あらすじ
キープレーヤーはインドだ
“ポストGゼロ”“ポスト米中対立”の「新グレートゲーム」のキープレーヤーとなるのはインド――。
2023年中に14億人を突破し人口世界第1位に躍り出るとされ、軍事費では現在世界第3位、きたる2047年に建国100年を迎えるインド。「米中に次ぐ第三の超大国」は、伝統的非同盟を堅持しつつ米中に対して自ら独立した“局”となる戦略的自立で存在感を増している。
ウクライナ侵攻をめぐる国連安保理でのロシア非難決議案採決を棄権し衝撃を与えたインド。そして各国による経済制裁のさなかにもロシアから石油を爆買いし、普通なら風当たりが強くなりそうなものだが、実際に起きたのは独自の立場を貫くインドへの主要国トップによる“モディ詣で”だった。
貿易協定、サプライチェーン、エネルギー、半導体、インフラ整備、感染症対策……。あらゆる分野で激しさを増す米中を軸とする覇権争いにおいて、中国主導のAIIB(アジア・インフラ投資銀行)にも非加盟で中国と距離を置きつつ、安全保障上はクアッド(日米豪印戦略対話)の枠組みにある日米とも是々非々の独自路線を採る。
インドと中国、インドとロシア、そしてインドと日米――。今まさに東半球を舞台に激突する「一帯一路」vs.「自由で開かれたインド太平洋」の2大経済圏構想。この“新たなグレート・ゲーム”の帰趨が21世紀後半のパラダイムを規定する。
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Posted by ブクログ
第三の大国 インドの思考 激突する「一帯一路」と「インド太平洋」
著:笠井 亮平
文春新書 1401
不思議な国、インドを紹介する書です。読んで、すっきりしました。
宿題
なぜ、インドはロシアのウクライナ侵攻に対して、棄権したのか
そして、その後、インドは、ロシアの液化天然ガスを積極的に購入しているのか
事実
インドの最大の仮想敵国は、隣国パキスタンだ。パキスタンが核武装したので、インドも核武装した
回答
インドがロシアと敵対すると、パキスタンがインドに攻め込んできたとき、ロシアの協力が得られなくなるから
キッシンジャーが対中電撃和平に及んだあと、世界のパワーバランスが崩れた
インドは、パキスタン=米国、中国=米国 にて、米国をバックとしたパキスタンに封じ込められてしまう
そのために、ソ連を巻き込んで、地政学的に、パキスタンと対峙した。
以来、インド=ロシアは、事実上の軍事同盟を締結しているのである
各国事情
インド
全方位外交:特定の国とだけ仲良くはしないという外交原則
南アジアの大国から、世界五位の超大国へ
伝統的に大陸国家だったが、近年インド洋におけるシーパワーを意識している
フレネミー:エネミー(敵国)でもあり、フレンド(友好国)でもある
インドは単純な二分論をとってはいない
太平洋=インド洋、クアッド、印米日豪の4カ国で、航行の安全保障を目指す
対中国
チベット問題、中印国境策定、いまだにちゃんとした国境策定は行われていない
敵でも味方でもある、一帯一路にインドは対抗しているが、最大の貿易国の1つでもある
対して、インドは、革新的利益、中央アジア、アフガニスタン、イランに伸びる交通路は中国とぶつかっている
対ロシア
パキスタンに対する、軍事的抑止、加えて、インドのエネルギー政策の一端を担う
対アメリカ
インドの核を容認、そのかわりに、巨大インド市場に、アメリカも参入しようとしている
インドの協力なしに、インド洋でのプレゼンスは得られない
対日本
アクト・イースト政策というアジア重視外交の1つ
日本からの2つの海という外交・経済原則に賛同している
印度北東部の経済的効果、インパール作戦の舞台
戦略的パートナーシップ
目次
まえがき
序章 ウクライナ侵攻でインドが与えた衝撃
第1章 複雑な隣人 インドと中国
第2章 増殖する「一帯一路」―中国のユーラシア戦略
第3章 「自由で開かれたインド太平洋」をめぐる日米印の合従連衡
第4章 南アジアでしのぎを削るインドと中国
第5章 海洋、ワクチン開発、そして半導体―日米豪印の対抗策
第6章 ロシアをめぐる駆け引き―接近するインド、反発する米欧、静かに動く中国
あとがき インドと中国が争う新時代の国際秩序形成
主要参考文献
ISBN:9784166614011
出版社:文藝春秋
判型:新書
ページ数:272ページ
定価:1000円(本体)
2023年03月20日第1刷発行
Posted by ブクログ
まあ、ぶっちゃけると「インドはインドの都合で動く」って事なんだが、その「インドの都合」についてもう少し丁寧に解説してくれている。
ただ
・「第三の大国」って、もうロシアは大国扱いじゃないのねw
・インドと中国が争う時間はとても短いと思うよ(中国に残された時間はごくわずかしかない。これから発展していくインドとはあっという間にすれ違うだろう
・インドの都合と「こちら側(日米欧)」の都合をうまくすりあわせられるとよいのだが。
Posted by ブクログ
インド、中国、日米の現在の軍事・政治・経済・社会などの構造を中心的に解説したもの。
インドの実態はほとんど日本人は知らない。しかし、世界最大の人口と経済の急成長がプレゼンスを強めている。どの国とも強く結びつかないという外交的原則も日本ではしられていない。
字の読めない人が25%近く現在でも居るとか貧富の格差が大きいなど多数の問題も存在する。
中国、インドという巨大な国が急速に経済や軍事そして外交力を高めている。その内容を深く知らねばならない。
Posted by ブクログ
中国の一帯一路が目指すところと思惑、対するインドの南アジアから国際社会、グローバルサウスの代弁者として存在感を増そうと画策するインドの動きと本音を解説。そこに日米やロシアとの関係やそれぞれの思惑も絡めて、インドの複雑かつ戦略的な立ち位置や行動原理が見えてくる。独立75周年からの25年をアムリト・カールとして100周年に向けたロードマップを示していること、2023年がG20議長国であったことも含めていかに重要であったかがわかった。
Posted by ブクログ
「インドの思考」と題しているが、中国(含む一帯一路)に関する内容も多く、もっとインドのことについて理解することが出来ると思っていた。一方で、中国との関係性や日米との関わり方などの独自ポジションを築いていることを理解できた。
Posted by ブクログ
20240210-0217 本書は序章で2022年2月25日にのロシアによるウクライナ侵攻に対して国連安保理がロシア非難決議をインドが棄権したという事実について、なぜインドが棄権したのか、ということを解き明かし終章でもロシアを巡る駆け引きについて見解を述べている。「インドの~」と言いながら半分くらいは中国の一帯一路構想についての解説とそれに対する日米欧の反応、そしてインド、という感じ。とはいえインドについての基本的現状は一通りはわかると思う。文章が読みやすいのでサクサク読めた。本書を足掛かりにインドについての解説本を読むとよいかと思う。
Posted by ブクログ
インドと中国の外交を主軸に書かれた本。
1000円するが内容は盛り沢山。
ただ、「だから何?」「それによってどのような未来をあなたは予想してるの?」と言いたくなるような事柄の列挙が気になる。
あと、コラム1,2,4,6は参考になった。
Posted by ブクログ
今現在インドとビジネスをやっているが、一緒に良いものを作り上げようという熱意が感じられず、ひたすら良い条件を引き出そうと取引してくるインドとは、正直付き合わないほうがよいと思う。
実務で毎日ため息ばかりついているインドとのプロジェクトに関わっている身からすると、インドと仲良くするメリットを感じられない。
それもそのはず。
インドは外交上も明確に仲間を作らず、その時々に応じて最も自国にとって利益が大きいほうを選んできた。
本書の結論では、中国の台頭を抑えるためにはインドが重要な国になると予想している。
それはそうなんだろうけど、インドと仲良しになるのは別の国に任せられないかね。
ぶっちゃけ、インド人より中国人のほうが話が分かると思う。
Posted by ブクログ
丸善にて目に止まり、購入。
日本やアメリカだけでなく、中国ロシアといった国との関係も採り上げており、インドという国を外交面から知ることのできる一冊と感じた。
人口で中国を上回り、エネルギーに溢れる国であるインドは、他の大国も見逃すことのできない大きな存在と思うので、今後も書籍やニュースなどで情報を得ていきたいと思う。