【感想・ネタバレ】藍色ちくちく 魔女の菱刺し工房のレビュー

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言葉にはできない溢れる思い。
大切な人に伝えられるとしたら…。

それを可能にした菱刺しと菱刺し工房に集う仲間たちのリスタートの物語。

菱刺しは青森県に伝わる刺し子。
その模様の一つ一つには意味がありました。

・女子高生綾は職場の人間関係に悩む父親に、
・結婚の決まった結菜は残していく父親に、
そして父親は嫁ぐ娘に、
・母子家庭で育てられた香織は施設で暮らす認    知症の母親に、
登場人物たちはそれぞれ大切な人に菱刺しを贈ります。
菱刺しは忘れていた記憶を呼び覚まし、見落としていた思いにも気づかせてくれました。

また菱刺しには、たとえ間違って針を刺してしまっても何度でもやり直せるという特徴も。
失敗しても大丈夫。
自信は無くてもとりあえず前に。


一針一針進む姿は、まるで人生の歩みのよう。
リスタートは、いつでも、どこでも、何度でも。
温かく励まされたような気持ちになれる作品でした。
癒やされます。

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2024年03月07日

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ネタバレ

面白かったー!知らないことを知るのは楽しい。
民藝、日本各地の産物、青森出身の作者ならでは。本として作品を紹介し残していく。日本の伝統工芸、大切にしたい。

とても温かい話で、まさかなところでうるっとくる。
青森弁が分からなすぎるのも雰囲気出て良い!

菱刺し、綿が育ちにくく寒冷地。法律で農民は麻しか着られなかった時代に厳しい環境を生き抜く知恵、保温効果を高めた菱刺しは、うつくしさの中に重みと強さがある。布の目を塞ぐ。一刺し一刺し愛する家族を守るため。命が繋がるならやる、シンプル。生きるって案外シンプル。 p.218

雨宿りした公民館で出会った菱刺し、進路に悩む綾は出会ったことで人間性まで変わる。それに関わる人々の苦悩と菱刺しの時間の穏やかさと。人々の悩みは昔も今も少なくない。ただ一刺し一刺し進める時間は数を数えて穏やかに、気持ちの波も静まる。

マーサが、真麻で、亡くなってしまった、孫息子の彼女で。引きこもっていた6年間は、ばあちゃんの作品を引き続き仕上げる、指揮を取ることで外の世界と繋がりを持てた。菱刺しが人を繋いでくれる。

菱刺し(青森南部)は偶数の布目を拾い
昔からカラフル、今はくすみカラーが流行り
横長で大らかな雰囲気

こぎん刺し(津軽地方)は奇数目を拾う刺し子
キリッとした雰囲気、糸の色も増えてカラフル、昔は藍色の布に白糸一択

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2023年08月17日

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この本を読んで『菱刺し』を知りました。
菱刺しを通して描かれる、登場人物の心情や人との触れ合いがとても素敵でした。
二話目の結婚に纏わるお話しには感情移入してしまい、子ども目線になったり親目線になったりしながら読みました。そして涙。

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2023年05月15日

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 青森県南部に江戸時代から伝わる刺し子の技法「菱刺し」。その菱刺しに魅せられた人たちを描く群像劇。全4章。

     * * * * *

 物語の柱になるのは2つ。主要人物たちにとって心の糧となる菱刺しと、その技法を手ほどきするより子先生です。

 菱刺しは、その地味ながら美しい紋様や彩りで現代でも愛好家がいるほどですが、元は江戸時代に貧しい庶民たちによって考案された、実用第一の生活の知恵でした。

 綿の栽培が思うに任せぬ本州最北県の青森。麻の衣類で長く厳しい冬を乗りきるためには保温性を高める必要があります。
 目の粗い布地の隙間を麻糸で埋め縫いすることによって、風を通さず、体温も逃さず、さらに着物の強度も増すという一石三鳥の技法が菱刺しです。本当にすごい知恵だと思います。

 でも、菱刺しのいいところは、「誰でもできる」という点にあるのではないでしょうか。
 多少の修練は必要だけれど、複雑な手技がいるわけではないし、しくじってもそこからやり直せばいい。だから時間と根気さえあれば仕上げることができるのです。

 何より意匠が形になっていく喜びや達成感は心を豊かにしてくれます。ひと刺しは小さくても菱刺しによって得られるものがどれだけ大きいかは、本作を通してよくわかりました。

 将来について希望も展望もない女子高生や、認知症を発症した母親への対応に悩む女性、恋人を事故で亡くした青年など、自己の無力感に苦しむ人たちを支え救った物語には説得力があり感動を覚えます。

 そして工房の主宰でもあるより子さん。
 彼女の持つ菱刺しの技術は優れたものであるけれど、より子さんは誇ることも衒うこともしません。ただ、にこやかに輪の中にいざなってくれるのです。

「好きでやってることだすけな、仲間っこが来てければ嬉しいよ」

 気持ちに余裕をなくした人に対してもゆったり穏やかに接する姿が印象的でした。

 他にも、心に残るより子さんのことばがあります。

「ぼちぼちがちょンどいいね、ぼちぼちは自分の速さだ。我は好きだよ」
「なあに、頑張りは人と比べるもんでねえよ」

 より子さんにそっと背中を押され、針を持ち布地に向かう人たち。気づくと、ただひたすら布の目を数え、針を刺し模様を作ることに熱中している。
 そしてそうするうちに、心の中が整理され落ち着いてくる。まるで魔法にかかったかのように。

 より子さんがひとりで息を引き取った場面は悲しかったけれど、その後の、魔法使いの弟子たちが自らの足で立っていくラストシーンは、まったく感涙ものでした。

 各章の主人公に合わせて文体を変えたり、青森弁を効果的に盛り込むなど、高森さんの構成の妙にも感心するばかりです。
 初読みの作家さんですが、ファンになりました。

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2023年05月13日

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ネタバレ

『心安らぐ菱刺しに魅せられて…チーム菱刺し工房』

より子さんが教える菱刺し工房に集う仲間たち
各々、悩みを抱えながらも、居心地の良い工房で菱刺しに没頭する中で、光明を見出していく。
こんな素敵な居場所があったらいいな…

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2023年02月19日

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 青森で菱刺しをやっているおばあさんと、女子高生とが出会い共に菱刺しをやっていく中で、建設中のビルから孫の彼女が誤って落ち亡くなってしまって社会との繋がりを嫌う孫と一緒に菱刺しをやって行く様になる物語です。

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2024年05月15日

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菱刺しを通して、人の温かさや生き方を知っていく、やさしいおはなし。
おばあちゃんの昔の振り返りもありつつ、菱刺しと生きてきたんだなあ、と。
黙々と作業するって、自分と向き合う時間でもあり、切り替えるキッカケをくれたりするんだな、と思いました。

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2024年03月04日

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青森 南部菱刺し工場に関わる人々の四篇。大変な環境の中で育まれた工芸を愛する人々が悩み、成長、互いに励まし合い前進する。より子先生の人柄もあり、淡々と手を動かし心落ち着かせていく。とても良いお話だった。

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2024年01月06日

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ネタバレ

素敵な作品だった。
南部菱刺しに取り組む人々の小さくて確かな再生と、彼・彼女らが集まる工房主のより子さんの生きてきた思い出。
人の繋がりや思い出の優しさと温かさと切なさが菱刺しの模様のようにふと浮かび上がって、その度に泣きそうになりながら読んだ。
本当に素敵な作品だった。

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2023年12月05日

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青森南部に伝わる「菱刺し」
自宅で菱刺しをしている「より子先生」に集まった4人と引きこもりの孫。

それぞれが何かしらの悩みを持っているんですが
より子先生と菱刺しをし、美味しいものを食べ、世代の違う仲間を作る事で癒されます。

これ泣けます!うっかり3回ほど泣きました(꒦ິ⌑︎꒦ີ)
より子さんが可愛い!南部弁が最高!
嫁入りの話のくだりを待合室で読んでて慌ててしまったε~( ̄、 ̄;)ゞフー

装丁も可愛いです〜♪
菱刺し…ポチッと調べてみてください。
素敵ですよ‹‹\(´ω` )/››




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2023年07月26日

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より子さんみたいな先生がいたら、私も足繁く通ってしまう。みんなそれぞれ悩みがあるのに刺している間は本当に楽しそうで。菱刺しの事も初めて知ったけど、魅力的な描写でやってみたくなりました。

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2023年06月18日

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裁縫ができない私ですが、話のはじまりとおわりがかけ離れてそうで、つながっているというジンときた小説でした。
方言もグッときました。笑

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2023年05月31日

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ネタバレ

投げやりな感じの高校生が、ちくちくを知ったら、所作まで変わった!って、おとぎ話すぎて、読みながら涙が出てきました。
出てくる人みんないい人すぎる。
ちくちくを見に行きたくなりました。

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2023年05月27日

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青森南部に江戸時代後期から伝わる刺し子の技法のひとつ菱刺し、伝統工芸を通じて再生する4編いや5編かも!?
八戸にある、お婆ちゃん先生のより子さんの工房。東側に名久井岳とゆう山が見える場所にあるらしい。そこで菱刺しを習う人たちの日常を中心に展開して行くストーリー。
スマホやパソコン、メールにSNSと現在の便利なアイテムが登場する中に一手間一手間作り上げる伝統の菱刺しは相反する存在のようなんですが、程良く生活の中に溶け込み受け継がれてゆく絆を感じました。
語り手が次々変わってゆくのですが章を重ねるごとに深みが出てきて立体感が増してゆく手法は秀逸で、繰返しの中から生み出される模様が人生と重なり見事な作品になっていて。ネクタイとか、スマホカバーに仕上がったりが素敵でした。
一般人が一生の内で経験できる悩みや痛み、苦しみといった類いのほとんどが網羅されてて向き合うことができます。親子の確執、進学、就職、結婚、子育て、親の介護といった問題です。
生徒さんたちの手に寄って、それぞれの人生の四季を彩る1枚の暖簾が完成した。見上げると吉兆の兆しを知らせる彩雲が空に掛かっていた。

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2023年05月26日

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じんわり沁みるような物語。私は残念ながら家庭科、裁縫は全くダメなので菱刺しはやりたいとは思わなかったが検索したいと強く思った。一指し一指し、無心に刺繍していくこと。同じ趣味を持つ仲間たち。ふさいでいるのは布の目ばかりではない。菱刺しを通して岩手に生きる女性たちの思いや生き方が優しく感じられて良い読後感でした。 

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2023年05月24日

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青森県南に伝わる刺し子の南部菱刺し。これがテーマとなっています。
同じように青森にあるこぎん刺し。私はこちらを少しやっている事もあり、一針一針縫っていく所とか、少しずつ模様ができていく様子を目に浮かべながら読みました。
この菱刺しに関わる人達の物語も、うるっと来る場面があったりして心暖まる本でした。

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2023年05月02日

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びっくりするぐらい涙出た。
親というものは本当にどうしようもなくて、
でもありがたい。

ラストの話より、その前の話で死ぬほど泣いた。

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2023年04月24日

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より子さんの菱刺し工房で、布の目を糸でふさぐ。
日常で感じる隙間をふさぐように。
皆、何かを抱えているのだけれど
菱刺しが心を繋いでくれていた。
より子さんが皆を繋いでくれていた。
大切な人への気づかいに
ほっこりとした気持ちになれた。

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2023年04月16日

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ネタバレ

【収録作品】魔女の菱刺し工房/今日の佳き日の矢羽根/ひょうたん/真麻の聴色(ユルシイロ)

より子の菱刺し工房を軸に、そこに関わる人たちの姿とより子の来し方を描いている。

「魔女の菱刺し工房」 やりたいことがなく漫然と日々を過ごしている高2の綾。ブログで知った菱刺しの作品を公民館で見かけたことをきっかけに、より子の菱刺し工房に出入りするようになる。/より子は、菱刺しに夢中になっていった日々を思い出す。
「今日の佳き日の矢羽根」 綾に工房を教えた結菜は、結婚を控えている。結婚準備を進めているなか、些細なことで父親と行き違ってしまい、気まずいまま結婚式を迎える。/より子は結婚したときのことを思い出す。矢羽根柄は出戻らないという意味があるとのこと。
「ひょうたん」 母子家庭で育った香織は、菱刺しが得意な母に教わって菱刺しをするようになった。その母の認知症が進み、施設に預けるが、食が進まず悩んでいた。/より子は、戦友ともいえる義姉と共に舅の介護をした日々を思い出す。
「真麻の聴色」 聴色は、くすんだピンク色。亮平が引きこもりになった経緯が語られる。

何気ないひとつひとつの話が語られるテンポがいい。こういう工房のような場所をもっていると息をしやすい気がする。菱刺しにも興味が湧いた。手芸品は作る過程を味わうものと考えると、うまさとか目的なんて二の次でいいのかもしれない。

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2023年04月14日

Posted by ブクログ

南部菱刺しは色鮮やか。
木綿が育たないほどの寒冷地区。
育てやすい麻を植え、衣類に織った。
麻は風を通しやすく、その隙間を埋めるための刺し子だった。
より子先生のエピソードからも当時の苦労が伝わってくる。

ちくちく縫うだけ。
間違えたらほどけばいい。
行間からあたたかく柔らかな、ふわっとしたものを届けられた気がする。

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2023年02月11日

Posted by ブクログ

伝統工芸の『菱刺し』を中心にして人間関係を描いている。
家族、恋人、友達。
美しいであろう菱刺しを見てみたい。

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2023年02月06日

Posted by ブクログ

伝統工芸品とか、伝統技法とか、昔からあるものというのは生活の知恵が沢山詰め込まれている
私、お裁縫とかとっても苦手です
手先が不器用で、どうしても綺麗にできない
でも、なぜか刺繍は嫌いじゃなくて、小学校の部活で刺繍をやったとき、黙々と針を刺していた

あっという間に時間が過ぎて、もう終わり?って

改めて、伝統を学ぶということは大切だなって思いました

この本にでてくる色の名前
日本独特の表現で、とてもきれい

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2023年08月13日

Posted by ブクログ

刺子という未知の手芸のお話。
ていねいで、文化を感じさせてくれて、
やさしい登場人物たちばかりで
温かい読後感に癒されました。
行ったことのない青森県南部
に俄然興味が湧いてきました。

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2023年05月14日

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