あらすじ
2022年度新聞協会賞、JCJ賞、早稲田ジャーナリズム大賞奨励賞受賞。ロシアによるウクライナ侵攻を受け、日ロ関係が冷え込む中、安倍晋三元首相は凶弾に倒れた。生前の単独インタビューで、北方領土交渉の軸を「四島返還」から「2島返還」へ大きく転換したことを明らかにした安倍氏は何を信じ、なぜ行き詰まったのか。現在の戦禍の萌芽となった8年前のウクライナ危機を巡る対応や岸田文雄首相と安倍氏のせめぎ合い、侵攻に至るロシア国内の状況や日ロ関係に与えた衝撃などを大幅に加筆した北海道新聞の長期連載を完全書籍化。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
故安倍首相が四島返還から2島返還に切り替えて、
ロシアプーチン大統領北方領土返還交渉を進め、挫折した経緯が刻銘に綴られた400ページの取材記録。
地元北海道新聞ならではの迫力がある。
公式には語られなかった、外務省が大反対していた2島返還。
安倍はこれこそが現状打開の切り札、安倍政権のレガシーづくりと躍起になった。
交渉中に勃発したクリミア侵攻の際は欧米、G7の動きに表向きは同調しつつも、
ソチ五輪の開会式に出るなど、独自の外交を続けていた安倍政権だったが、
自らの退陣、ロシアのウクライナ侵攻でご破算になってしまった。
安倍政権の失敗の一つ。死後の評価。
しかし、、、どうなんだろう。
4島返還を言い続けていてもロシアが動くことはなく、
日ソ共同宣言の文言に沿った動きをする、
というのはある意味現実路線。
現状安倍政権は全く評価しない私だが、
このアプローチは悪くなかったと考える。
ただ、、、プーチンに最初からその気がなく、
日本から経済協力を引き出すためのリップサービスだったとしたら、
安倍外交はただのお人よしだった、ということになるのも事実。
結果だけから見たらそう言わざるを得ない。
なんたって世界がボイコットする中で五輪開会式に参列したほどなのだから。
いい宣伝になってしまった。
鈴木宗男議員のロシア訪問の比ではない。時の首相の行動なのだから。
でも、、2島というアプローチは評価したい。
ただ、同時に思うのは、
ロシアとしては日ロ平和条約を結んで、日本から経済協力を得るのがメリット、
という話があったが、果たして日本の国力はそれに耐えるものなのか、心配になってきた。
アベノミクス、円安路線で日本の国力はどんどん下がっている。
世界のGDPに占める割合も、ピークの2割から今や数パーセント。
そんな国の経済協力などどうでもいい、むしろ政治体制の似ている中国のほうが、
はるかに経済力があり、やり易い、となるのではないか。
というか、そうなったからこそロシアは強硬路線になったのかもしれない。
そういう言及はこの本にはないけれど。
ましてアメリカのポチぶりがより明らかになって、
そんな国に北方領土を返したら、米軍が迫ってくる、と考えるのはロシアとして当然。
つまり、、、10年前はまだプーチンも、安倍がそういうなら2島を返してもいいかなー
と思ってたけど、日本経済の衰退、日本政府のアメリカのぽち化の進行で、
嫌になったと言えるのではないか。
もちろん、ウクライナ侵攻に見るように、ロシア政府、プーチン自身の思考の硬直化もあろうけど。
憲法改正で領土はどこにもやらん、だなんて、、、憲法に書くことかいな。
いずれにしてももうどうでもいい国、日本なのだ。自虐的にならざるを得ない。
Posted by ブクログ
全429ページ。「消えた四島返還」との寂しい或いは物悲しい題名だが、2021年9月発行の前作から、さらに安倍元首相が一人の男に手製の銃で撃たれるという最近の話題を巻頭に盛り込んだのが本作。
北海道新聞の記者達の取材とそれを元に現状と期待を盛り込んだ、なかなか優れた歴史証言と思う。将来にわたり歴史証言として語り継がれるだろう。
ロシア、そしてプーチンの領土に対する凄まじい執着を感じる。安倍はピエロだったのか?いや、純粋さゆえ悩んだことだろう。岸田総理はどうこの問題と対峙してゆくか見守りたい。そして自分も一人の道民として声をあげていきたい。多くの人に是非一度は読んでほしいと思う。