【感想・ネタバレ】震災バブルの怪物たち――原発30キロの境界線で今も続く金と欲をめぐる攻防戦のレビュー

あらすじ

原発30キロの境界線で、今も続く金と欲をめぐる攻防戦

被災地は平常を取り戻し、着々と復興に向かっているように見えるが、
しかし今、新たな問題が発生している。
復興マネーという大金が流れ込んだことによる、被災者間の格差と争いだ。
中でも特に問題なのが東京電力による原発事故の賠償金である。

東電の賠償金の対象者は、
原発~20キロ圏内と20キロ超~30キロ圏内の住民だけで、
この30キロラインからわずかでも外に出れば一切、支払われないことになる。

さらには、賠償金が平均的な4人世帯で約6300万~1億円超という
莫大な金額であることも事態を難しくしている。
境界線の内側と外側とで
「もらった者」と「もらい損なった者」の小競り合いが始まるのだ——。

本書では、
被災地における涙と感動とは別の側面の、莫大で上限の無い震災マネーにより、
己の貪欲の犠牲者となる住民の有様を包み隠さず伝えて行く。
復興の一端を担う被災地の住宅メーカーに勤務していた著者の
「どちらもお客様である」という立場から、
中立な視点で現在の問題を伝えるルポである。


■目次

●1 ようこそ東北のハワイへ
・線量の高い方へ高い方へと追いかける様に避難
・東京・地元のマスコミがいち早く姿を消す
・「避難区域」と「自主避難区域」の扱いの違い
ほか

●2 家屋損壊で大儲け
・ブルーシートを屋根にかけるだけで30万円 !
・「生活再建支援金」受給の為、自分で自分の家を破壊し始める者も
・「加算支援金」パクリの手口。新築物件を建てることにし、後から解約すれば
・『災害復興住宅融資』の審査は甘々
ほか

●3 東電社員、秘密のお買物
・原発事故の加害者・東電社員も賠償金の対象に
・加害者と被害者がご近所様になってしまう
・いわき市に家を買うと賠償金が打ち切られる!?
・テレビではボーナスカットと報道されていたが ……

●4 原発事故による不動産バブル
・農地を高値で売るなら今がチャンス !
・家族間で骨肉の争いも。不動産賠償に絡んだ相続問題
・億の通帳をチラ付かせる避難者と、10万円の手付けが用意できない被災者
・バブル全盛時を凌ぐ、いわき市の地価上昇率
・不動産の買付けはほとんどオークションと同じ
ほか

●5 賠償金 ……ご利用は計画的に

●6 交渉とタカリは紙一重

●7 被災地の噂

■著者 屋敷康蔵
國學院大学卒業。1995年から大手消費者金融で10年間、
不動産担保ローンの貸付けと回収業務に携わるも、法改正により廃業に追い込まれ退職。
2005年より不動産業界に転身し、アパート・マンションや土地活用を行う会社で業務をこなす。
2010年代にローコストを売りにする大手住宅メーカーに転職、
いわき市内の営業所で働く住宅販売の営業マンとなる。
東日本大震災以降は、多くの被災者に住宅を販売した。
その後、同社を退職。現在は、自宅のリフォームや修繕をメインに扱う会社に勤務している。

著者ブログ:サラリーマン地獄絵巻
http://yy0615yy.blog.fc2.com/

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Posted by ブクログ

国が放射能測定値など関係なく同心円状に避難エリアを策定。東電の賠償金はそれに基づいて支給。円から少しでも外れたら賠償金ゼロ。円の内なら数千万~億円単位の賠償金。

いわき市は自主避難区域なので住民は原発の賠償金をもらえない。いわき市の隣の原発至近距離地域は強制避難区域なので住民は賠償金をゲット。彼らはいわき市に移住。いわき市では住宅価格、賃料が高騰。いわき市でも自分で半壊の家を全壊にして生活再建支援金をゲットするなど。カネを得る人を見て自分も自分もとカネに群がる。突然に大金が降って湧いて起こる問題。

原発事故絡みのカネをゲットした人、してない人に断絶ができてる。もらえるものはもらおうと制度の隙間をつくようなスキームがあっという間に拡散する。東電の賠償金をゲットした人は成功体験を持っており、もらえそうなカネはもらおうとするネゴシエーターに。避難指示解除になるとカネがもらえなくなるから解除しなくていい!精神的苦痛に賠償しろ!と言い出す浪江町。

除染作業員が出入りする地域には治安問題。など。
避難解除で帰宅するといっても、商店が戻らないと生活困難、夜は真っ暗。

原発被害地域の問題はメディアでは報道されないものも多い。
現地の人でないと言えないことがある。そういう意義はある本。

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2019年06月05日

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