【感想・ネタバレ】旅するモヤモヤ相談室のレビュー

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

世界各地でフィールドワークをしてきた京大の先生方に、現地での体験やそこから得られた考え方などを語ってもらう形式。
憑依とか、妖術とかの、超常現象と思えるような事柄についても言語化されているのはさすがです。
私は、特に後半に、共感できたり参考にさせてもらえたりする部分が多くありました。
そして、日本人の中にも幅広い多様性があるけれど、それも世界から見たら狭い範囲のものかもしれない、ということ。だから、そこに縛られてしまうのは勿体ないことなんだと思った。
また、日本・世界の現状は、時代の流れの中で形づくられてきたものだから、歴史的背景を知ることは大事。他の地域や国の、現状や歴史的背景に参考にできる部分が大いにあって、大切に残していったり変えていったりできるんだ、と思った。

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2024年02月12日

Posted by ブクログ

普段、私たちが思うような悩みに
異文化にて学んできた方々の人の視点を用いて
考えていく対談型のお悩み相談本。


処方箋という名の本の紹介もあり
その文献もなかなか興味深い。


感情に訴えていく部分というような
情緒的なやり取りというよりは
さまざまな経験や知見からの意見という感じで
なるほどなぁと頷けるところが多い。


内容としては対談者によって
内容の振れ幅やベースの知識の幅がある印象。

それぞれが完結しているので
全部通して読むのも良いが、
気になるところを摘み読んでも面白い。


人間関係や社会的に悩んでいる人、
という精神崩壊ギリギリの人のよりは
なんだか最近、同じような本ばかり読んでる
気がして疲れてるような人にオススメ。

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2023年05月22日

Posted by ブクログ

医学生の著者が日本人の抱える日々のモヤモヤは海外の馴染みのない文化の中にこそ解決のヒントがあるのではないかと考え、日本各地にいる文化人類学者に人生のヒントを聞きに行く話。

文化人類学者は生業が現地人と同じように生活し、その文化にどっぷりつかるフィールドワークが主であるために、一般人が短期旅行で経験するのとは全く異なる経験をしている。

その中で得る気付きや発見は、「先進国」であり「資本主義経済」で生きる日本の常識からは思いつかない有益な物であったりする。
確かに日本は経済的には豊かな国に分類されるが、果たしてそれだけが追い求める姿であるのか?はこういう本を読んで自問してみるテーマだと思う。

海外の場所は
タンザニア、ブータン、インド、ガーナ、エジプト、キリバス、スリランカ、ドイツ、イタリア、そして日本

特に記憶に残ったのはタンザニアにおけるお互いが扶養し合う考え方。日本には中々見られない寛容な考え方である。またキリバスの極限地帯での生活も心に残った。

正直期待以上に面白く気づきの多い良い本でした。

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2024年03月29日

Posted by ブクログ

京大医学部の筆者が、京大を中心とした世界各地を調査する研究者に直接会って、現代日本の処方箋を聞くというコンセプトで作られた本。
一年くらいかけて、1人ずつゆっくりと読んだ。(というか、放置してたまに読んだという感じ)
医学と文化人類学は親和性があるのか、文化人類学の教授が医学部に所属する国公立大学もある。総合診療科は特にケアの見地から文化への関心が高く、大学を跨いでの文化人類学の本を読む読書会も開催されているところもある。

最後に登場するのはゴリラの山際先生。動物から学ぶ共生という観点からも、シェアとコモンズという発想が生まれるようだ。
斎藤幸平の本が広く読まれるのは、研究のどの観点からも斎藤幸平の提言する未来予想に流れ着くからなのだなと感じた。


一番印象に残ったのは、藤原辰史さんの日本で基本的人権が抑圧される社会になってしまった理由
一つは、第二次世界大戦時に築き上げられた「総力戦」の空気を熱血サラリーマンたちが会社への忠義ときて戦後も引きずってしまったこと
二つ目は、戦後すぐGHQが日本を占領きてしまった後冷戦となり、民主主義と非民主主義が混在してしまったこと。
三つ目は、やはりネオリベラリズムの台頭。

それから、鳥取にある「野の花診療所」というホスピスの取り組みも覚えておきたい。診療所なのに充実した図書室や、一人で自分を見つめられる瞑想室があり、キッチンでは美味しいお弁当を作っている。読書や食を通して人が尊厳を保つ場所が次々とできるといいなと思う。

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2024年03月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

【他の世界を知ること】

人に話を聞くことが好きと気付いた京大の医学生が、移動や交流が制限されるコロナ期間の機会に、世界各地でフィールドワークを実施してきた15人の教授にインタビューをし、まとめたもの。

ここ、以外の世界を知っていること、具体的に、そしてそのぶっとび度、は強いな、とあらためて思った。

各先生からのおすすめの文献も掲載されていたので、いろんな世界観を深める旅が続きそう。

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2024年04月06日

Posted by ブクログ

エボラが人間の行動のせい(森林伐採、乱獲)で広まったのではないか、という説が出てきて驚いた。

もはや感想ではないが、全体的にに言葉が難しく右から左に流れてしまう感じだった、、

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2023年05月24日

Posted by ブクログ

文化人類学の知見を応用して、人々の悩みに応えていく本。なかなか面白かった。

p.10 ポイントは「ついで」に「投擲型のやりとり」をすると言うことです。タンザニアでは付き合いの大部分が、無理のない「ついで」の範囲で回っています。彼らの広いネットワークに困り事を投げると、その時に何かのついでに手伝える人が1人ぐらいは現れる。そこで大事なのは、仲間の人数ではなくて、仲間のバラエティー。政治関係者や大企業の社長といった偉い人から、泥棒や種子に至るまで(笑)。詐欺に合いそうになった時、1番役立つ情報を教えてくれるのは佐口だし、ビジネスを立ち上げるときには、どこかの企業の社長の話が役立つし、でも人生どん底で追い詰められて、何か悪い事に手を染めてしまって「もうあかん、自首するしかない」ってときには、少しでもましな囚人ライフを考えるしかない。そうなったら、元主人フレンズの話が1番役立つじゃないですか。自分の将来がどうなるかわからないからこそ、多くの種類の人間に贈与したり、支援してつながりを持っておく。そうすると、私の人生は1つしかないけれど、私がまいた種は、いろいろな人の本でいろいろな形で花咲くわけです。だから、タンザニア人は、貯金はなくても、人間関係さえあれば生きていけるとよく語ります。

一方で、日本のコミニケーションは「私が誰かを助けたら、その人が私を助けてくれる」と言う「キャッチボール型」なんだと思います。それは確かにつよい絆は築けるかもしれないけれど、誰かが期待に答えられないと、「なんであなたはやらないの?私だけ頑張って、損してるよね?」と言う不安が蔓延する。

p.13 例えば、私の現地の友達は、ある時「お金持ちの家の娘に恋をしてしまった」と打ち明けてきた。「これはみんなで一肌脱ぐぜ!」と、デート前日に、靴屋の友達が靴を貸して、服屋の友達が一張羅犯して、時計屋や酒屋の友達が時計やカバンを貸して、タクシー運転手の友達がタクシーを貸して、私がお小遣いをあげて、彼は一夜にしてハイスペック男になったの。彼は、翌日、彼女にアプローチして、付き合って、晴れて、結婚までしたんだけど、ずいぶん後になってから奥さんに話してみると、もう最初のデートの途中で、借り物だらけの男だと言うことには気づいていたらしくて。それでも結婚したのは、「困ったときに、いろいろなタイプの人から必要なものを一瞬で揃えられるのだから、それは持っているのと同じ。それに助けてくれる人がたくさんいると言う事は、彼はみんなに愛されている証拠だと思ったからだそうです。分人と言うのは、私のスペックに加えて、もっと有能な外付けハードディスクがたくさんある状態なんですね。そう考えて生きれば、私は1人だけれど、その私は自分が誰かにあげた贈り物やしてあげた本とともに、大きな世界のいろいろな人のもとに散らばっているわけです。そう考えるとね、すごく気楽なんです。
p.74 1995年と言うのは、ターニングポイントで、世界的にみれば、冷戦終結直後で「正しさを求めて人々が戦い合う」時代が終わったとともに、日本で言うと生産年齢人口がピークを越えた頃。経済面でも1995年が世界のGDPに占める日本の割合がピークで、そこからどんどん落ちていったと言うタイミングなので、「これからどうしたら良いのだろう」と価値観が非常に揺らぎ始めた年なんです。

p.75 日本国内での災害復興や防災、減災の手法で、世界に行かせるものはあるか?
「経済と人々の暮らしを両立させながら、豊かになる」ための方法を、自らの失敗談をもとに酒井に提案していくと言う役割です。日本は近代化の過程でいろいろな失敗をしてきました。公害や原発事故も、経済を最優先にして、人の命や健康犠牲にしてきた結果です。この経験を振り返り、対策を考えて後世に伝えたり、海外で地震や津波が起きたときには、長期的な視点での制作の作り方を制限したり、あるいは被災地の人たちの言葉を行政に届ける方法を提案したりする使命が、日本にはあるのではないでしょうか。

とは言え、日本もまだまだ舵取りの途中です。日本の復興は「原型復旧主義」と言って、会談するのではなく、元の状態に戻すんです。改善してしまうと、もともとの政策に誤りがあったと認めることになり、責任問題にも発展する。それが嫌だから、地域をうまく作り直せないんですよね。今の日本には、右肩上がりの時代に作られた価値観や制度によって起きている問題がたくさんあるので、原型普及を目指すだけでなく、いかにより良い形に改善しつつ、復旧を進めていくのか、考える必要があると思います。

p.135 色の文脈において、健康と言う言葉をもっと注意して扱うべきだと思います。ナチスは健康主義に取り付かれていて、例えば、健全な人種であるアーリア人が胃がんで死んでしまうのはだめだからと、人々に対して菜食、魚食、ハーブティー等を進めました。歴史のそこだけ切り取ると良いことに聞こえますが、完全に優生思想ですよね。

最近はダイエットブームですが、それは社会的にモテる、細身の女性と言うイメージを消費しているに過ぎません。本来は美しさのイメージは多様であるはずなのに、細身で画一化されているのが問題だと思います。また、野菜をミキサーですり潰したような健康とされているドロドロレシピも、胃の負担を軽くしよう、生の領域をカットしてより文化的な生活を送ろう、食事にかかる時間を短くしよう、と言う発想から生み出されたものですが、それは19世紀のアメリカ家政学が犯した間違いだと思います。噛まずに飲むだけだったら、ガソリンと同じで、ただの「補給」ですよね。…食事の楽しみと言うのは、人間にとってめんどくさいと思うようなことだと思うんです。時間がかかっている。食事から面倒を排除しようと言う考えによって、食の楽しみや噛みごたえを感じる楽しみがなくなり、食事時間が短くなり、人としゃべらなくなると言う悪循環です。食べ物が持つゴツゴツ感やざらざら感、それが人間に引っかかるからこそ、食べ物なのに。噛む事は、人間が人間であることの1つの砦です。

p.142 生きる上で、大事なのは、「選択肢が多いこと」よりも「限られたものの、中に無限の採用近くできること」ではないか、と言うことです。料理や生活もシンプルな方が、微細なさえによる無限の奥行きを感じることができ、生きている時間も空いてくるのではないかと言う気がします。

p.159 イギリスに行って、ロンドンに行かない人、フランスに行ってパリに行かない人、日本に来て、東京に行かない人はまずいないけれど、イタリアに行ってローマに行かない人、ドイツに行ってベルリンに行かない人はむしろ多いと言うものです。前者は中央集権、後者は文献です。実は多くの歴史の中で捉えると、これは資本主義の仏教と言う話ともつながっていて、国家としての集権的な=が強かった。イギリスやフランスは、資本主義を先駆け、強力な国家的統一の中での海外進出を進め、植民地支配もしてきました。一方で、そのような集権的な統合が、もともと弱かったのが、イタリアやドイツなどといった国で、日本はもともとこれらの国々と同様に、比較的分権的で、地域の多様性も豊かな国だったと思います。

けれど、日本は幕末に、いわゆる黒船ショックを経験し、このままだと欧米列強に飲み込まれてしまうと言う危機感から、必死で追いつこうと突貫工事的に資本主義や工業化を推進しました。その結果、皮肉にも他国にも増して、集権性が強くなってしまった。資本主義の国でも、ヨーロッパの多くの国々のように、発展が緩やかに進めば、地方都市の豊かさや多様性を生かした地方分権的なあり方が可能になります。

p.180 私が腕時計をしていたら「その時はいいね。俺にくれないか?」と言ってきて、こっちとしては「なんでお前にはなきゃならないんだよ」と思いながら、でもその態度は、彼らにとっての関係づくりなんですよ。日本人は、なるべく他者と関わらないように、時間を守って、相手のことを尊重したきていますが、本当にそれでいいのだろうかと感じますね。

社交と言うのは、自分の時間を相手に預けて「私たちの時間と言うものを一緒に作りましょう」と言う提案なんです。逆に、その構がなければ、自分の時間と間の時間をただ接触させるだけになってしまいます。若い世代の人々は、皆、自分の時間を生きていて、他者の時間を生きていない。だから、無駄話を長い時間すると「損したな」と感じてしまうことが多いんです。それは時間を相手に預けているのではなくて、自分のために自分で計算した時間を生きているからなのです。

最近はみんなどういう事情でどういう目的があって、どこに行くと言う細かいスケジュールを立てて時間を計算して、その通りに動いていますよね。でも、昔は、みんなスケジュールを立てるのではなくに気をつけていたんです。未来を計画するのではなく、過去にやったことを振り返っていました。

〈本〉
・『場所からたどるアメリカと奴隷制の歴史』
・『戦争は女性の顔をしていない』
・『からゆきさん』
・『パンと野いちご』
・『タテ社会の人間社会』
・『人口減少社会のデザイン』

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2023年05月15日

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