あらすじ
魔女として磔にされているタバサ。同じく処刑された母の「好きなものは好きって言っていいの」という言葉を胸に微笑みながら炎に包まれる(「魔女」)。〝マボロシの鳥〟を失い、芸ができなくなった魔人チカブーが二十年後、バーで出会った男に言われた言葉は……(「マボロシの鳥」)。厄介で、面倒で、ドタバタな世界への、祈りに満ちた小説集。
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Posted by ブクログ
爆笑問題の太田光氏による9つの短編を集めた、初めての小説集になります。よく小説の世界で短編がうまい人は作家として大成するといわれておりますが、本書の中にはその片鱗を見せるものでした。
この本も遅ればせながら読んでみました。しかし、太田光氏と僕はまったく読書の傾向が違うようで、よくテレビでは太田氏が影響を受けた作家が列記されておりますが。僕はそのほとんどを読んでいません。
でも、書かれている小説は全て短編小説なので、すんなりと読むことができました。よく小説の世界では短編を書ける作家はうまいといわれていますが、ものすごく将来性のあるデキだと思います。
特に好きだったのが『奇跡の雪』という短編で、知的障害を持つ女の子に爆弾をくくりつけて自爆テロをさせるというもので、よくこの内容の小説が発表できたもんだなと最初は思いました。
でも、遠く離れた世界では、こういうことが現実であるわけで、作者である太田氏はあの過酷な芸能の仕事をやりながら、こういうテーマを選んで一編の小説を書いたものだなと。正直舌を巻きました。
他にも落語調の小説があったり、宮沢賢治へのオマージュを連想させるものなど、なかなか実験的な作風で、本人が漫才か執筆かで迷うときが来るのかもしれませんが、個人的にはもう少し彼の作品の続きを見てみたいなと思っています。
※追記
本書は2023年4月6日、幻冬舎より『マボロシの鳥 (幻冬舎文庫 は 7-17)』として再文庫化されました。