【感想・ネタバレ】貧困と飢饉のレビュー

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Posted by ブクログ 2024年01月10日

貧しい国も貧しいうちは保健と教育に投資した方が良い。「(貧しい国が保健と教育に多くを支出する余裕があるのか)多くの貧しい国々――スリランカ、中国、コスタリカ、インドのケーララ州他――がまさしくそれに成功したという、実証的な事実について述べるだけではなく、裕福な国より貧しい国の方が公衆衛生・医療サービ...続きを読むスや基礎教育制度を提供するコストがはるかに安いという、一般的な事実を理解する必要もある。その理由は、保健も教育も労働集約的な活動であり、貧しい国の方が賃金が低いために保健や教育のコストがずっと安くなるからである。(中略)国が非常に貧しいうちは、これらのサービスに支払わなければならないお金もまた、著しく小さいのだ。」

日本の徳川時代と明治時代の比較研究までも引用している。かなり勉強になった。権原という訳語が少し難解だが、それ以外はわかりやすい。

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Posted by ブクログ 2024年04月21日

飢饉を定義から問い直し、飢饉を一般的に・単純に考えられる食料不足からもたらされるものではなく、権原(自分が所有するもの、交換可能性)によってもたらされるという着眼点は斬新。権限は単なる所得や購買力ではなく、雇用制度や社会保障、相互扶助など公共政策も重要。1つの現象を定期から問い直し、その原因やメカニ...続きを読むズムを事例をもとに分析して1つのアプローチに帰結させるという考え方はとても勉強になった

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Posted by ブクログ 2019年07月21日

インド生まれ、1998年にノーベル経済学賞を取ったアマルティア・センの著書。
「飢饉」が何故起きるのかと探り、食料総供給量の減少によるという従来の通説(FAD)を、原因としてそれだけでは説明できないとして退け、或る階層の人々が食料を手に入れる権原が損なわれるためである、という自説を展開する(権原アプ...続きを読むローチ)。
実際の大飢饉、ベンガル、エチオピア、サヘル地域、バングラディッシュでの統計データに基づいて、詳しく分析しているのだが、数値データを経由して、現実界の様相がそれとはかけ離れた抽象的な学の論理へと跳躍するさまは、デリダなんぞを待つまでもなく脱構築的なスリリングさだ。経済学は社会学的観察から遠い数学的理論に突き進むというこの飛躍・断絶ゆえに面白い。
もっとも、経済学の場合、抽象的理論に留まることなく、常にそれによって政策を導出しようという効用性が重要となる。ケインズの書物がこの実態を明瞭に示している。
センの本書では、大飢饉という悲惨において、「実は国家全体としては食料供給量は十分な状態であり、あまつさえ食料を他国に輸出している状況にありながら、一部の国民はその食料が入手できずに餓死していく」という理不尽な現実を解明する試みとなっている。
その後この経済学説が、学会においてどのように受容されているのか知らないが、少なくともこの本はひとつの「意外な知見」へと導かれるその道程によって面白い。
もちろん、センはFADを全く否定しているわけではなく、「それとは別の仕方で」飢餓の原因にアプローチするひとつの手法を呈示しているのだと理解する。

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