あらすじ
朝日新聞Webマガジン「&w」大人気連載が書籍化。
さまざまな喪失を経験した人々が、食をきっかけに人生をつかみ直す。「台所」を通して市井の人の希望と再生を綴るノンフィクション。
11月中旬には本書を原作としたコミックが小学館より発売予定。
※こちらの作品は過去に他出版社より配信していた内容と同様となります。重複購入にはお気を付けください
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Posted by ブクログ
生きることは食べること。台所は雄弁。
多くの場合、家には台所がある。
台所は料理をするところ、と思っていたが、当然お菓子を作る場でもあり、コミュニケーションの場でもあり、、その人たちの人となりが出る場所なのだとよく分かった。
夫に先立たれた妻、子供の独立を機に食事を作らないことを決めた夫婦など、それぞれの台所があり、そこに物語がある。台所だけではなくインタビューを通すことで、こんなにも一生懸命に一つの人生を生きているのだと感じられた。
特に“酒と金魚”、“愛のあと“、”「おかゆ、梅干し」。忘れられない献立帳“、”料理写真をつまみに飲む男” 、”続・深夜の指定席”が刺さった。
テレビの作品で「ドキュメント72時間」というドキュメンタリーがあり、街を歩いてすれ違う、一見”平然と生きているように見える人”にも、こんなにも大きな出来事があったのかと驚かされる。それに近い、人が息づく様を強く感じた。
私自身の台所は今どう見えるのだろう。
Posted by ブクログ
2022/11/26リクエスト 3
とても良かった。
東京の台所から、筆者の本を読み始め、次の男と女の台所、で今回。
ライターとして、心の芯に訴える文章を、嫌味なく書く方。どの台所にも、語り尽くせない思いがある。
今回は全体に辛い経験の方も多かった気がするが、それさえも大平氏の筆力で、一つも無駄なことはない、と描かれている。
そして、最後にこの仕事を初めて何年か経った頃、慣れから、経験にあぐらをかき、なんとなーくこう書けばまとまるだろう、と感じていた時期もあった。
と、素直に書かれているところに好感を抱いた。
誰も、こんなこと書かなくっても気づかない。
それをわざわざ文章にする、ということが、大平氏の今後のますますの発展、というのか、今まで以上に必ず書く、そんな固い気持ちを受け取った。
「何も失ったことのない人などいない」
どんなに幸せそうに見える人でも何かを失いながらどうにか自分を収め、繕いながら生きている。
この文章に共感し、少し救われた。
私の台所もぜひ、大平氏の目から見た視線で書いてほしいと思った。