【感想・ネタバレ】Speed & Scale(スピード・アンド・スケール) 気候危機を解決するためのアクションプランのレビュー

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Posted by ブクログ

ビルゲイツの本やドローアウトの内容など、かなりの文献を参考にしてよくまとめられている。単純にGHGを減らすための技術や置き換えについて説明しただけではなく、どう行動に移すか、どう世の中を動かしていくかの視点でも書かれている。気候変動に関心を寄せる著名人は多く、実際にファンドを作って支援していることも改めて知った。
本書に記載の通り、多くの人が読めばもっと世の中は変わっていくだろうと感じた。OKRに則りとりあえず自分も行動したくなった。

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2024年05月02日

Posted by ブクログ

 しかし正直なところ、このような警告を聞いても大方の人は地球を救うために動き出すことはないだろう。80年先の予測など人間の脳が理解するには遠すぎる。たかだか2~3℃温暖化が進むと言われても、不安を感じるほど深刻なことには思えない。これが最大の障害なのだ。ロードマップ(行程表)を示さなければ、多くの人はなかなか変革にコミットしない。真の変化を起こすには、明確で実現可能な計画が必要なのだ。


「交通の電化」とは、ガソリンやディーゼル・エンジンをプラグイン式の電動自転車、自動車、トラック、バスに転換することだ(第1章)。
「電力の脱炭素化」とは、化石燃料から太陽光、風力など排出ゼロの電源に転換することだ(第2章)。
「食料の見直し」とは、炭素を豊富に含んだ表土の回復、施肥の改善、消費者に排出量の低いタンパク源の摂取を促し、牛肉の消費を減らすよう働きかけること、そして食品廃棄を減らすことだ(第3章)。
「自然保護」とは森林、土壌、海洋への介入と保護を指す(第4章)。
「産業をクリーンにする」とは、すべての製造業、とりわけセメント産業と鉄鋼業での劇的な排出削減を指す(第5章)。
「炭素除去」とは、自然界および技術的なソリューションを活用した大気中の二酸化炭素の除去と長期的貯留を指す(第6章)。

4つの加速要因とは、以下の取り組みによってここに挙げたソリューションの実施を速めることを指す。
→重要な公共政策の実施(第7章)
→ムーブメント(社会運動)からアクション(行動)への転換(第8章)
→強力なテクノロジーの発明とスケール(第9章)
→大規模な資本投入(第10章)


■メアリー・バーラ ゼネラル・モーターズ CEO
 市場のリーダーであるためには、まずは顧客にしっかり集中する必要がある。次に気候変動や公平性といった企業の社会的責任を考えるべきだ。正しいことをしたいという意志が必要であり、実は従業員もそれを期待している。


 2019年、ドイツでは発電量の1%を再生可能エネルギーが占めるようになった。主要な産業国で史上初めて、再生可能エネルギーが「発電量の過半数」を占めるまであと一歩となったのだ。そして2020年夏、それが実現した。新型コロナウイルス感染症のパンデミックによって電力需要が全体的に落ち込むなか、太陽光発電はほぼフル稼働した。人口およそ8000万人のドイツで、再生可能エネルギーは平均55%を占める最大の電源となった。
 シーア法が可決されて以降、ドイツの発電による炭素排出量はほぼ半減した。父が生きてこの日を迎えられれば、とニナ・シーアは話す。

■ムーブメントを アクションに変える
 グレタ・トゥーンベリの場合、それは怒りから始まった。スウェーデンのティーンエイジャーであるトゥーンベリの怒りは、気候危機について学ぶほど強まっていった。地球の気温が数分の1℃上がるごとに、嵐や洪水や山火事が激しさを増す。今のペースで温暖化が進めば、2030年までにさらに1億2000万人が極度の貧困に陥る。トゥーンベリの生まれたストックホルムを含めて、多くの都市が今世紀末には海中に沈む可能性がある。
 気の滅入るような報告書を読み、その意味するところを理解した学生はトゥーンペリだけではない。気候変動に怒りを覚えている若者は他にもいる。だがトゥーンペリは気落ちしただけでは終わらなかった。そんな状況に反発したのだ。15歳になると、学校をサボるようになった。2018年にはスウェーデン議会の前で、黒い大きな文字で「SKOLSTREJKFÖRKLIMATET(気候のための学校ストライキ)」と書いたプラカードを持って座り込みを開始した。最初はたった1人で始めた抗議行動に、他のティーンエイジャーが次々と加わり、まもなくムーブメント(社会運動)になった。人と群れるのを避け、有名になるのを嫌うたった1人の少女の行動から、すべてが始まったのだ。
 2019年1月、トゥーンベリはスイスのダボスで開かれた世界経済フォーラムに招かれ、講演した。「大人はよく「次の世代に希望を与えなければならない」と言います」。集まった企業経営者や世界の指導者に、トゥーンベリはこう語りかけた。「でもみなさんの希望なんていりません。みなさんにはパニックになってほしい。私と同じ恐怖を感じてほしい。それも毎日。そして行動してほしい。自分の家が火事になったときのように行動してほしい。なぜなら、それが今まさに起きていることなのですから」
 ソーシャルメディアによって拡散されたトゥーンベリの言葉は、世界中の何千人という若者の心を揺さぶり、それぞれの住む場所で気候変動ストライキを起こすきっかけとなった。2019年9月20日、世界で400万人が参加する史上最大の環境保護デモが行われた。続いてトゥーンペリは、再び大勢の大人たちの前に立った。今度の舞台は国連だ。「みなさんは空疎な言葉で私の夢と子供時代を奪いました。それでも私はまだ幸四なほうです。多くの人が苦しんでいます。亡くなっています。生態系そのものが崩壊しかかっています。私たちは大量絶滅のはじまりに直面しているというのに、みなさんが口にするのはお金や永遠の経済成長といったおとぎ話ばかり。どうしてそんなことができるのですか」
 その後、トゥーンペリがイギリス議会で演説をしてからほどなくして、同議会は主要国として初めて、2050年までにカーポン・フットプリントをゼロにする法律を可決した。ローマ教皇を含む世界の多くの指導者と対話を重ねたことで、トゥーンベリは自分の運動が本当の変化を生み出そうとしていることに気づいた。トゥーンベリ自身の気持ちも、怒りから慎重な楽観主義へと変わりはじめた。学校に戻ったトゥーンベリはクラスメートにこう語った。「明日なんてないかのように生きることはできないね。だって明日はたしかにあるのだもの」
「地球が直面する最も重大な問題についての最も説得力のある発言者」として、トゥーンベリは2019年、「タイム」誌の選ぶ「今年の人」に選ばれた。しトゥーンベリの主催する団体「フライデー・フォー・フューチャー(未来のための金曜日)」は、いまや世界各地に広がった。権力の座にある人々も、トゥーンベリのメッセージを真摯に受け止めている。「若者たちが毎週、そんなメッセージを掲げてデモ行進している姿を見ると、国家の指導者として中立ではいられない」。フランスのエマニュエル・マクロン大統領は「タイム」誌にこう語った。「彼らのおかげで、私は変わることができた」。指導者は圧力に反応する。圧力はムーブメントから生まれる。ムーブメントは何千人という個人がつくりあげるものだ。ただときには、たった1人から始まることもある。


 2020年12月7日、「エクソンの再生」と銘打ったキャンペーンの一環として、モノ言う株主は手紙爆弾を落とした。「石油とガスの歴史上、エクソンモービルほど影響力のあった会社はない。しかしエクソンが身を置く業界と世界は変化しており、会社は変革を迫られている」。この手紙では、エクソンモービルの取締役会には再生可能エネルギー分野に経験のあるメンバーは独りもいないことが指摘されていた。それに対応してエクソンは初めて自社の排出状況と、気候への悪影響を抑える取り組みの詳細を発表した。
 だが株主はそれでは満足せず、大胆な変革を求めた。化石燃料からの脱却である。バイオ燃料、水素、洋上風力発電に多角化したヨーロッパの石油・ガス会社があるではないか、と。2021年5月、エンジン・ナンバーワンという小さなヘッジファンドが株主の反乱を主導し、独立取締役を3人送り込んだ。非営利の投資家ネットワーク、セレスのアンドリュー・ローガンは「エクソンの業界にとって画期的な出来事だった」と語る。同日には同じく石油大手シェブロンのモノ言う株主が取締役会に反旗を翻し、投票によって製品からの温室効果ガス排出削減を認めさせた。ほぼ同時期にはオランダの裁判所が世界最大の非上場石油会社であるシェルに、2030年までに炭素排出を2019年比45%減らすよう命じた。オックスフォード大学の経済学者ケイト・ラワースはこれを「化石燃料のない未来に向けた社会的転換点」と呼んだ。
 業界トップクラスの石油会社でさえこのような適応を迫られるのなら、変革を逃れられる者はいないことは明確だ。アル・ゴアのような気候リーダーは、かねてからこんな日が来ることを予想していた。ゴアはIPCCのデータを引用しながら、化石燃料企業にはまだ採掘されていない炭素資産が28兆ドルと指摘する。このうち75%に相当する22兆ドルは永遠に地中に埋もれたままになる可能性がある。「化石燃料企業は埋蔵資源の評価額を下方修正している。有害で質の低い資産であり、日の目を見ることはないだろう。こうした企業にとってはまさに破滅的な事態だ」
 化石燃料企業の経営陣は新たな現実を受け入れ、全力を挙げてクリーンエネルギーへの移行を加速しなければならない。ネットゼロ経済を強化するだけでは不十分だ。時代遅れの経済の残骸を葬り去る必要がある。

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2024年02月10日

Posted by ブクログ

俯瞰的にサステナビリティの問題を見られるのが良い。やや政策的な観点が強く、個人のマターと紐づけるのが難しく感じられた。問題意識を持って行動する個人達の意見や取り組みも述べられているが、それぞれは短くしか取り上げられていない。

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2023年02月22日

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