【感想・ネタバレ】気がつけば生保レディで地獄みた もしくは性的マイノリティの極私的物語のレビュー

あらすじ

無名の出版社、無名の文学賞、無名の作家
三冠無名のノンフィクションシリーズが創刊!

記念すべき第1弾は「生保レディ」の世界!

●あらすじ●
就活に疲れ果てた若者がたどり着いたのは保険の世界。
洗練された女性保険外交員に憧れ、いざ飛び込んでみると、あまりにも過酷な現実が待ち受けていた!?

おそるべきノルマの実態、宗教グループよろしくな狂気の決起集会
女性社会特有のセクハラ発言に男性上司からの高圧パワハラ
日々病んでいく先輩や同僚、気になる枕営業の真相にLGBT問題
契約取れずに友人に営業をかけてグループLINEから強制退室
テレビ局にブラック企業っぷりを訴え取材をしてもらうも報道自体がお蔵入り
えぇ! 今月の給料9千円!?

結婚、出産、マイホームに親の介護……ルーティンで伝える「生涯設計」に、パンセクシャルな主人公はモヤモヤな気持ちを抱いたままに営業を続ける。徐々に擦り減っていく精神、追い込まれていく主人公は、現実からの逃避を自殺に求めてしまう。

「自殺って死亡保険金でたっけ?」

駅のホームから飛び降りる直前、職業病が彼女を救うも、ノルマから解放されることはなく…

生命保険ってオイシイの? 生涯設計、ゾッとするわ!

●気がつけば○○賞 大賞受賞作●
2022年2月22日より募集を開始した、「古書みつけ(気がつけば○○)ノンフィクション賞」の受賞作がいよいよ出版! 応募総数166の中から選ばれた第1弾をご賞味ください。

●気がつけば○○賞とは?●
約20年にわたって書籍や雑誌をつくってきた編集者が、「気がつけば警備員になっていた。」(堀田孝之/笠倉出版社)という書籍の編集を担当したことがはじまり。「気がつけば○○」というシリーズ化を望むも、大人の事情で断念。その想いを捨てきれず、自らがつくった古本屋を出版社化させて文学賞を創設、そして、シリーズ創刊に踏みだした!

●最終審査員3人からのコメント●
新井英樹(漫画家)
実話、でも小説のよう。描き込まれた体温が現実をやさしく包む!

加藤正人(脚本家)
保険業界の過酷なノルマに追われる主人公の苦しさを、奇妙なユーモアとペーソスで描いた秀作。面白い!

本橋信宏(著述家)
職業の舞台裏を本人が綴った読み物が多々あるなかで、本書の存在感は際立っている。

●生保業界の生々しさが伝わる本文抜粋●
「看護婦」が「看護師」に、「スチュワーデス」が「キャビンアテンダント」に、性別による呼称の呪縛が解かれつつあるのに、いまだに「生保レディ」と呼ばれる私たち。(中略)「生保レディ」なんて呼ばれ方をしている限り、私たちはいつまでたっても性別のフィルターを外した一人の人間として見てもらえないかもしれない。

今、業界の闇が明かされる!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

面白くて一気読みした
生保の地獄っぷりがリアルで面白かった
主人公みたいに一回転がるとどんどん歯止め効かなくなる人、どれだけ地獄見ても帰ってくる人、のしあがる人、最低限こなしてのらりくらりやる人、いろんな人がいるよね…
それも教えてくれるし、何よりラストが良かった。

自分も働いてる時、会社だけじゃなくて職場の人さえも敵に見えること多かったけど、
(一挙手一投足本当にそう思えていた)
少し離れて見ると敵なんかじゃなくて、、
自分がそこまで追い詰められて思い込んでしまっていただけで。
ちゃんと同じ組織の一員で、人としてずっと変わらず接してくれていたんだなと気づいた。

つい自分を自分で追い込んでしまう人に、良い本だと思った。

0
2025年09月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

とてもシリアスな内容なのに軽めのタッチで、時にユーモアのある表現を交えながら恐らく実体験に基づいてかなりリアルに描かれていて、突き刺さる言葉がたくさんあった。

モラハラやコンプライアンスが問題として表面化している昨今でもこのような世界がある事に驚いた。上に立つ男性と働き蟻のように下でもがく女性という支配関係、土日サービス残業するとかの努力の過程は評価されず契約という結果だけが評価される世界。そりゃ辛くなるよね。
神経症傾向がかなり低めの心臓に毛が生えている人でないとこの仕事はやっていけないけど、サイボーグのように強そうに見える人たちもまた一人の人間だから妻だってり母だったりする訳でマスターのそういう一面を最後に見れたのは良かったのかもしれない。


精神的に追い詰められている感情が無になる感覚、「私にとっては辞めることが死ぬことよりも怖いんだよ」というフレーズ、辞めた人が不幸になればいいのにという自分の暗い部分を言語化してる所は、自分も仕事や人間関係追い詰められたときに感じたことがある感覚だけど封印していた気持ちであったので「よく表現してくれた、ありがとう」と言いたくなった。

最終的に筆者が物を書くことによって「保険屋」という生き物から「人間」に戻ったのはとても良かった。その世界にいるとその中でしか物事を考えられなくなるけど、一度辞めてしまって外の世界に目を向けるといろんな世界があるということに気付けるからいいのかもしれない。

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以下、自分のための備忘録。

p62 上条聖子という人はもしかしてこの会社に2人いるのだろうか。就活生や内定者と接してきた人と社会人になってから関わる人。違う人?双子?あるいは二重人格?
115 締め切りの日が近づくにつれて私の行動からは常識や理性が抜け落ちていった。音もなく抜け落ちるものだから私自身その欠落に気づかなかった。

ノルマは目標ではなく達成できて初めて生きていることが許されるのだ。

142その日から彼女は変わってしまった。壊れたというのがしっくりくるかもしれない。

148 みんな人当たりよく笑ってるけど目が座ってて作り物みたいで不気味だった。
壁の成績一覧、自分の名前の上に契約がないとやはり焦る
155 本来土曜は休みだけど締め切り前は暗黙の了解でノルマが達成できていない面々は出社してテレアポをする。女性が働きやすい職場。確かにそうだけど何かが歪んでいる。働きやすさを餌にしてこき使っているような。

166 自分の感情、感覚がわからない。怒っているのか、悲しんでいるのか、わからない。そんなものは契約をとるのに不要なもののように思えた。アルコールが入ると内側から熱くなり自分が自分でなくなるような感覚に目がまわる感覚になるあの瞬間を求めていた

182 この世界は多数派のためにできている。右利き用は圧倒的に手に入りやすく左利きはわざわざ探さないといけない。

209 女性に働きやすい職場、でも上に立つのは男性ばかり

とんでもない日常が普通でとんでもないとも思わなくなっていたので、とんでもないと他人に一蹴してくれたことで正常な感覚が戻った気がする

226 3年働かないと転職先が見つからないのに辞めるなんて路頭に迷うだろうとこの会社から去っていく人を哀れんでいたけど皆次の仕事を探して新しい職場で生き生きとしている。その報告を聞くと気が狂いそうになり、辞めた奴らは皆不幸であって欲しいとすら思う。そうでないとこんなにも正社員にしがみついている自分がバカらしくなる。辞めた人は辞めたことを後悔して悔やんで惨めったらしく生きて欲しいのに幸せそうにするから私の心を揺さぶる。

休むということの後ろめたさ。意味泣く泣くようになった。感動したとか悲しいとかの理由もなく意味なく垂れ流しになる。呼吸をするように泣いている。自分は社会に不要な人間だ、休職なんて情けない。

232 脆いくせに責任感が無駄に強くて頼られると自分を削ってでも応じようとする、その悪い癖が発動した

257 泣き声も怒鳴り声も全てもう慣れてしまったのだ。誰かが過呼吸を起こして倒れてもよくあることで終わりにできる。人間から保険屋へダーウィンもびっくりの進化を遂げている

258 すしざんまいのポーズをしながら言葉をリピートする。北斗の拳のラオウのように拳を突き出した。やっぱりここは宗教団体かもしれない。

260 全員分にシャインマスカットが配られた。1年目は無邪気に喜ぶが他の面々は引いていた。チャラ男が彼女から手編みのセーターをプレゼントされたような気分だ。重い。

302 トイレの両脇に大量ないんもう

311 芥川龍之介の羅生門を思い出した。死体の髪を抜いてかつらを作りそれを売って金にしようとした老婆

321 保険に入るのに障害があればそれを私がどうにかしてあげる。岩ならば砕くし獣が立ちはだかっていればかってあげる。悪い意味での死に物狂いだった。

名前の上にようやくさいた花。営業成績一覧に積まれた契約を観ながら胸を撫で下ろす。思わず笑いそうになった。漫画のワンシーンのように床を転がり大声をあげて笑うような。とにかく笑えて仕方なかった。

私はその称賛の言葉を受ける立場ではないから優しい言葉がナイフのように体に刺さって私に善悪の感覚をじわじわと戻させる。私って何をしていたのだろうと恐ろしくなった。

契約をつむにはもう手段を選んでいられない。

328 今まだの私はどうかしていた。今日からは心を入れ替えてちゃんとしよう。もうあの呪文は使わない。そう心を入れ替えて出勤してアポに向かうものの真面目にやってもやはりら契約は取れないのだ。

契約をとる以外に頭が働かない。何も面白くない。何も楽しくない。何も興味が湧かない。もう仕事のことも何も考えたくない。
何も考えなくてもいい世界に行きたい。

331 私にとっては辞めることが死ぬことよりも怖いんだよ。死ぬ事に前のめりになる。

334 なぜそのようなことをしたのか、この言葉にできない気持ちは契約を取らずに働き蟻のように管理するだけの本社の人には電車に飛び込もうとした新庄もわからないだろう

この仕事は嫌われる事に慣れていないといけない

351 自分の感じたい風を感じに行ってくる
たまに担当していた地域をあてもなくいくことはある。辞めた後は関わっては行けないルールなのでひっそりと歩く。仕事をしていなかったらなんのゆかりもなかった住宅街、管理人さんと顔馴染みになったマンション、建物の名前と場所を覚えた団地。歩くだけで懐かしい。

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2025年06月28日

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