は(新約)聖書に綴られているが、時代が下るに連れて美術作品で色々と表現もされている。そして「行間に想像し得る動き」というモノも考えられる。エルサレムの聖墳墓教会の周辺には、そういう史跡が殆ど悉く設定されていて、祈りをささげる場となっていて、各々の場が色々な経過を持っているのだという。それらが本書に詳しく紹介されているのだが、何やら凄い。驚きながら読み進めた。
本書は、このキリスト教関係のことや、それ以前のユダヤ教関係のこと、それ以降のイスラム教関係のこと、更に少し分類し悪い史跡と、遥かな時の流れを伝える都市が擁している様々なモノを、極力漏らさずに判り易く伝えようとしている労作だと思う。或いは、色々な立場の人の非常に強い思い入れが滲む場所であるだけに、エルサレムは何時も“争点”のようになってしまうということに、何か変に納得してしまった。
興味深い一冊で、広く御薦めしたい。