【感想・ネタバレ】虐待を受けた子どものアセスメントとケア 心理・福祉領域からの支援と協働のレビュー

あらすじ

子どもの虐待の影響は深刻であり、認知件数は年々増え続けているが、子どもの虐待は要因が多岐にわたり、重篤な症状も出るため、子どもや親に対しては適切なアセスメントが必須となる。その後のケアについても、慎重なアセスメントに基づき必要となるケアを受けることが求められる。
本書では、子どもの虐待に携わる臨床心理士やソーシャルワーカーが、それぞれの専門職の視点からアセスメントとケアについて論じている。心理職、福祉職の協働は現場で多く見られるものの、両者の視点が一冊の本にまとまった例は類を見ない。

筆者は心理職、福祉職として現場で活躍するエキスパートであり、児童養護施設入所後の子どもの心理療法や、ライフストーリーワーク、親子関係再構築といったケアの具体例など、現場での臨床の知がふんだんに盛り込まれている。医療・福祉・教育などのさまざまな領域で児童虐待に関わる方々のために、活用上のヒントに満ちた内容となっている。

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Posted by ブクログ

 虐待は家の中で行われることが多い。そうなれば、当然第三者は把握が難しい。虐待を早期に発見するためには、保育園や学校、或いは地域のコミュニティなどあらゆる領域から子どもの発するサインを拾い上げていくしかない。早い段階で支援に結びつけることができれば、取り得る対応もケアの方法も変わってくるだろう。
 本書は、実践的なアセスメント手法が紹介されており、具体例や効果の所見も把握することができるように、懇切丁寧な記述が魅力である。
 また、ライフストーリーワークと呼ばれる、子どもに直接的に伝えることが憚られる(しかし事実は伝えなければならない)ケースについても言及されており、参考になる部分は多いだろう。
 心理専門職と福祉専門職の協働が日本の強みであると記載があるが、実際問題として、アセスメント結果の共有や互いの職権や領域についての知識がなければ必要な情報共有が適切に捌かれず、連携は困難を増すだろう。
 本気で連携対応を目指すのであれば、本書は欠くことのできない一冊のうちのひとつになるだろうと思う。

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2025年10月31日

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