【感想・ネタバレ】ロックの正体のレビュー

あらすじ

ロックとはなんだったのか? 進化心理学、認知科学、神経科学、人類学、霊長類学、自然主義哲学、二重過程理論、処刑理論、生物学的市場仮説、お婆ちゃん仮説 etc. ――最新のサイエンスと歴史知識を駆使してロック文化を多角的に考察する。情熱的に語られがちなロックを、冷静に、理性的に、縁側で渋茶をすするお爺さんのように語る、前代未聞のポップカルチャーの哲学。好評連載「ロックの正体」(晶文社スクラップブック)を完全書籍化。

目次
1 おもむろに、老人がロックを語り始める
2 森のゴリラのダンスパーティ
3 なぜ歌うのか? なぜ踊るのか? なぜ戦うのか?
4 奴隷と自己家畜化のロックンロール
5 協力と競走の協奏曲
6 ロックンロールがロックに変化して実存主義と出会う
7 良かれと思ってHighway to Hell
8 メインストリートの文学者
9 ドラッグ・フロイト・ロックンロール
10 熱く語れ!……その結果
11 暗い時代の小春日和
12 メイド・イン・ジャパン
13 発表します。資本主義の正体について
14 ミスマッチにより青年は荒野を目指す
15 文明化と道徳化のロックンロール
最終楽章 CODA ロックの正体
Bonus track あるいは参考文献という名のブックガイド

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

タイトルと本のカバーからはワイルドでヴァイオレンスな印象がするが、その印象とは裏腹に、文化としてのロックを文化人類学的に捉えたもの。

アーティストのバイオグラフィーやらアルバム紹介などは一切なく、ロック史をある程度抑えていないといまひとつ楽しめない本ではあるが、自分のような理屈っぽい人間にはなかなか楽しめるものではあった。
熱いロック解説やアーティスト紹介・アルバム紹介などを期待すると大ハズレでしょう。

第1章から第3章くらいまでは、ロックの特性を「衝動性」と「祝祭性」として、それは元々サルからホモ・サピエンスに進化していく過程で得た人類の特性と大きな関連性があることを論じている。
第4章は、ロックのルーツである黒人音楽と白人が出会ったのは、奴隷貿易下の三角貿易のネットワークの平和利用によるものと言及。そこから、60年代〜70年代に起きたロックの進化や隆盛、サブジャンルへの分岐などに沿って、資本主義やら脳科学やら哲学やらがロックを通じて論じられていくという構成。
ロックを学問的に捉えるという部分では今まで論じられなかった角度からの視点は新しい。

素朴な感想としては、こういう論じられ方がされるほどにロックという文化は成熟したのだなぁということ、言い方を変えればすでに時代と並走して進化を続ける文化ではなくなり、終わってしまった文化なのだなぁ、ということでもある。帯の紹介文も「ロックとはなんだったのか?」と過去形ですからね。
60年代黎明期から70年代半ばまでが文化としてのロックのピークであり、その後は商業的には80年代がピークとなるものの、細分化を繰り返しサブジャンル、サブサブジャンルの発生に連れて衰退していった。

0
2023年05月14日

「学術・語学」ランキング