【感想・ネタバレ】農協のフィクサーのレビュー

あらすじ

日本の最後のサンクチュアリを「裏支配」する男のあくなき野心と反骨の半生!

障がいをバネに差別と戦った若き時代から、「京都のドン」野中広務を倒し、昭和的独裁者として1000万人組合員ににらみをきかせるその実像とは。農協にはびこる巨大なカネと権力を牛耳る「昭和的独裁者」を追った渾身ルポ!

農協のフィクサー・中川泰宏とは何者か。
「彼が動かしている組織は強大だ。会長を務める「JAバンク京都信連(京都府信用農業協同組合連合会)」が集める貯金残高は一兆二五六七億円(二〇二二年九月末現在)。副会長を務めるJA共済連(全国共済農業協同組合連合会、JAグループで保険を扱う全国組織)の保有契約高は二二七兆円(二二年上半期現在の長期共済の契約高)を超え、第一生命など大手保険会社と肩を並べる。JA共済連の手足となって保険商品を売り歩く農協の職員数は、一八万六〇〇〇人(二〇年度)に上る」(「プロローグ」より)

ダイヤモンド・オンラインの大反響連載に大幅加筆して書籍化!

(目次)

プロローグ 農協の独裁者、中川泰宏とは何者なのか
第一章 「コメ産地偽装疑惑」報道、七億円裁判の顛末
1 はじまりは訴訟示唆の抗議文
2 自民党の小泉進次郎農林部会長に圧力
3 産地偽装の潔白主張する「二つの虚言」
4 偽装米疑惑にうごめくヒト・モノ・カネ
5 訴訟の「けじめ」として試みた中川への直撃取材
第二章 いじめられっ子の変貌
1 障害のある泣き虫が青年実業家に成長
2 カネを稼いで社会を見返す! 貸金・不動産業で大成功
第三章 農協の甘い汁
1 宿敵・野中広務
2 恐怖支配を象徴する「農協労組潰し」
3 ファミリー企業による悪質な不動産取引
4 フィクサーを取り巻く面々
5 強引な「農家数水増し」で孤立を深める
6 スキャンダルを探して天敵・農水次官解任を画策
7 全国農協を牛耳る野望の果てに
第四章 小泉チルドレンVS政界の狙撃手
1 野中のけん制と中川の反発
2 同和問題改革者から一転、同和事業を利用する
3 北朝鮮支援で一躍中央政界に名をとどろかせる
4 国政進出を阻まれ、野中に「死んでも闘う」と宣言
5 小泉純一郎の加勢で野中陣営に薄氷の勝利
6 「使い捨て」にされた改革者
第五章 京都のフィクサーとして支配体制を確立
1 政治家から「黒幕」に転身
2 中川と野中の「代理戦争」は泥沼化
3 野中亡き後も続いた復讐劇
4 農業版「桜を見る会」、海外宮殿での晩餐会
エピローグ 子飼いたちに利用される昭和的「独裁者」

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Posted by ブクログ

自分は農業を営んでいないものの、親族がJA組合員かつJA職員ということでなんとなく”フィクサー”というワードで興味を持って読んだ。
それもあるので、農協のフィクサーとあるが、ほぼJAグループ京都の話であるのは少し興味が削がれた。
とはいえ、現職会長の中川氏の問題点を丹念な取材で暴いていくところは多少なりとも政治に興味があるとやはり面白い。

ただ、上記の中川氏の問題はあるのだが、京都に限らず日本の農業を推進・支援していくはずのJA(京都)が営農支援に注力せず金融業を強化していくのは、経営的観点ではやむ得ない部分はあるものの、農家生まれとしては残念さが否めない。地元のとある公共のシステムを担当しているシステム会社営業部長からも、似たような話を聞いていてそもそも農協とは何のためにあるのか?という根本的な意義に対する疑問を持った。

audible版

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2024年09月01日

Posted by ブクログ

障害をバネにのしあがり、政治の世界にも進出しつつ、京都の農協のトップに長年君臨して、数々の「悪事」にも手を染めてきた「農協のフィクサー」、あるいは「農協の独裁者」といえる中川泰宏とは何者かに迫ったノンフィクション。
中川泰宏という人物については、小泉チルドレンにいたかなという程度でほとんど何も知らなかったが、京都の農協を支配し、野中広務とも激しい政争を繰り広げたこんな特異な人物がいたのかと驚いた。本人には取材できていないものの、関係者への聴き取りや著書の分析など丹念な取材により中川泰宏の人物像を克明に浮かび下がらせており、とても読み応えのある本だった。本人や農協からの強い抵抗を受けつつも数々の「悪事」を暴き続けた著者のジャーナリストとしての矜持と能力にも敬意を表する。
中川泰宏という男は障害をも味方につけ自らの才覚により京都の農協や政界で勢力を伸ばしてきたということで、ある種の人間的魅力のある人物なのかとは思うが、個人的にはアクが強すぎて、決して関わりたくはないなぁと思った。著者が明らかにした中川の数々の「悪事」、特に、被差別部落でないのに同和対策補助金を受領したことや、農産物輸出促進につながりそうもない海外での晩餐会の開催といった私腹を肥やすためとしかいえない公私混同的な公費の使用は許しがたいものがある。著者などにより問題が公になっているのに、なかなか改められないことにも闇の深さを感じる。
個人的に、現在の農協は農業振興の役に立たずむしろ足枷になっている部分もあるのではないかと批判的に捉えているのだが、中川のような人物が経営層としてのさばっているところに農協をめぐる諸問題の一因があるのではないかと感じた。ただ、著者も最後に指摘しているように、中川のような「独裁者」が跋扈しているのは農協だけでなく、政界、会社、大学など日本社会の様々なところで存在していると思われ、そのような支配を打破していくことが今後の日本社会にとって不可欠だと思う。そのためには、なかなか難しいとは思うが(自分も当事者なら声を上げられるか自信はないが)、周りがちゃんと声を上げていくということが必要だし、著者のような心あるジャーナリズムの役割が重要だと考える。

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2024年04月05日

Posted by ブクログ

このような独裁者の出現が防止できないのは日本だけなのか、他の先進国でもこのような事例があるのか知りたい。
日本では、会社でも、学校、その他の組織でも強力な指導者が現れて人事権を掌握すると、反対勢力は粛清されて長年君臨し、当初は善良な施策を進めていてもどこかで私利私欲に走り、ついには世襲体制を築こうとする。
気づいて逆らおうとしても、排斥され、ますます誰も逆らえなくなる。
やはり大きな組織であれば、この著者のようにマスコミが問題を提起する事が必要であろう。
人事に外部の眼が届きにくい組織は、この手のリスクが高くなる。

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2023年12月12日

Posted by ブクログ


タイトルから農業全体の話かと思いましたが、どちらかというとピンポイントの地域における農協から話が広がります。
そこから、農業全体への問題点、国との関わりに繋がります。

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2023年11月30日

Posted by ブクログ

中川氏の京都の農協の牛耳るまでの歴史と中身

あとがきにあるがケチくさい感じで強い思想は感じられない

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2023年07月17日

Posted by ブクログ

京都の農協を牛耳った中川氏とその悪行(道徳的な意味)を知らしめる内容。野中弘務氏との闘いは読みごたえがある。
惜しいのは週刊誌的な「質問したが期限までに回答がなかった」という表現がいくつか残っているところ。雑誌風になってしまい読む人によっては信憑性を低くみるかもしれない。

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2024年10月11日

Posted by ブクログ

京都の中川さんっていうのは初めて聞いたが、噂に聞く農業のガバナンスの低さを逆手にとって、甘い蜜を吸う吸血鬼。。
政治の世界まで進出していて、野中さんがいなかったらどんな悪行を行なっていたか、、、と背筋が凍る思いで読み進めた。
記者の千本木さんも、いろいろな嫌がらせ、恫喝、そもそも訴訟を起こされたり大変だったと思うが、週刊ダイヤモンド社の骨太の対応はさすがだなぁと感心させられた。

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2024年01月08日

Posted by ブクログ

これまさにいたる組織にあるある譚だ。成り上がる過程では、類まれな気概と才覚を発揮したに違いない。まあ当然ながら中川氏本人にたやすく取材が叶わず、本人の反論が聞けないので、ジャーナリズムのありようとしては不十分だ。核心にせまっていようが、応酬なき言論は話半分にとらえたい。しかし、フィクサーを必要悪としても、昭和型ガバナンスが未だはびこってるのは事実だ。括りで記されるように、独裁者に加えてその取り巻きの責任、すなわち組織のありようを見直しできない体質が何よりも問題だ。(最後の1行で、独裁者が独産者になってる)

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2023年08月20日

Posted by ブクログ

実在する中川泰宏氏という人物を追っているノンフィクション。まあなあ、、、日本の昔からの組織、権力を持つ人って、こんな感じでしょうねー。
小泉チルドレンとして、国会議員にもなっている人物、とは知らなかった。

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2023年06月04日

Posted by ブクログ

組織の私物化が酷い、やり方が悪どい、等と同意しながら読み進めたが最後の最後に提示された意見にハッとした。確かに普段は影に隠れて恩恵を受けておき、結局何かあった時には上のせいにするような人物…
果たして自分には全くそういう面が無かったか?と問われたとしたらハッキリNOと言いきれるだろうか

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2023年04月26日

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