あらすじ
黎明期から20年近く地道に電子出版に携わってきた「Mr.電子書籍」が、その過去から未来までを自らの軌跡と共に縦横無尽に語る。儲からなくても「やめようと思ったことは一度もない」と断言し、大企業の寡占に異を唱える、刺激的なメッセージを掲げながら目指す新たな「出版」の形とは? 現状分析にも役立つビジネスノンフィクション。
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Posted by ブクログ
荻野さんは何事にも本気に一途にトライしてきた人
法学部を出ながら東映の映画作りに加わり
パイオニアでレーザーディスクに関わり
アメリカのボブスタインと気が合い
彼が持つボイジャー社と出会って
ニホン社を起こすことに発展する
それ以後の20年というもの
電子書籍という媒体を使うことで
広く細かく発言を汲み取ることに携わってきたし
本を機械的に音声化することで聴覚障害者へと
本という媒体を広げてきた
早さを調節できて無感情で読み上げることで
文字そのままを色の付かない状態で提供できる
又webにつなぐことで本の裏側にある膨大な資料や
歴史にワンクリックでリンクすることができる
現状ではドットブックという日本語用の
電子書籍のフォーマット形式に
閲覧ソフトのT-Timeを開発している
こらは電子書籍フォーマットの本命であるEPUBとも
相性が良いらしい
兎も角荻野さんは視野の広い信頼の置ける人物のようである
Posted by ブクログ
ボイジャーの萩野さんの著作。90年代前半のCD-ROMの時代から近くて遠い存在としてお名前を聞いていたが、ようやく同じフィールドにたった。エクスパンドブックから今に至るまでのボイジャーの歴史と萩野さんの思いに触れられる。
Posted by ブクログ
Mr.電子書籍の異名をとる、萩野正昭氏による文字通りの奮戦記。ジャーナリストの視点ではなく、実業として電子書籍に取り組んできた方によるノンフィクションだけに、全編を通して臨場感や必死さが溢れ出ている。おそらく著者にとって今年は、1992年にボイジャー・ジャパン(現・ボイジャー)へ転職して以来、「今年こそ!」と思い続けた”19回目の電子書籍元年”ではないだろうか。そんな愛憎入り交じる著者の思いは、下記の一文に集約される。「お前らに電子書籍の一体何がわかるのか。」
◆自分の視点を持つことの重要性
冒頭、同時多発テロの際、崩壊するビルではなく、その瞬間を見る市民の表情を写した写真の話を題材に、自分の視点を持つことの大切さを訴える。著者自身、レーザーディスクの可能性を模索しているうちに、電子書籍の原型を見い出したという経験を持つ。そこへ導いた独自の視点とは、レーザーディスクを”見る側が時間をコントロールできるメディア”と見立てたこと。出版社の人でもなく、ハード機器メーカーの人でもない著者が、電子書籍の道を切り拓いてこれた要因はここにある。
◆著者の主張する電子書籍の理念
・必要性が本を生み出す
電子書籍によって、売れない本でも出せるということは、ある人々にとっては切実な「必要性」をすくいとる力をもっている。本来電子書籍とは、小さなものののためのメディアである。
・「本」ではなく「読む」を送る
言葉を一定の形式に固定して残すことが本の役割。しかし電子書籍の場合、「読む」ということだけに拘り、形は読み手が再構築できるようにすることが、新しい価値を生み出す。
電子出版を文化として育んでいくためには、最先端の技術に翻弄されたり、巨大プラットフォームによる囲い込みに屈したりせず、「残す」という課題と向き合うことが一番大切なことである。
そんな著者の理念こそ、残していかなければならない。
Posted by ブクログ
誰にもヒーローやヒロインがいると思う。
僕にとっての萩野さんは、数少ないヒーローの一人だ。
高校生の頃Macintoshに出会い、やがてExpanded Bookに出会って、ほんとコンピューターを読むようになり、気がつけばT-Timeもエキスパンドブックビルダーも買っていた。Mac Expoではエキスパンドブック横丁に通った。萩野さんがボイジャージャパンを興された頃から、多分、ずっと追っかけのようなことを、小さく静かに続けてきた。
あれからもう随分たって、気がついたら、マガジン航に時々寄稿させてもらうようになった。ようやく、ちょっとだけ、追いついてきたのだ。
電子書籍奮戦記は、萩野さんのこの20年ほどの、文字通り奮戦記だ。金儲けでなく、小さなものが声を発するためのメディアとしての電子書籍に取り組み続けた、萩野さんの熱い、熱い声だ。
萩野さんの文章は面白い。語り口は丁寧なのだが、語っている内容は常に熱い。革命者のそれなのだ。フロンティアを駆けるものの、道なき草原を走るもののそれなのだ。嘘のない文章を、読んでいるとだんだんと勇気づけられる。元気になる。僕にも何かできるのではないかと信じられるように思う。
電子書籍に興味のある方は是非読んで欲しい。そして書籍に携わる仕事をしている人には、必読の書だ。退けることなく、読むべし。
Posted by ブクログ
20110213「電子書籍奮戦記」荻野正昭
昨年から出版されている数々の電子書籍関連本(以下、電書本)のなかでは正直期待していない一冊だった。
だいたい、創業社長の著作というものはほとんどご自慢のご賢察を連ねるものだから。
本作も最近のブームをみてほら見たことかと荻野氏の自慢話がなされると思いつつ読み進めたものの、正直ごめんなさいを言うしか無い。
昨年からの電書ブームで上っ面の業界ネタ、技術ネタに終始する他の電書本とは違い、本書ではおそらく電子書籍・電子出版ビジネスを既存の出版ビジネスや書籍流通ビジネスの置き換え、売上減の補填のためというようなしみったれた考えではなく、新しいビジネスとして一から電子書籍・電子出版ビジネスを捉え、考え続けてきた唯一の日本人の思いが描かれている。
大きな出版社相手のビジネスではなく、一出版社、一編集者としての思い、それがなかなか結実しないもどかしさ、そんな十数年間乗り越えてきたMr.電子書籍の言葉はいちいち簡潔で重い。
日本の国内事情にあった電子書籍・電子出版ビジネスをこれから創り上げていくにあたっては、こういう「タレント」を活かしきるプロデューサーが必要なんだろうな。
ボクも浅はかな考えをかなり正されました…(^^;)ハハハ。