あらすじ
世界各地の家庭に滞在し、その家の人とその土地の食材で料理をして食卓を囲むと、
それまで気づかなった疑問が湧いてくる――
・どうしてここのほうれん草は日本のより味が強いんだろう
・肉とチーズを一緒に食べることが宗教的にだめってどういう理屈だろう
・なぜアボカド産地なのにいいアボカドが買えないのだろう
・ブルガリアの人って本当にヨーグルトをたくさん食べるんだろうか
そんな疑問から、食べ物と政治、宗教、環境、教育、気候、民族などとのつながりを解き明かしていく。
台所探検家・岡根谷実里が探る「おいしい/おいしくない」を超えた料理の向こう側の話。
第1章■食と政治 ブルガリア ヨーグルトは本当に「伝統食」か?
メキシコ アメリカナイズされるタコス
ベトナム 元技能実習生たちが作る精進料理
スーダン パンの普及が生活を揺るがす
★コラム1 おみやげに喜ばれる日本のお菓子は?
第2章■食と宗教
イスラエル マクドナルドにチーズバーガーがない――食べ合わせの謎に迫る
インド 世界一厳しい? ジャイナ教の菜食と生命観
★コラム2 機内食に見るフード・ダイバーシティ
第3章■食と地球環境
ボツワナ アフリカの大地で出会った、タンパク質危機を救う最強の魚
メキシコ アボカド人気が大地を渇かす
★コラム3 世界のサバ缶30種を食べ比べてみた
第4章■食の創造性
フィンランド パンケーキ作りに透けてみえる子ども中心教育
ベトナム 代替肉のルーツを探して寺の台所へ
第5章■食料生産
キューバ 食料配給制が残るオーガニック農業先進国
中国・上海 安心して食べられる野菜を求めて
ボツワナ 牛肉大国でなぜ虫を食べるのか?
★コラム4 卵大国の日本、なぜ卵はずっと安いのか?
第6章■伝統食と課題
モルドバ 自家製ワイン文化とアルコール問題
中華文化圏 進化する月餅と増える廃棄
★コラム5 ラマダンの時期、世界の食欲は増す
第7章■食と気候
ウズベキスタン 日本の野菜は水っぽい?
コロンビア 豊富な気候帯が生み出す一杯のスープ
★コラム6 世界の家庭の朝食はパンとシリアル化が進む
第8章■食と民族
パレスチナ 国境よりも堅いオリーブの木と自家製オリーブ漬けの誇り
ヨルダン シリア難民がもたらした食文化
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
生活に密接に関わっているからこそ、あまり深く考えてこなかった「食」について、改めて考えさせられた。飽食の時代に生きているかつ、何不自由なく各国の食材が手軽に手に入る日本に住んでいると、スーパーに行って値段だけを見て食材を手に取ってしまいがちだなあと。
この本を読んでからは、その食材の産地、国に思いを馳せる時間を作ってみたくなった。
Posted by ブクログ
ティラピア・・・池や湖に住む淡水魚。養殖料は鯉に次いで世界二位。
魚が肉に比べて腐りやすい理由は、生育環境。水の中で生きる魚は、水温で生きられるよう低音でも働く酵素を持っている。そのため冷蔵しても酵素が不活性化せず、自己消化が進んでしまう。また、魚の油は (多価不飽和脂肪酸)は低温でも固まらないため、これらが酸化していやなにおいを放つ。日本では馴染みがないが、ティラピアの身はくせがなくら魚臭さもなく、骨は太くて身離れがよい。高たんぱく低脂肪で、ナイアシンやビタミンB12を多く含む。いずみ鯛という名で2018年にイオンが販売している。コストコでもある。
Posted by ブクログ
著者が世界の色々な国の家庭に訪れて家庭料理をごちそうしてもらう。そこから見えてくることや不思議に思うことをデータや歴史、政治にに基づいて考察しているのでとても理解しやすいとともに多角的にその国や地域の文化を知ることができてとても面白かった。中学生あたりにこの本に出会っていたらもっと勉強が楽しくなっただろうなと思った本です。子どもから大人までぜひ読んでほしい本。
Posted by ブクログ
返却するのが惜しい本!世界の食べ物を知りながら、食べ物を通して各国の現状と社会情勢が見えてくる一冊。内容も軽くて読みやすい。特に興味深かったのは、イスラエルの食べ合わせ(コーシャと非コーシャ)、ブルガリアのヨーグルト事情、メキシコのタコス。パレスチナの章では、取材した方は大丈夫なのだろうかと胸が痛んだ。日本では、世界情勢を知らずとも平和に過ごせるけど……知らない世界について関心をもつことの大切さを教えてくれた。客観的に日本を見ること、他国を知ることで見えてくる日本がある。
Posted by ブクログ
この本、かなりおすすめです。
初めて知ることがとても多かったです。ブルガリアのヨーグルト消費量は、共産主義国家になった影響で増えたとか、イスラエル入植者が、イスラエルの低所得者であるとか、ボツワナの芋虫食は、タンパク質摂取のためではないとか。
パレスチナの項で、パレスチナの人が、この地を離れても、オリーブの木を目指して帰ってこればいい、と言っていたのが心に残りました。
Posted by ブクログ
久々に「読み終わってしまう…」と寂しくなりながら、読み終わった一冊。
きっと現地に行く、日本在住の現地の方と話すだけでなく、たくさんの文献などからこの本を書き上げられたかと思いますが、その緻密さを押し付けることなく、決してかしこまりすぎることなく、こちらにスーッと入っている表現の仕方で、とてもおもしろかった。
そして、
あなたの明日からの食が、「おいしい」を超えて世界への扉となることを願っています
との締めくくり。
最高!!
他の著書も読みます。
そして、何かの機会があれば、ぜひ直接お話がお聞きしたい!
Posted by ブクログ
この本はかなりオススメ!!
世界の食を紐解いて国の情勢、世界の動きにつながる。作者が足で、舌で体験した事実と調べ上げたデータを使いわかりやすく地理、歴史、宗教、政治に話を広げていく。世界の台所探検家、岡根谷実里氏
機内食データからの宗教観も面白かった。
他、リスト表がまた秀逸。宗教で食べられるもの、食べられないもの、その一覧が興味深い!
紹介される各国の料理が写真付きで美味しそう。虫でもなんでも食べられる作者は素晴らしい!
マヤ文明やアステカ文明の遺跡からもとうもろこし栽培の痕跡が見つかっている
メキシカンタコス= 柔らかいとうもろこしの皮、白色、遺伝子組み換えGM品種の栽培禁止
アメリカンタコス= 硬いとうもろこしか小麦粉の皮、黄色、加工時に水酸化カルシウムの入れすぎ、輸入とうもろこしの9割がGM品種
p. 26〜
ラロット、ベトナム野菜を使ったおかず、葉にあんを包んで揚げる
スーダンでもパンの普及が増え、アフリカ大陸に広く分布するアスィダ、と呼ばれる粥
1949年、戦後に世界中で、小麦余りが生じてアメリカでは法律で、余剰農産物処理法を通し、途上国への食糧支援とした。スーダンも1974年からアメリカから小麦輸入を開始 p. 54
イスラエルは、シナイ半島の東側に位置、イスラム教徒が多い中東だが、ユダヤ教徒が74%をしている。
イスラム教の食戒律はハラル
ユダヤ教はコーシャ、全てに適応し、いくつかの条件を満たしたもの
ex: コーシャは、蹄が分かれた反芻動物、ウロコとヒレのある魚 p. 74
ジャイナ教は、西インドのグジャラート州が多い。
野菜づくしの料理が並ぶが、何を食するかは若い世代には結構自由化。
野菜なら全て食べられるわけではなく、地面の下の野菜はたべない。地中の虫や微生物を殺してしまうから… p.84
ボツワナ、南アフリカのすぐ北に位置する、内陸国で砂漠気候。貴重なタンパク質、魚の名前は、ティラピア。海ではなく、池や湖に育つ淡水魚。
養殖量は、コイ類に次いで第二位。21世紀で最も重要な養殖魚、ともいわれている。
陸上養殖、と言われる、畑の合間の水田や湖で育てるので、内陸でもできる。また、植物性の餌やプランクトンで育つため、タンパク質生産効率がとても良い。アジアと、アフリカで8割のティラピア養殖
「いずみ鯛」がティラピア、2018〜イオンが販売
コロンピー、ペルー、ボリビアでコカイン
メキシコでヘロインが生産。
アボカドの栽培には、トマトの10倍近くの水が必要、栽培できる土地が限られ、メキシコの農地拡大による森林伐採も問題に。貧困状態の家庭を養うためには森林を切り開き畑を広げなければならない。
そして、麻薬組織、カルテルの次の資金源として、アボカド農家を訪ね、家族を人質に取り、土地や売上の手数料をとる、Green Gold と呼ばれる。
フィンランドのパンケーキ作りに透けて見える子ども中心教育。自分がダメ、と言いたくなるとき、なぜダメなのかかんぎえてみて、合理的な説明ができない場合はやらせることにしたの。でもいつも葛藤よ。こちらも日々学んでいる感じ p. 141
フィンランドは、OECD経済協力開発機構の実施するPISA 学習到達度テストで、読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの三分野で2000年以来1位を取る。子どもを中心に据えた福祉的なアプローチで高い成績を収めている。
身につけた読解力が、テストでいい点を取るためではなく、自ら学び考えて生活を作ることに活きている。 p. 144
子どもの権利を第一原則に
テストで評価しない
教師は修士号以上の専門職
教師の裁量が大きい
遊びは学びます、図工は創作
1950年ごろは規律を重んじたみんな同じ教育だったのを1990年代の教育改革で分権化し、子ども中心に。資源が乏しい国だからこそ人材こそが資源!
p. 150
ヒンドゥー教、ジャイナ教、仏教の共通思想は、
アヒンサー不殺生。仏教では、不殺生戒として定められる→ 肉をやめて菜食に!→インダス文明で人口激増のインド亜大陸において肉を求めたら食材不足に。そこで資源効率の悪い肉を禁じ、採食に仕向ける理屈を作り出せばいいと。 p. 162
クックパッドのアクセス数は、ラマダン時期に通常の2倍に跳ね上がる!食料が値上がり。
本来は「食のありがたみ
再認識し、貧しい人の境遇に想いを馳せる」行事が、日没後は宴会に! p. 234
南米コロンビアは、単位面積あたりの生物多様性が世界一。様々な気候がある国土なので、可能にp.261
世界の家庭の朝食は、パンとシリアル化が進む。
忙しい朝には時間をかけられず、新石器時代に農業が始まり余剰農産物を貯蔵するようになり、朝食の概念ができた。
炭水化物、タンパク質/卵、水分と少しの野菜、果物で。
最後はパレスチナ、ヨルダンの難民問題にも触れ、彼の地で逞しく生きる人々の食事からの情勢を学ぶ
Posted by ブクログ
ブルガリア、メキシコ、ベトナム、ボツワナ、レバノンなど、世界の普通のご家庭を訪ねて料理を食べ、家庭の様子や食糧事情など書かれています。興味深い内容ばかりで、一気読みしました。
一番最初に紹介されているのは、ブルガリア。そう、ブルガリアといえばヨーグルトのイメージです。ブルガリアの料理として代表的なヨーグルトスープが紹介されています。でも、なぜブルガリア=ヨーグルトなのか。それを知ると、うーんそんな背景が…、となります。
「料理は地理と歴史でできているのだ」と著者は書いています。
パレスチナの食卓で必ず出される自家製オリーブの塩漬け。街では深く根の張ったオリーブの木が道の両脇に植えられています。土地を追われた家族の妻の言葉はとても重いものでした。
「たとえこの土地を離れなければいけなかったとしても、オリーブの木が生えていたら、そこがパレスチナ人の土地だったとわかるから、帰って来られる」
私たちにできることって何だろう。
Posted by ブクログ
現地の人々から生の声を聞き、自分の舌で味わいながら、食に関する疑問について探ろうとする筆者の行動力と熱意は、尊敬に値する。
データの図解がわかりやすく、料理のビジュアルを写真で見ることで、更に筆者の体験談の解像度が高くなるところが良かった。
口にする物について、普段自分があまりに無頓着だったと感じる話題が満載。
また、全人類に共通して必要な「食」であるからこそ、異国の相手であっても理解の糸口になるのではないかと思えた。
Posted by ブクログ
イスラエルにチーズバーガーがないのはなぜ?埼玉の寺でベトナムの精進料理が作られる事情とは?キューバはなぜオーガニック農業先進国になった?
ある国や土地特有の食文化が生まれた背景には、単なる好みだけでなく政治、宗教、気候、教育などが深く関わっている。誰もが親しみやすい「食」を入り口に、その国の歴史や地理や社会問題についても考えさせるルポルタージュ。大学で土木工学を学んだのちクックパッドに入社、やがて以前からよく訪れていた海外の食事情を紹介する「世界の台所探検家」となったという著者の経歴もユニークで面白い。
Posted by ブクログ
海外旅行しても、食事は、ホテルかレストラン。家庭に入り込むなんて無い。だから読む理由ではあるが。機内食だけは、試せそう。ビーガンとか色々食べてみようっと。今迄避けてきたから。
Posted by ブクログ
食を通して世界が見える。社会問題や文化、歴史、家族…様々なものに結びつけて展開されていく著者の好奇心旺盛さと探求心がすごい。とても興味深く読んだ。
ベトナム人が身を寄せる日本の寺からわかる技能実習生の問題
スーダンのパンからわかる外交、国内情勢の問題
フィンランドのパンケーキ作りからみえる子供中心の教育
日本の野菜は水っぽい?気候より時短をもとめる社会環境
中国の月餅(贈答品)の進化と廃棄問題
代替肉と仏教
食べ合わせや禁止の食物は理にかなっている
朝食のパンとシリアル化
ラマダンの時期には食品価格が高騰、レシピ検索サイトの閲覧数が2倍
著者のいう
世界一おいしい社会科の教科書を作りたい
に近づいていると思う
Posted by ブクログ
著者が言うように、これまさに「世界一おいしい社会科の教科書」だった!めちゃくちゃ興味深かった。世界にこんな料理があるよー美味しいよだけじゃなくて、各国の家庭の食事に世界情勢や政治や思想が反映する、それを丁寧に分析しているのがほんとに素晴らしい。
あとコラムが本編レベルに密度が濃く秀逸。とくにエアラインの特別機内食、試してみたい…
Posted by ブクログ
筆者が掲げる「おいしい社会科の教科書」という言葉に違わず
食を通じて、見知らぬ国の、縁遠い文化のあり方を学べる。
興味関心の広げ方という意味では、資料集におけるコラムを読んでいるような多幸感があって、こういった読み口の本が書棚を占めていると有難いことだと思う。
Posted by ブクログ
普段何となく聞き流していた世界のニュース
政治的な事は苦手で、いまいちよく分からない
宗教問題も難しい…
そんな私の脳内が急に明るくなった
あぁ、そういう事かと腑に落ちる
そして、もっと知りたいと欲が出る
私にとって、そんな一冊だった
著者の岡根谷さんは、世界各地の家庭を訪れ、滞在させてもらいながら一緒に料理をし、料理から見える社会や暮らしを伝えているのだそう。
だから様々な国の、飾らない“いつもの”食生活を伝えてくれていると思う。
どの国の話も興味深いのだが、例えば…
※キューバ
「食料配給制が残るオーガニック農業先進国」
オーガニックと聞くと、健康や環境への意識の高さが伺えるが、物がない中で食料を生産するために発展した苦肉の策らしい。
毎日の食料は、米・豆・油・砂糖などの配給と、品揃えの悪い市場を数件回って少し買い足す。
本当に物がない国においてのオーガニック農業。
そこにはキューバ革命と米ソが影響していた。
化学肥料も農薬もトラクターを動かす燃料も入ってこない。
仕方なく牛耕へと回帰したという訳だ。
※ブルガリア
「ヨーグルトは本当に伝統食か?」
※メキシコ
「アボカド人気が大地を渇かす」
※ボツワナ
「牛肉大国でなぜ虫を食べるのか?」
※パレスチナ
「国境よりも堅いオリーブの木と
自家製オリーブ漬けの誇り」
───他全19話とコラムを収録
政治、宗教、地球環境、食の創造性、食料生産、伝統食と課題、気候、民族と、料理を通して様々な事が見えるって面白い!
Posted by ブクログ
世界の美味しい食べ物の紹介かと思いきや、ほんとうに深く、環境問題、人権問題繋がっていく。。こんな社会の教科書ならもう少し地理や世界史も好きになったろうに!手土産の日本のお菓子のこと、アボカドの裏側、タコスのハナシに野菜の味のハナシ。ほんとうに考えさせられる素敵な本でした!
Posted by ブクログ
ブルガリアといえばヨーグルト?
ロシア支配下の社会主義時代に効率よくエネルギーを摂取できると大量に流通
ソ連崩壊で需要が減るも、ヨーグルトは食卓に毎日おかずの中に使う。
ヨーグルト➕きゅうりでスープ
イスラエルのマックにはチーズバーガーがない
ユダヤ人が建国した国
ユダヤ教徒が74%
イスラム教のハラル
ユダヤ教のコーシャ
食べたら死ぬ可能性が高いものと食べたら食料供給全体が逼迫するものを排除する
蹄が分かれた反芻動物 牛、羊、山羊
ウロコとヒレのある魚 アジ、サバ、サケ
猛禽類などの鳥類以外
乳製品と肉を両方使ってはいけない
聖書「小山羊をその母の乳で煮てはならない」から?
インドのジャイナ教
食べるべきでない食べ物
肉、魚、卵およびそれらを含む食品
5つの感覚を有する生命体だから
においの強い野菜(にんにく、玉ねぎ)
気持ちを興奮させて攻撃的になるから。魂の平穏を妨げるから。
前日の残り物
そこから無数の微生物が発生しつつあるから
日没後の食事
不用意に小さい虫を殺してしまうかもしれないから。太陽に殺菌されないから
メキシコのアボカド
1キロを生産するのに必要な水の量
アボカド1981リットル(浴槽10杯分)
りんごバナナ822リットル
じゃがいもトマト287リットル
麻薬に代わる次の資金源Green Gold
Posted by ブクログ
各国の食事情から政治や歴史を読む発想が面白かった。メキシコのトルティーヤ(アメリカから飼育用トウモロコシが輸入され伝統的なトウモロコシ品種が減ってること)、ティラピア(世界のタンパク質不足を救う非常に優れた魚!)
Posted by ブクログ
『世界の食卓から社会「問題」が見える』
だった。
著者曰く「「おいしい/おいしくない」だけでない料理の味わい方を知ってほしい」「あなたの明日からの食が、「おいしい」を超えて世界への扉となることを祈っています」とのこと(おわりに より)
世界の社会「問題」といえど、切り口が食だからか、著者の力量か、とっつきやすく身近に感じる。
気づきに溢れるとはいえつらい問題が続く本著のラストの、「シリア難民がもたらした食文化」、社会を圧迫するシリア難民に対してヨルダンの人の「シリア人はおいしいものをもたらしてくれたから」という言葉は、あたたかく輝いて印象深い。自分もまたそう言えるような人になりたいし、逆境のなかでもそう言ってもらえるような人になりたい。
Posted by ブクログ
「この本は、『世界一おいしい社会科の教科書を作りたい』という想いで書き始めました」
本書がどんな本かを私から申し上げる前に、既に著者が適切な言葉で言い表してくださっている!!もうこれ以上、言うことがないくらい笑
「世界の台所探検家」を名乗る著者が、食材の調達や調理などを通し、世界の課題を炙り出していく…。ただあくまでも炙り出すのみで、何か解決策を提示するわけではない。
「どうすりゃえぇねん」とやるせなくなったりもしたが、時には食料問題解決へのヒントになり得る話もあって、希望を持って最後まで読んでみようという気になった。
「ブルガリアでは本当にヨーグルトが主食なのか」「フィンランドのパンケーキ作りから見る子供の教育」といったものから、化学農薬だったりパレスチナ人やシリア人の置かれている過酷な環境など、硬軟両様のトピックが取り上げられていた。
「勉強になるなー」と呑気に頷いたりショックを受けたりと、起伏の激しい読書であったが、メキシコ章(P115- 「アボカド人気が大地を渇かす」)の後味の悪さは格別だったな…。
アボカドは、紀元前から続く、メキシコ人にとっては大変ゆかりのある食料。
しかし、良いものから次々と先進国へ出荷され、手元に残るのはしょぼいサイズでしかも割高。生産側は生産側で、麻薬組織のターゲットにされているという…。家族を人質にとり、土地や売上に対して手数料を払わせる…というやり方で、アボカドは麻薬に代わる資金源になっているのだ。
私は飲食店でしかアボカドを食べないが、このまま食べるのを止める!というのは何か違う。とにかく「現状を知る」だけでは、腹の虫がおさまらんのよね…
着眼点がユニークなのも、本書の特徴だ。
昨今流行っている「代替肉」のルーツを探しにベトナムまで行ったエピソードでは、お寺の精進料理が紹介されている。ベトナムも仏教徒が多いというが、精進料理も本格的のようだ。人々に「不殺生」の精神を説くために、まずは肉に似せた食材で仏教の世界へと招き入れるのでは?という見解は、一理あるかも…。
また、昔の日本で、クセのある野菜が流通していたというのは、初耳で興味深い話だった。煮炊きに時間を要したらしく、その手間を省くために野菜の改良がなされてきたとの事。でも今の野菜の方が食べやすそうだし、私は今のままで良いかなー笑なんて。
昨今の物価高によって、適正価格で食料を買えることが無くなってきたが、わが国では依然「飽食の時代」が続いていると思う。それゆえに、こうした実情を目の当たりにすると、「どうすりゃえぇねん」と、簡単に怖気付いてしまう。
でも考えてみれば、「社会科の教科書」って、そんなものだよね。事実が書いてあるだけで、たいていの問題は現在進行形で解決されていない。一旦解決されていても、何らかの形で尾を引いている。
「どうすりゃえぇねん」と思ったのなら、同じグループの仲間たちと話し合い、知恵を出し合えば良い。自分たちの口に入り生命を維持してくれる物の問題であれば、尚更自分たちで率先せねば…!
Posted by ブクログ
世界の台所探検家である岡根谷美里さんが
世界各地の家庭を訪れ、滞在しながら一緒に料理し、そこから見える社会や暮らしをわかりやすく伝えてくれる
こんな社会の授業があったら、もっと熱心に勉強できたのにな〜
「料理は地理と歴史でできている」
とても興味深く読みました
Posted by ブクログ
食文化からその国の社会情勢、政治、環境、宗教などが見えてくる。とてもおもしろい視点の内容で楽しめた。各国の食べるものの違いが興味深かった。でも朝食はどの国もパンかシリアルが多いというところはなんか共感できておもしろかった。
Posted by ブクログ
めちゃくちゃ良かった。
普段の食事からつながるグローバルなつながり。
世界情勢を知れるし、比較文化としても勉強になる。
西アジアあたりのレモンやハーブが利いた食事をした後の
不思議な爽やかさ。
何だか自分自身もヤル気が出てくる。
感じがする。
Posted by ブクログ
友人がこの本を読んだ時の印象を語ってくれて、ぜひ読んでみたい、と手に取りました。
世界中で、戦争、紛争、内戦が起こっている今、状況はまた刻々と変わっていく、ということも知らしめてくれる本です。
食を通して知ることができる事実も多く、宗教のことも、環境問題も、そして、健康を維持するための食事という意味でも色々な学びがあり、考えて行動しなければいけないんだよな…と自覚させられます。
伝統料理ってなんなんだろう?食の安全ってどういうことだろう?品種改良ってどういうことなんだろう?と考えることはたくさんあるように思います。
Posted by ブクログ
著者の岡根谷実里さんは、世界各地を訪れ、滞在させてもらいながら一緒に料理をし、料理から見える社会や暮らしを伝える台所探検家である。
世界のどこかの家庭料理ひとつで、地形から気温から育つもの採れるもので料理は変わってくるということを目の当たりにする。
また、宗教的なものであったり、社会情勢、政治的にもそれぞれである。
まるで世界の歴史と家庭科を学んでいるような気になった。
とても興味深いと感じるものもある。
そして、知らなかった…不思議だ…ということもある。
勉強した感あり…だ。
〜以下は一部を抜粋したもの〜
ブルガリアではヨーグルトスープが普通にでてくる。
「タラトール」というらしい。
ブルガリアのヨーグルトは政治的に強化された人民食としての側面があるようだ。
イスラエルの食べ合わせについては謎である。
同じ料理に乳製品と肉を両方使ってはいけないという規定。
中国の上海は、野菜用洗浄剤があって、残留農薬除去のために使うらしいが、とにかく野菜をゴシゴシと洗っているようだ。
ボツワナではパニという大きな毛虫ようなものを捕獲して塩ゆでして食す。
モルドバでは自家製ワインを水のように飲む。
イスラム教においてもっとも大事な行事の一つが、ラマダンと呼ばれる断食月。
Posted by ブクログ
著者さんが書かれているように、社会科の教科書としても読める本です
食事や料理を通してその地域の特性、政治、歴史を知ることがこんなにもできるものなのかと思えます
また、紹介される料理はどれも素朴で食べたこともないけれどなんだか身近に感じられるものばかりです
こういう視点から社会を見つめると、興味、関心の範囲が広がると思います
何せ、食事は生きるために必ず必要なものですから
Posted by ブクログ
「世界一おいしい社会科の教科書」
世界各国に足を運び、詳しいデータをもとに社会事情を解説されている。
楽しく分かりやすく学べる。
ただ教科書であり、体験記ではない。
現地でのリアルな生活感や人との触れ合いの描写が少ない点、少しもったいなく感じた。