あらすじ
法哲学者が「夜の街をめぐる旅」の記録と記憶を綴るノンフィクション。マイケル・サンデル、ダイアン=ボレット等も援用しつつ、スナック、バーほか公共圏としての水商売の社会的意義を浮き彫りにする。「日々、何の変哲もない営業を続ける自営業者たちこそがデモクラシーの担い手である」(著者)。ウイルスと風説で汚された独立起業家・労働者の誇りを取り戻し、自由とコミュニティ再生への道を照らす一冊。 〈目次〉第1章:狙われた街・すすきの(北海道札幌市) 第2章:弘前、クラスター騒動の真実(青森県弘前市) 第3章:いわき、非英雄的起業家の奮闘(福島県いわき市) 第4章:夜の庭としての武蔵新城(神奈川県川崎市) 第5章:甲府という桃源郷(山梨県甲府市) 第6章:小倉で戦争を想う(福岡県北九州市) 第7章:雲伯、神々の国と鬼太郎のまち(鳥取県米子市・境港市、島根県松江市) 第8章:別府の盛り場を支える「ちはら三代」(大分県別府市) 第9章:浜松、「検証と反省」に思いを馳せて(静岡県浜松市) 第10章:十勝のスナックと地域のつながり(北海道新得町・帯広市) 第11章:「東京右半分」であふれる商売の熱量(東京都北区赤羽・荒川区西尾久) 第12章:小さなオデュッセウスの帰還(東京都渋谷区・中央区銀座) 終章:「夜の街」の憲法論
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Posted by ブクログ
コミュニティの一つのかたちとして、夜の街(スナック)に焦点を当てた本。筆者は法哲学者であり、難解な内容なのかと身構えたが、全然そんなことなく、非常に読みやすい本であった。
コロナでコテンパンにされても、立ち上がって頑張る人たちが数多くいること、感染症予防のため、夜の街を焦土にしてしまった諸々の規制について、それが正しい形だったのか、振り返る必要があると強く感じた。
Posted by ブクログ
大学で法哲学の教鞭を取る著者による全国各地のスナックを巡るエッセイ集。
著者をはじめ、様々な分野の研究者によってまとめられたスナックの多面的な論考、『日本の夜の公共圏 スナック研究序説』は大変素晴らしく、ロバート・パットナムが説く”社会関係資本/Social Capital”を生み出す日本特有の場としてスナックを位置付けていたのが記憶に新しい。
その出版から8年、その間のコロナ禍によって特に街場のスナックは合理的・科学的な裏付けもないままに感染の温床と名指しされ続けてきた。本書の最終章では、法哲学の研究者としての著者の面目躍如というべきか、この問題に関する論理的な追求がなされており、これはスナックなどの夜の街をこよなく愛する著者だから提示できる論理の強さがある。