あらすじ
岩﨑さんの農の話は、種と実りと人の暮らしが巡りながら土地に根差すことの喜びを気づかせてくれる。
──皆川 明(ミナ ペルホネン・デザイナー)
* * *
野菜の人生について考えたことは初めてでした。
野菜の一生に寄り添い、野菜と交流し、野菜から学んでいる岩﨑政利さんの言葉は詩人のようです。
野菜には人間と同じように個性があり多様性を失えば絶えていくことを、この本を通して知りました。
誇らかに花を咲かせる野菜の姿を見てみたい。日本の風景に野菜の花を取り戻したいと思いました。
人間にとって「種」とは何かを、問いかけてくれるすばらしい哲学書です。
──田口ランディ(作家)
* * *
在来種を守るのに大切な視点は、経済や文化だけでない。
岩﨑さんが語る「人と作物の幸せな関係」というもう一つの視点に、目を開かされた思いです。
──江頭宏昌(山形大学農学部教授 [植物遺伝資源学 ] )
----------------------
〈種継ぎ農家が畑で学んだいのちの哲学〉
長崎・雲仙の肥沃な大地で長年にわたり種採りに情熱を注いできた著者が、まだ見ぬ後継者たち、そして野菜を愛するすべての人に向けて綴った。
──農家であることの喜び、野菜と種がもたらす人生の醍醐味とは。
----------------------
施設園芸で化学肥料を極めた若き日から、有機農業と出合いたどり着いた無肥料・不耕起の在来種野菜づくり。
挫折と孤独、そして大いなる喜びもまた──。
在来種野菜と種に人生を捧げつづける長崎・雲仙の農家が語る唯一無二の種採り哲学。
----------------------
【もくじ】
◆はじめに
〈第1章 雑木林が教えてくれた〉
■農家になりたくなかった
■最先端の農業を学ぶ
■父とはちがう農業をめざして
■原因不明の体調不良
■有機農家への転向
■消費者団体がいたからこそ
■自分がやってきた農業に向き合う
■雑木林が私の師
■雑木林から見つけた農法
■それぞれが農法を極める
〈第2章 野菜の一生〉
■種と生きていく
■種を採るという営み
■種も人間と司じ
■種は心を映す鏡
■在米種とF1種
■端境期を乗り越える
■野菜の花は美しい
■花を中心とした多様性
■野菜の大往生
■種を採ることはひとつの手段
■手もとにある50種類の種たち
〈第3章 個性豊かな種たち〉
■おいしさが大切
■種がもつ物語
■種を受け継ぐ
■さりげない野菜とは
■平家大根のロマン
■野菜を原種の姿へ戻す
■種は宝探し
■種を旅に出そう
〈第4章 野菜と暮らす〉
■野菜の生きる姿に学ぶ農の世界
■食べてみて初めてわかること
■野菜の手紙
■種をあやす
■野菜と暮らしていく
■自然を聴いて心(み)る
■ひとりの農民ができること
■人と作物の良い関係
〈第5章 また、種を蒔く〉
■種を100年残すために
■食べてつないでいく
■農業という枠から外れたとしても
■そこにしかない食を求めて
■地域のひとつのモデルとして
■種からはじまる
■次世代へのバトン
◆おわりに
----------------------
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
感動しました!「農法とは言葉探し」と語られる著者の岩﨑政利さんのことばに、通勤電車でウルウルしてました。「食」に関心のあるかたや、「食のビジネス」に関わるかたにおすすめします。
岩﨑さんは、長崎県雲仙の「在来種野菜の生産農家」さんです。岩﨑さんの在来種野菜は50種になるそうです。有機農法で栽培して種をとる、これを40年にわたって続け、種をつないでいるかたです。
タイトルの「種をあやす」とは、在来種野菜たちの種とりの様子が、まるで赤ちゃんを「あやす」ように見えるから、だそうです。
岩﨑さんは「尋常ならざる農家」さんです。読んでわかりました。修行僧のようなかたです。それも「千日回峰行」をなしとげた「大阿闍梨」のようなかたなのです。
農業は職業であり、ビジネスですよね。
でも岩﨑さんは、
「心がふるえるほど感動したり、花を美しいと感じたり、ときめいたり、そういう心で感じる農の世界もある」(P120)と語られるのです。
すでに70歳を過ぎた現在にあっても、感性をより深め、農民としてさらなる高みを目指されています。
岩﨑さんは実家を継がれ、一般的な慣行農業をされていました。29歳をすぎ、結婚、お子さまの誕生、借金の完済と順調な日々。それがある日、突然の体調不良に。
そんな個人的な体験を経て、ユニークな有機農業へと、真逆の方向に大きく転換されました。
知りませんでした。種をとるには、種をまいて待ってればよいわけじゃないんですね。どれを残すのか「選抜」しないといけないようです。
例えばニンジンならば、抜いて姿かたちを見て、自分の感性でおいしくなりそうなものを選び、植えなおすそうです。
「多様性」を大切にされる岩﨑さんの40年の経験から語られるお話は、とてもおもしろいです。
岩﨑さんは「在来種野菜のおいしさ」に強いこだわりをお持ちのようです。本当にすばらしいです。
長年、受けつながれてきた「種」を守っていくには、「食べる人」が大切であり、そのための「おいしさ」なのです。おいしさを大切にして、そこに安全が付け加わったらよいと、優しくさらっとした語り口ですが、深いお話でした。
この本は、奈良の大仏様近くで、平日普通の会社員の店主さんが、土日だけ営業されている小さな本屋さんで出会いました。これも仏様のお導きかな。感謝です。
Posted by ブクログ
市民農園をはじめたことをきっかけに、知り合いからオーガニックペースのことを教えてもらって読みました。野菜の種の多様性を受け入れているような雰囲気を持つ、柔らかく芯が通った本でした。
Posted by ブクログ
在来種の野菜、種をついで守ってきた著者の語りはとても優しくあたたかい。
F1種はダメだと切り捨てるのでもなく在来種をただ守ろうとする姿勢と、何かをずっと伝えていこうとすることの大切さが沁みてくる
Posted by ブクログ
種とりは大事だと習ったが、この本を読んで改めて実感した。何十年とかけ守り伝える、心の強さ。思いの熱量。守る理由。著者が自ら体験してきた数々の事例が言葉の重みを増している。伝わってきたし、伝えようとすることの大切さを感じた。
Posted by ブクログ
種を とる(採る)
ではなく
種を あやす
もう その一言に
岩崎さんの 野菜に対する
思い 願い 愛情が
強く感じられる
F1の種で作っておられる方にも
自然農法に拘っておられる方にも
どうしたらいいかなぁの日々試行錯誤の方にも
読まれて欲しい一冊です
播磨地方で「ひょうごの在来種保存会」の代表
をされていた山根成人さんがつい最近、
ご逝去されました。
山根さんと この一冊を語り合いたかった…
Posted by ブクログ
言葉を大切にする筆者だから「あやす」と言う言葉を使ったのだろうけど、合わない。
タネをつなぐと言うことだろうけど、あやすでは何のことだかイメージできない。
種を次世代に繋いでいく事の大事さを言っているのだと思います。
Posted by ブクログ
筆者の岩崎さん、自分の農法、農業、作物にものすごく誇りを持っていて、それゆえ次の世代にも自分のような農家がいてほしいって書いてあったのが印象的だった。
その誇りはどこからくるのだろう、ずっと伝統種を育てて、種を大事に、野菜と真摯に向き合っているからなのかな。一般的な育て方じゃなくて廃れやすい、誰かがやらないと失われてしまうからなのか。お金を全然気にしてないことが印象的だった。販路が見つからなくて移動販売した時もあったことは書かれてあったけど、賃金が低いことを気にせず誇りを持って農業をやっているのは、心の底から在来種を育てること、種を採って育てることを楽しんでいることと、消費者のおいしいという声を楽しんでいるからなのかな。
個人経営で在来種を育てていると農業問題にはあまり直面しないのかな、その背景はもしかしたらあるかもしれない。
旬の野菜は寧ろ今の社会では勝てないことがわかった。旬じゃない野菜が買えるしそれが当たり前になっているから。しかも旬の野菜はたくさん取れるから安い。
あと、本を読みながらもう一つ思ったのは、販路として役に立つことももちろん必要ではあるけれど、今生産者と消費者が分断されがちな中で、販売を通して農家さんの誇りを引き出せて、この岩崎さんみたいに次の世代にも継いでもらいたいって思えるようになったならば、それは地域おこしに貢献しているのではないか。販路として、お金の獲得先としては難しいかも知れないけれど、触媒としてお客さん、農家さんを地域おこしの方向性に持っていけるのではないだろうか。販路の位置付けからは少しずれてしまうかもしれないけれど。