あらすじ
【推薦!】
「『思いやり』に頼らず『国際人権』の実現を! 日本を世界と未来へと拓く道標がここに。」
中野晃一 氏(政治学者、上智大学国際教養学部教授)
「人権後進国を変えるためには、差別を放置せず、権利保障のため声を上げなければならない。それには国際人権の正しい理解が『武器』になる。」
望月衣塑子 氏(東京新聞記者)
【国際人権の視点から日本を考える】
私たちは、生活のあらゆる場面において人権を「行使」している。
しかし、国際的な人権基準と照らし合わせてみると、日本では人権が守られていない。
コロナによって拡大した貧困問題、損なわれ続ける報道の自由、なくならない女性の差別や入管の問題……そうした問題の根幹には、政府が人権を保障する義務を守っていないことがある。
その状況を変えるためにはどうすればいいのか。
国際人権機関を使って日本の問題に取り組む第一人者が、実例を挙げながらひもとく。
【目次】
第一部 国際人権とは何か
第一章 人権とは?――「思いやり」と「人権」は別物だ
第二章 国際人権をどう使うか
第二部 国際人権から見た日本の問題
第三章 もっとも深刻な人権侵害は貧困
第四章 発展・開発・経済活動と人権
第五章 情報・表現の自由
第六章 男性の問題でもある女性の権利
第七章 なくならない入管収容の人権問題
【おもな内容】
◆生活保護のアクセスのしにくさが抱える問題
◆国連から問題視されている秘密保護法・共謀罪
◆メディアに必要な「独立性」と「連帯」
◆夫婦同一姓の強制は条約違反
◆国際人権法に反する日本の入管法
◆国連からの勧告を知ることで、これからの日本を変える
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Posted by ブクログ
2023年11月の会議で、12月に本書に関する講演を聴講できることを知り、慌てて取り寄せて購読した。聴講はオンラインかと思ったが、対面にて聴講させて頂いた。著者も講演の冒頭で触れていたが、「武器」としての国際人権の「武器」に違和感持つことについては同感である。しかし、書籍の内容は「人権」を研ぎ澄まし、ユニバーサル=普遍的に「人権」をとらえる重要性を重視している。日本が「Universal」を「世界」と訳した事が、そもそもの課題で、「普遍的にとらえる」ことの重要性は説得力がある。
本書は、国際人権の概要を説明し、日本における貧困と生活保護、食料への権利、生理の貧困など、日本政府の大臣などが強弁する論点のすり替えや論点ずらしを喝破する。ビジネスと人権、情報の自由と日本政府の黒塗り文書公開問題、メディアの中立性の課題など、諸外国と比較して歪な状態は、そもそも第2次安倍内閣が行った2013年の特定秘密保護法が諸悪の根源と指摘し、警鐘を鳴らす。男性の問題でもある女性の権利とジェンダー課題、入管収容の人権問題など、今の日本の現状と課題を「人権」を視点に紐解く。世界各地にいる人権に関する特別報告者を介して、日本の「人権」課題に提言行ってもらうことで、日本政府の歪んだ対応を質そうとする提案は、地域主権を基礎にしつつ、国際的「普遍性」を前提とした実践が重要な事を学んだ。
なお、職場や地域で同調圧力に屈し、または過剰適応によって、押し黙る日本人。著者は、クリティカルフレンド=批判をする友達の重要性を指摘するが、自身の課題としても、言動に注意を払いながらも「批判する友人」として、職場の同僚や地域の方々と接していく重要性も学んだ。
Posted by ブクログ
最近はLGBT関連の法案で問題もあったが、ジェンダーの問題、表現の自由の問題などで世界からかなり遅れた国であることが露呈され話題になったが、日本は国際的にも人権意識が遅れていることが本書を読むと想像以上にあることが分かった。世界の人権意識はどんどん進んでおり、国連の人権委員会を中心に是正がされていることが分かる。日本は再三国連より勧告を受けても無視をしている状況で改善どころか後退している印象を受ける。ビジネス上もサプライチェーンの問題もあり、人権は無視できない状況で企業の方が危機意識は持っていると思うが、政治や政府の考え方自体が遅れているとしか思えない。本書に唯一付ける注文としては障害者の人権問題についての記載をしていただけるとより良かったと思われる。
Posted by ブクログ
藤田先生のレクチャーは受けているので知っている内容も多かったが、ほとんどの人はこの事実を知らないでしょう。
日本のジャーナリスト、国会議員、弁護士、すべての国民が読んで知るべき日本の問題。
Posted by ブクログ
日本では思いやりと混同されがちだが、人権とは誰もが持つものであり、人権の実現には政府が義務を遂行する必要があることや、その義務を具体的に規定している各種の国際人権条約がどのようなものか、実際にどのように使われてきたかということがわかりやすく説明されている。そして、日本には様々な人権問題があり、日本政府に対して人権条約機関や特別報告者から勧告がなされてきたが、政府は的外れな反論をするだけでほとんど実施されていないことも。恥ずかしいことこの上ないのだが、日本政府の問題ある態度や解釈を許さない土壌づくりも、多くの人にとって生きやすい社会へと改善することも、私たちが国際人権を知り、「人権の視点」を持つことで実現できるはずだと書かれている。このような本を読むことがその第一歩となったと思う。
Posted by ブクログ
本書を読んで思っていたよりも、日本は人権意識が低いということが分かった。
思いやりなどの精神面が強調され、本来の意味での人権教育が存在しない。(p23)
そのため、政府が解決しなければならない問題も矮小化され、それらを民間に委ねるということが起きている。
例えば、子供食堂などがそうである。子供の貧困に対して、民間に頼り過ぎているきらいがある。
また、国連の「個人通報制度」というのも日本では使うことが出来ない。(フレーズ参照)
そして、「個人通報制度」と並んで長年日本が勧告を受けているのが、「国内人権機関の設立」だ。国内人権機関とは、政府から独立し独自の調査権限を有する実効的な国内人権救済機関のことだ。(p46)
日本政府は、現行の法務省管轄下の人権擁護委員制度が同様の役割を果たしているという立場を取っているのだが、これは独立性にかけ、パリ原則の基準を満たしていないため、原則に沿ったものを遅滞なく設立するように、と条約機関や「普遍的定期的審査」で繰り返し勧告されている。(p47)
他にも、ジャーナリズムにおいて、日本は公平性、独立性に欠けている。
日本の問題は、放送法と電波法により「何が公平か」を決め、電波停止する権限を政府(総務省)に与えているということだ。政府にそのような権限を与えている民主国家は世界で日本だけだ。(p200)
また、民法にも差別的な規定がある。昨今、議論の対象になっている「選択的夫婦別姓」もそうだ。本書を読むまでは選択の自由という側面で捉えていた。しかし、本書を読んでこの問題の根本は女性差別であるということに気付いた。夫婦同姓というのは女性の選択の自由が制限されているということとほぼ等しいということだ。何故なら、ほとんどのカップルは男性の姓を名乗るからである。
この様に政府に人権意識があまり感じられないことを考えると、個人レベルではさらに人権意識が低いのも頷ける。前回の参議院選では差別的な発言をした候補者がいた。海外では差別的な発言をすると逮捕されることもあるそうだ。つまり、犯罪であるということだ。
やはり、教育というものが差別をなくすためには最も大切なことだと思う。それには日本政府自身が国際的な基準での人権意識を持つことが不可欠だ。
Posted by ブクログ
初めて知ることが多くて勉強になる。
人権問題といえば身近な問題とは思えない人も多くいるのではないかと思うが、最近ではジャニーズ問題、宗教2世問題など世間を騒がせた件も人権問題が絡んでいるし、本書にも記載がある選択制夫婦別姓や同性婚問題も人権問題に当たる。
パワハラ、セクハラなどさまざまなハラスメントも突き詰めれば人権問題なのだと思う。
自分の中の人権意識を高めることができた一冊。
Posted by ブクログ
人権とは何か、誰がどんな風に守っているのかの基礎知識と共に、日本がそれを無視しているかがわかる本。入管問題についても問題点がしっかりわかる。
メディアへの圧力、女性への人権侵害などの現状についても知ることができた。
本にも書いてある通り、わがごととして考えないといけない。
Posted by ブクログ
【目次】
第一部 国際人権とは何か
第一章 人権とは?——「思いやり」と「人権」は別物だ
第二章 国際人権をどう使うか
第二部 国際人権から見た日本の問題
第三章 最も深刻な人権侵害は貧困
第四章 発展・開発・経済活動と人権
第五章 情報・表現の自由
第六章 男性の問題でもある女性の権利
第七章 なくならない入管収容の人権問題
【おもな内容】
◆生活保護のアクセスのしにくさが抱える問題
◆国連から問題視されている秘密保護法・共謀罪
◆メディアに必要な「独立性」と「連帯」
◆夫婦同一姓の強制は条約違反
◆国際人権法に反する日本の入管法
◆国連からの勧告を知ることで、これからの日本を変える
Posted by ブクログ
人権=その人が能力を発揮できるように助けを要求する権利 ≠おもいやり
尊重義務 =不当に制限しない
保護義務 =虐待から守る
充足義務 =能力を発揮できる条件を整える
国連人権理事会
特別報告者 公募制 政治性のない専門家 日本の秘密保護法が通報される
貧困=尊厳をもって生きる基本的能力を欠いている状態
相対的貧困:その国の文化、生活水準での比較
2018年 生活保護受給者 164万世帯 210万人 総額3.8兆円
西側の自由権と東側の社会権
人権としての発展の権利 開発と不可分 アフリカ憲章条文 1986年国連総会採択
情報・表現の自由 民主主義の土台 「求め、受け、伝える」
メディアは中立ではなく、独立