【感想・ネタバレ】クィアする現代日本文学 ケア・動物・語りのレビュー

あらすじ

小説を読むとは、どのような行為なのか。現代の小説は私たちに何を語りかけるのか。

本書では、金井美恵子、村上春樹、田辺聖子、松浦理英子、多和田葉子という5人の作家が1970年代から2010年代にかけて描き出した7つの小説に着目する。これらの小説を、アイデンティティのあり方を多様に読み替え/書き換えていくクィア批評と、動物やケアなどをめぐる批評理論を縦横に組み合わせて読み解き、小説に内在する多様性や小説固有の強度を浮かび上がらせる。

既存の社会秩序や異性愛主義的な社会構造を揺さぶり、読者の主体性やジェンダー/セクシュアリティをめぐるアイデンティティをも変容させていく「現代小説を読むことの可能性」を、小説表現とクィア批評の往還からあざやかに描き出す。現代の小説をふたたび読み返したくなる、「クィアする」文学論。

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Posted by ブクログ

「はじめに」に「読解の方法は単一的な枠組みに寄りかかることなく、それぞれの小説テクストに見合ったさまざまな批評理論や思想を選び取り、小説の解釈の可能性を最大限に広げてみたい。」とある通り、柔軟で開かれた〈読み〉だった。ケアや動物に関する思想との繋がりも見えやすく、「クィア」な読みの可能性を感じる。
文学作品は、統計では捉えられない、固有の感覚や身体性を描くことができる。小説を読むことと書くことがこれだけ豊かな相互行為であれたら、日本の文学にももっと光が当たるのにと思う。

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2024年12月18日

Posted by ブクログ

すごくて一気に読んでしまった。

私は先輩の手ほどきを受けてフェミニズムとかクィアに興味を持ち始めて、その先輩に少しでも追いつきたくて、彼女が読んでいる本を出来る限り読むようにしているのだが、毎回選書センスに驚かされる。『聖なるズー』や『消滅世界』の他バトラー・竹村和子・松浦理英子などをこれまでに紹介してもらった。映画も色々教えてもらって、他者関係における苦しみの根源が家族に関わる欲望にあること、狂気と「正常とされているもの」の連続性、性器中心主義的でない性のあり方など、本当に色々な示唆を得た。この前話しきれなかったのが悔しい。それにしても村上春樹をこんなふうに読めるとは思いもしなかった。金井美恵子、村上春樹、田辺聖子、松浦理英子、多和田葉子という流れを取ることで、何となく昭和から令和に至る欲望を巡る空虚の歴史を辿っている感があった。

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2024年07月22日

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