あらすじ
企業にはいくつもの壁がある。
巨大企業・日立の壁はとりわけ高い。
【製造業史上最大の赤字からV字回復を果たした日立。しかし、そこからさらなる闘いが始まった――。】
2009年3月期に7873億円という製造業史上最大の赤字(当時)を出した日立。幸い、未曾有の危機に際して経営を引き継いだ川村隆・中西宏明両氏の大ナタによって立ち直り、大きな「壁」を超えた。
世間からは「奇跡のV字回復」と喝采を浴びたが、実は改革は道半ばにあった。不測の事態がふたたび起これば、二番底を打つ状況になりかねなかったのである。中西氏の後を継いで社長となった筆者は、相次いで改革に打って出る。それは、日立という巨大企業の中にいくつも立ちはだかっていた壁を叩き壊す作業であった。
言い訳文化、事なかれ主義、縦割り組織、もたれ合い、先送り体質、忖度……本書は、日立最高幹部が現場力で「大企業病」に立ち向かい、世界に打って出た経営改革の実録である。
組織の壁、事業の壁、歴史や伝統の壁、メンツの壁……「会社の壁」を破るのは、これを読んだあなただ!
感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
日立という会社、東原氏のことの経営観を知る上では大変面白い読み物だった。特に、自身が手掛けた鉄道管理システムのATOSが基になったご自身の経営観は非常にわかりやすいものだった。
・赤字は悪というマインドがないのは危険。稼がないとダメ。利益が出なければ、社会に貢献するための事業を展開するための次の投資ができない
・この会社とこの会社を一緒にすればシナジーがあるという理論だけではグループ会社の中で反発が起こり、合理的な判断が難しくなるケースを見てきた。社員が望んで一緒になると思えるかどうか。一緒になったらもっと大きいことができるなという自覚を持ってもらえるか
・経営の考えにはATOSと同じように均質性、制御性、協調性が備わっている。
均質性:企業理念、ブランド、コーポレート部門が該当。日立の全社員と各事業は企業理念を共有し、ブランドを守る。
制御性:各地域代表、国内の各BUに権限と責任を持たせ、本社の意思決定を待たずに独自の判断で自律して事業を遂行できる体制。
協調性:各地域のトラブルが他地域のビジネスに影響を及ぼさない。各部門が互いに自律しながらも、経営戦略や経営資源を共有し協力し合うこと。
Posted by ブクログ
多額の赤字を経験し、経営危機をどのように乗り越えてきたのか、そしてこれからの日立がどのような分野に注力し、どのような企業をめざしていくのかを東原氏(日立の取締役会長)の視点で書かれた本。
日立=日本を代表する日経企業であり、日本での売上がほとんどだというイメージがあった。しかし、実は海外での売上の方が多いグローバルカンパニーであるということを知って驚いた。
本書を読んでいて、日立はこれからも世界をフィールドに、世界と戦っていく企業だということを確信した。
よく「日本の経済は衰退した。日本の将来が不安だ。日本はもう終わりだ。」という声を耳にする。しかし、だからこそ私は日本の企業に頑張ってほしいと思ってしまいます。
日立がめざす、『いつか「世界の日立」になる』ことを私は切に願っています。