あらすじ
江戸時代の豊かさは、村にこそ在り。
本を行商して歩く私が見たものは、本を愛し、知識を欲し、人生を謳歌する人々だった。
柴田錬三郎賞&中央公論文芸賞受賞の著者、最新刊!
本屋の私が行商に出向いたのは、孫ほどの娘を後添えに迎えた名主宅。披露した画譜が無くなり、彼女が盗んだとしか思えないのだが…。
目次
本売る日々
鬼に喰われた女(ひと)
初めての開板
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
淡々としているのにミステリー要素もあり、先が気になる。そしてどの話も読んで良かったと思う結末。時代小説に慣れていなくても、作中で挙げられる書物の事を何も知らなくても引き込まれる。
Posted by ブクログ
は〜、すごい。着地点もお見事としか言いようがない。
褒める点しか無い一冊。
「底惚れ」がなんてったってすごかったから、そりゃ期待はして手に取ったけれど想像を遥か遙か超えて圧倒的に面白い。
小説を読むのって、面白いんだよね、理屈じゃないんだよね、と純粋に感動させてもらえて感謝の念さえ浮かぶほど。
「これくらいの辻褄合わせがある方が読者としては気持ちよいもんね〜」なんて小賢しい感想を持つ暇もないほど。
あっひとつ重箱の隅をつつくと改行が多いよね、もっとぎっちりみっちり詰めてボリュームアップしてほしい〜!!
今年は青山文平さんを読みまくる年になりそうだな。
Posted by ブクログ
本当に凄い本だった。私が書店員だったら本屋大賞にこの本を投票したい。
時代ものは苦手意識があったけれど、本を売る話が3遍で非常に読みやすかったし書物がいかに重要であったかも書かれていて共感できるところも多かった。
何より「初めての開板」のラストは圧巻。
本好きにはたまらない時代小説だと思う。
Posted by ブクログ
先般電子書籍に関する本を読んでいたので、江戸時代の本屋の話を読んでみた。時代は文政年間、本が好きで本屋になった男が主人公。三つの中編からなる。
「本売る日々」は、71歳の名主と後妻に迎えた女郎上がりの17歳の娘との関係を描いている。
「鬼に喰われた女」は、和歌に関係した男女の関係を八百比丘尼伝説に絡めて描いている。この話が一番気に入った。
「初めての開版」は、医学・医術の普及と進歩に関して開明的な医師の話である。ラストが清々しい。
Posted by ブクログ
読み始めは、あまり興味を感じない内容でしたが、読み進めていくうちに、段々と物語の中に引き込まれていきました。本の装丁も凄く素敵で、またこの作者の本を読んでみたくなりました。
Posted by ブクログ
新刊案内でタイトルとあらすじ読んで読みたくなった『本売る日々』(青山文平)。
本の行商人という『モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語 』(内田洋子)に似たようなものを感じたからかもしれない。
今でこそいろんな書物があり、インフラが整えられてそれらをすぐに手に入れる手段がある。
そしてネット世界が広がり、あらゆる情報が、いろんな人のもとへと届いていく。
しかし昔はそうはいかなかった。
情報は人が数日かけて運び、常に時間がかかるものだった。
そんな世界で主人公が「この人にはこの本を届けたい」という強い気持ちを持って行動した経緯及び結果を読んでて感嘆のため息の連続でした。
本を知る事はすなわち人を知る事、とでもいうような事が書いてあったからかな。
その分野について多岐にわたって話が展開されるので、ホント飽きる事がなかった。
こんな本は久々です。
物語の初めの方で昔の言葉と風習が書かれ、ちゃんとその中身を知らなければ読みづらい事がわかった時は積読にしかけましたが、最後まで読めて良かった。
そして、この流れの中で【狼】や【飢えによる生活苦で起こった間引き】を読んだ時は、『ニホンオオカミの最後 狼酒・狼狩り・狼祭りの発見』(遠藤公男)や『飢えと食の日本史』(菊池勇夫)が浮かんで楽しかったな。
このように過去に読んだ本と組み合わさる瞬間がここ最近チョイチョイ起こるようになってきたので、
ニマニマしてます。
Posted by ブクログ
本の行商人が出会う市井の教養人たち。江戸時代の田舎風景を伝える味わい深い逸品、連作集。
本を通じた人と人の関わり。真の教養とであったり人生の味わいについて教えてくれる小説。
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江戸時代、戦なき泰平の世の中になってしたっぱ侍は貧乏になり、豪農が富を増やしていた。豪農に個人的に良いイメージは正直無かったけど、この本で少しだけ印象は変わった。彼らこそが国を豊かにしていたんだと。その一つに本を沢山買っていること、その為に本屋の行商が居ること。
その本屋を通して江戸時代の豊かな暮らしぶりが垣間見える素敵な話でした。少し怪談のような話、医学の進歩に関する話とか一概に本と豪農の話だけでないのが凄く良かった。
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人々の温かい気持ちが書物を通じて溢れて出ている。当時の人々にとって、本がいかに貴重なものであったか、手に側、世に出す側、双方の本に対する思い入れも伝わってきて、時代小説に苦手意識のある私でも興味深く楽しく読めた。
三ついずれも、後半にかけてのスピード感が素晴らしく一気に読んでしまう。著者の他の作品も読んでみたくなった。
Posted by ブクログ
恥ずかしながら初読みの作家さんです、
今ほど本が潤沢でない時代の売り手、作り手、読み手それぞれの熱量に圧倒されました。
序盤の伏線がラスト五行で回収。お見事。
私も医療関係の末席辺りでウロウロする者です。淇一先生の医の心得に背筋が伸びました。精進いたします。
Posted by ブクログ
最高ー!
青山文平さんの作品は『つまをめとらば』を読んだことがあったけれど、相変わらず人の温もりが伝わってきて素晴らしい。時代小説は少し苦手だけど、良すぎて読める。
主人公の、本が好きなんだなぁという感じと、少しスピリチュアルな感覚があって、共感する。
話も、最後に解き明かされる感じがミステリーみたいでわくわく。
姪っ子ちゃんがいいキャラしてるなぁ。
Posted by ブクログ
宮部みゆき以外にあまり時代小説は読まないが、本の行商が主人公なので手に取った。本を通じて思うことを色んな身分の登場人物が語るのが良かった。「初めての開板」が一番好み。
Posted by ブクログ
こんな時代の捉え方があったと、まず驚かされた。
書物を作るものたちについては読むことがあったが、それを売る人についての話は、私ははじめて出会ったので、とても新鮮だった。
確かに、地方の、たとえば松下村塾などに、学問を学べる書物が豊富にあったのはなぜかと思い当たる。
書物に通じ、それを届ける人があってこそだったのだ。
ここに出てくるのは、名主や商人、町医者などだが、彼らもまた、書を好む人たちだった。顧客の要望を聞き、貴重な本を集め、提供する松月堂の店主の、書物に対する知識の豊富さと、確かな目。
物語もドラマチックで、推理小説のように計算されていて、続きが気になり、引き込まれた。しかも江戸時代の小説らしい人情がある。
このシリーズをもっと読みたいと思った。
Posted by ブクログ
江戸時代・文政期、学術書の行商で、村の寺、手習所、名主の家を回る本屋の目を通して、顧客たる名主(庄屋)との「知の交流」や彼らの暮らしぶりを中心に描く。
主人公は「松月堂」という屋号の本屋を営む平助。彼が扱うのは浄瑠璃本や草双紙などの流行物ではなく、仏書、儒学、国学、医書といった「物之本」(学術本)だ。
顧客たる名主には国学を深く研究し、塙保己一が著した「群書類従」全666冊を購入したいという剛の者もいる。また、蔵書が2300冊を超える名医もいた。
絵画集や和歌も含め様々な学術書や専門書に関する書籍談義には距離感を感じたが、エンターテイメント性のある3つの物語で成り立っているので読みやすかった。
第1話「本売る日々」は、71歳で17歳の女郎上がりの娘を後添えにした小曾根村の名主・惣兵衛の話。娘の罪を資力でかばい、彼女を護ろうとする惣兵衛の想いとその本気度を知った平助がある提案をする。
第2話「鬼に喰われた女」では平助が東隣りの国にある八百比丘尼伝説について尋ねようと名主・藤助のもとへ向かう。その途中、身に降りかかった怪異な体験と、藤助が語る恋する女の50年に及ぶ復讐劇の真相に関する話。
第3話「初めての開板」は100頁弱にわたる長い話。平助の姪っ子が逗留先で持病の喘息発作を起こし、城下の町医・西島晴順の治療を受ける。この医者は名医のようだったが、過去の評判はよくなかった。彼が日本一の名医として名高い小曾根村の60過ぎの医師・佐野淇一との交流があったとされることから、平助はその関係や、晴順がなぜ変化したのかを調べる。その過程で、淇一が含蓄のある言葉を語る。「村医者は町医と異なりなんでも診なければならない」、「医師にとって書物はすこぶる重要」、「私は学者ではない。実地診療に携わる者」
そして、実地診療で着想を得た口訣に触れる。この口訣を集めた書物を巡って晴順が過去に取った行為を暴露するという内容になっている。
第3話では、医師にとっての医書の重要性、手軽な解釈書ではなく原典の研究が大事といった当時の医療に係る奥の深い話と、村の豊かさに貢献する淇一の姿勢に感銘を受け、読みごたえもあった。
Posted by ブクログ
初読み作家さん。
本好きにはたまらない感じかも。
主人公の本に対する知識や情熱がすごい。
不思議な感じの作品もあり、全体的にバランスが良く読みやすかった。
他の作品も読んでみたい。
Posted by ブクログ
本屋を営んでいる松月堂。
文政の時代になり、武家だけが学問をする時代ではなくなった。
近郊の農村の名主ともなれば、学問も深く愛し書物も買い求め収集するものが多かった。
そんな本好きの得意先に本を紹介し、頼まれては探すのが仕事であった。
そんな松月堂の日々を描く物語。
だが、青山文平の本であるだけに、1話1話が実に読み応えがあり、考えさせられたり、現代に置き換えても素晴らしい物語となって居る。
Posted by ブクログ
江戸時代の書物を行商する男と、地方の篤書家の交流。地についた生活のさまが描かれる。小路幸也の東京バンドワゴンシリーズにも通じる、本が人を結びつける。
3編目。今みたいに印刷機がないから皆、書き写した。医学は皆で書き足していくもので、秘伝として独占しない。秘訣と思って盗んだ若者の後悔の日々。師と弟子のその心構えの違い。
Posted by ブクログ
筆者モノ2作目(既読は「妻をめとらば)」)
子育て期は時代小説ばかり手に取って、嵌まり過ぎるほどだったので 何やら 懐かしい思いで時代小説の空気感~文字を辿る。
小さな島国、そこで繰り広げられるちまちました世界観にうんざりして離れただけに、貝原益軒・荻生徂徠・塙保己一から始まって行く国学論は正直、お~と思うほど。
主人公の盛業が「本を売る人」とはいうものの その背景や仕事ぶりを描いている青山氏の博学ぶりに、仰天。
当時の山野を歩く周囲に出たであろう狼、名主や旦那衆、豪農の主人らを相手に語りだけでなく、様々な引出しを用意して綱を引いたり 押したり 心休まる時間がないような平助の日々の心情。
彼の人となりに徐々に引き込まれて行く。
1,2編は男女問題を核に、3編は医学に携わる者の在り様を趣向凝らした観点から綴っている。
江戸期というが中期過ぎの時代だろうか。日本、江戸幕府は中盤。文化文政でも見えるように この時期 爛熟期独特の豊穣たる文化が花開いて行く半面、ともすると視野狭窄臭が顕著になっていった時間。
国民のごく限られたもののみが文字を読め、「本の世界を泳ぐ」ことができた この時代。
地位があり、金が潤沢で生活にゆとりがあった人の間だけを歩いていた平助の商売。
限られた空間とはいえ、かなり文化水準の高い空気を吸っていた感がある。
紙屋から端を発し、「本」に魂を込め、「本を渡す」、「本によって新たな一面が、時代が開いていくことに、一見なよやかな風を持ちつつ、信念はゆるぎない一人の男」のとある断面を描いているこの作品。
W受賞は当然といえる。こういった形で日本の中世期が眼前に再現され、私の読書が 「一見静謐ながら熟した世界」に浸れたのは拾いものだった。
Posted by ブクログ
江戸時代の本屋さんが主人公。意表を突く設定に引き込まれる。その博学ぶりにも。庶民の暮らしぶりが鮮やかに目に浮かぶ。「立ち位置を踏み外さない事が肝要」「医は一人では前へ進めません。みんなが技を高めて、全体の水準が上がって、初めてその先ヘ踏み出す者が出る。一人で成果を抱え込むのではなく、みんなで自慢し合わなければダメ」
Posted by ブクログ
最初の一編はひとつひとつ言葉の意味を調べながら読んだので読みにくいなという印象でしたが、二編目以降は難しい言葉も多くなくスルスルと読めました。二編目がお気に入りです。時代小説ははじめてでしたが、とても面白く同作者の本をまた読んでみたいなと思いました。
Posted by ブクログ
江戸時代、地方の小藩で学術書の行商をする本屋の目を通して語られる庶民の生活。本を愛し、本で学ぶ姿勢は今に勝るとも劣らない。本屋の「私」が遭遇した村で起こったエピソードを描く3つの連作中編。
3作ともしみじみとした良作。
「鬼に喰われた女」は思い人に裏切られ復讐を企てた女の内に秘めた想いが哀しい余韻を残す。
ちょっとしたミステリ仕立ての「初めての開板」は、一線を退くことにした医師が解く、医を志す者のあるべき姿が胸を打つ。
何よりこの本屋が素晴らしい。
「書庫は自分そのものだ。書庫を否定されるのは、自分が否定されるのに等しい。だから、わかってほしい相手ほど、書庫を語るのに臆病になる」
本読みならわかるこの気持ち。本屋の言葉にいちいち深く頷く。
そして、彼の本に対する姿勢や、客に対する誠意、そして本屋という仕事への矜持。
是非シリーズ化して欲しいものです。
Posted by ブクログ
この時代の本の位置づけがよく分かります。
今のような印刷技術もないし、紙も貴重、そして何より本屋が少なかったから、本をたくさん背負って売り歩くというその当時の本を取り巻く文化や生活模様が垣間見えます。
ある書店を営む男性を中心に3話からなる連作短編です。
得意先の主が遊郭から女郎上がりの孫ほど歳が離れた娘を後添えに迎えた話、人魚の肉を食べそれ以来歳を取らなくなるという伝説の女性の復讐劇、常にオドオドして自信がなさそうだった医者がある時を境に評判の良い医者になった謎、どの話にも優しい思いやりが隠されていました。
派手さはないけれど、なんだか引き込まれてしまう、そんな本でした。
Posted by ブクログ
本の行商をなりわいとする男の3つの物語。
最初は行商先の常連客と若い新妻をめぐる語。
出版社が見本やゲラを置いていくように
昔はとっかかりの数冊を置いていって
次の時に注文を取ったりしていたのですね。
2話目はちょっと不思議な都市伝説のような。
行商中に道に迷ったとき助けてくれた女が
地元民が話したがらない
「鬼に喰われた女」ではと思う話。
実際「語り継がれたくない」ものというものも
各地にあったのでしょうね。
最後はヤブ医者が名医になった謎を解く話。
それを通して自分の今後の商売を考える。
そうか、この頃の本屋も
イコール版元になれたのだから
1話目の「置き見本」も納得ですね。
どれも本好き心に静かに沁みるものでした。
Posted by ブクログ
昔の本屋の行商や本の知識がすごいことを知った。本に携わる仕事っていいなと思った。3つともいい話だった。特に2番目のお話がホラーみたいで怖かった。
Posted by ブクログ
感想
作者の古書に対する知識がすごい。当時、どのような本が出回っていたのか?本屋がどのように生計を立てていたのか?を見てきたかのように書いている。
しかも、それを物語風にして平易に記している。内容としては小説というか、当時のことを記した文献に近いように感じた。村の名主や篤志家が書にしたため、保管したからこそ昔の歴史が分かるのだなぁ、などと感じた。
あらすじ
江戸時代の物の本屋の話。主人公は松月堂という本屋を営んでおり、村の名主に本を売り生計を立てている。当時の本は、金持ちしか手に入れることが出来ないものだった。
本屋が名主とどのように接し、当時の人がどのようなことに興味を持っていたのかが記されている。
主なお題は、画集、和歌、医集。
Posted by ブクログ
本の雑誌8月号ベスト4位に選ばれていたので気になって購入。
やはり印象に残ったのは最終話。
なぞの医者がなぜ名医として生まれ変わったのか、それを紐解いていく本屋さん。
本屋さんの葛藤にこちらも心を揺さぶられながら読み進めていくと、最後は心暖まるお話。良かったね!本屋さん。
Posted by ブクログ
江戸時代後期と思われる時代のとある地方藩の本屋店主が本を通じた縁から、隠れた事情を持った人々と関わり、もつれた糸を解きほぐしていくことに繋がっていく物事が三編つづられている。
本好きが高じて、紙屋から本屋に転身した店主の本マニアぶりが身近に感じられることもあり、微笑ましく読んだ。なかなか独特な間合いの部分もあり、しっとりなだけじゃなく、新しさも感じられた。一泊二日の出張のお供に持ち出したが、飛行機の中でさくりと読むのにちょうどよかった。