【感想・ネタバレ】日本国憲法とは何かのレビュー

あらすじ

占領時代の世界観にもとづいてつくられた日本国憲法。それは我が国の憲法として、もはや限界を迎えている。本書は、条文の背後にある政治哲学を捉え直し、そこに秘められた意図を暴く。GHQの起草者たちを魅了したスターリン憲法、昭和21年に結ばれた社会契約、そして世界連邦構想の下で盛り込まれた第九条……。制定後、半世紀以上が経った今、新しい事態には非現実的な解釈で対応せず、真正面から規定を改めるべきである。例えば、現在の日本の平和は、アメリカの強大な軍事力と自衛隊を前提として成り立っている。それを無視して「護憲」を唱えても「憲法を護って国滅ぶ」という事態を招く。有事におけるルールがないことは、逆にその際にコントロールできない危険性がある。その他、教育、家族、人権など、諸問題において真に論議すべきものとは何か。保守主義を堅持する若手論客が、日本国憲法に流れる思想の系譜を解き明かし、その本質を浮き彫りにする。

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Posted by ブクログ

保守派の論客として知られる著者が、歴史的および思想史的な観点から日本国憲法の中身とその問題点を解説した本です。

著者は、「憲法」という言葉には「本来的意味」と「近代的意味」の二つがあると述べます。本来的意味の憲法とは、その国の組織や有様およびその政治的伝統や文化を表わしたものです。他方近代的意味の憲法とは、社会契約説に基づいて、国家は国民の権利を守るために必要とされ設立されたという考え方を表わした憲法を意味しています。しかし著者は、敗戦によってアメリカから日本に押し付けられた日本国憲法には、本来的意味、つまり日本の政治的伝統や文化との連続性と、それに基づく公共性の発想が欠けていると指摘します。

公共性が政治的伝統や文化に根ざしているという考え方には説得力を感じました。ただ、そうした公共性を、日本国憲法に謳われているような普遍的原理へと昇華することができるのは、どのような理由によるのかということが、本書を読んだ限りではよく理解できませんでした。著者は「民主主義」や「人権」といった言葉が日本の伝統のうちには存在していないことを認めながらも、それに相当するような精神的伝統が日本にあると言い、「土着の伝統に普遍的原理を見出す努力」の必要性を語っています。こうした議論から憶測すると、土着の慣習から普遍的原理へと高まっていく内在的な力が伝統のうちにそなわっていると考えているのではないかと思われるのですが、そのような仕方で「普遍」的な原理へのコミットメントが生まれるとは思えません。

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2015年01月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

[ 内容 ]
占領時代の世界観にもとづいてつくられた日本国憲法。
それは我が国の憲法として、もはや限界を迎えている。
本書は、条文の背後にある政治哲学を捉え直し、そこに秘められた意図を暴く。
GHQの起草者たちを魅了したスターリン憲法、昭和二十一年に結ばれた社会契約、そして世界連邦構想の下で盛り込まれた第九条…。
新しい事態に非現実的な解釈で対応せず、真正面から規定を改めるべきである。
保守主義を堅持する若手論客が、日本国憲法に流れる思想の系譜を解き明かし、その本質を浮き彫りにする。

[ 目次 ]
第1章 憲法とは何か
第2章 日本国憲法の功罪
第3章 日本国憲法の系譜
第4章 イギリス立憲君主制とコモンロー―ロックの「誤算」
第5章 独立宣言と合衆国憲法―伝統の「断絶」から「継承」へ
第6章 フランス革命と人権宣言―ペインとルソーの「社会契約」
第7章 明治憲法にみる日本の国柄
第8章 マッカーサー草案と日本国憲法
第9章 諸問題に対する考え方
第10章 改憲すべきはどこか

[ POP ]


[ おすすめ度 ]

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[ 関連図書 ]


[ 参考となる書評 ]

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2011年04月21日

Posted by ブクログ

改憲の立場から著者は日本国憲法を解き明かす。全体的に、現憲法に批判的な印象。
民主主義的憲法ではあるが、その内容には、社会主義的な内容も盛り込まれており、これは、当時、日本国憲法を作った人たちが社会主義にシンパシーを感じるニューディール左派と呼ばれる人々だったこともあり、スターリン憲法の内容がそのまま持ち込まれている。「勤労の義務」、とは、もともと「働かざるもの食うべからず」という社会主義的イデオロギーであり、資本主義、自由主義のもとでは、本来働かなくても、私有財産により不労所得生活も認められるはずであり、そこには、日本社会党などの、民主主義であっても社会主義への移行が可能である、といった狙いが見受けられる。てな感じで。
憲法って非常に抽象的であって、いろんな解釈ができるんだなあってことを実感した。

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2009年10月04日

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