あらすじ
殺しあいをしてきた人々は、どのように仲直りをするのか。闘いを通じて増殖され蓄積された憎しみ、悲しみ、怒り、憤りを当事者たちはどう処理するのか。和解を促すうえで、第三者のどのような手助けが効果的なのか。カンボジア、東ティモール、インドネシア、アフガニスタン、スリランカ、フィリピン、キプロス、ボスニアなど世界各地の紛争地で、現地の平和に貢献する活動や研究を行ってきた国際紛争研究者が、紛争の現場で見て、感じ、考えたことをもとに和解の物語を綴ってゆく。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
戦場を歩くとは死地に身を置くことだろうか。だが上杉勇司は「紛争地の歩き方」でそれを違う角度から描く。爆音や銃声の陰にあるのは家族を守り必死に生きる人々の姿だ。ニュースの数字では見えない日常の断片を拾い同じ時代に生きる隣人として記録する。平和な街に暮らす私たちは遠い出来事と切り離しがちだ。だが視線を向ければ戦火の向こうに自分と変わらぬ笑顔や涙がある。世界はつながっているのだ。
Posted by ブクログ
紛争は大体エリートの権力闘争がその恩恵を受けない庶民を巻き込んで起こる。でも、忘却で社会を安定させるカンボジアもあれば、悲惨な記憶を抑止力とするボスニアもあって、国民の和解は色々なのだ。それだけに本書においてミャンマーの置かれた状況の救いようのなさが際立つ…
Posted by ブクログ
世界各地の紛争地を訪れた著者が、紛争の原因と経緯、そして和解の「処方箋」について解説した本。
「和解」という言葉に対して、「当事者同士が仲直りし、ともに手を取り合って平和で安定した社会を築いていく」という抽象的かつ狭義的なイメージを勝手に抱いていたが、実際には様々な形があり、正義の追求、差別的・不平等な制度の撤廃や改革、法の支配の確立、経済的不満の解消(経済成長・戦後復興優先)などが当然ある一方で、棲み分けのような「和解」という言葉とは乖離したイメージのものも選択肢の一つとして含まれるというのが意外であった。
「和解」の目的は、安定した状態(和平)を保つこと。そのため、当事者が関係改善に消極的であったり、絶対に妥協をしない場合においては、むやみに共生・共存を進めるのではなく、適度な距離感を保つこと=現状維持もある意味での「和解」となる。当事者間の憎悪が解消されることが、将来の紛争の火種をなくすためには理想ではあるが、状況によっては、それが必ずしもベストな選択肢とは限らないということである。「処方箋」と比喩されているように、その時々の状況に応じて、最適なステップを踏むことが重要なのだと理解した。
また、どのようなアプローチにしても、当事者同士が積極的に取り組むことが真の和解には必要不可欠だが、「WHY(若者・変人・よそ者)」が新しい視点を与え、和解のキーとなるという話には納得した。人間関係と同じで、互いに落としどころを見つけ、周りの助けを借りながら、時間をかけて地道に関係修復していくのしかないのだと思う。