【感想・ネタバレ】雪の練習生のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

クヌートが育つ過程を見ていると、どうしても、母を知らず友達もいなくなったという寂しさが胸に入ってきてしまう。
誰が人間で誰が動物なのか、動物と人間の境界線が曖昧になった世界で、幼年期の思い出や自分のルーツ、鎖のような生の繋がりが感じられる。
言葉を知った段階で、矛盾が発生するのかもしれない。そうなったとき、人間と動物に差があるのか?
あとから静かに奥行きや幅が出てくるような本だった。

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2019年06月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

初めての多和田さん。
簡単に言うとシロクマの三代記なのですが、不思議な読み心地でした。今までに出会ったことのない作家さんです。
人間の言語を解し、話すどころか自伝まで書いてしまったり、かと思えば言葉は通じ合わないのに新聞が読めたりするシロクマたち。
シロクマが神話から歴史になって現代まで降りてくるというか・・・なんとなく『もののけ姫』を思い出したりしました。
物語を読むうちに、種族や言語の境界が曖昧になっていくような感覚を覚えました。
ベルリン動物園のクヌートのことを調べてみたら、精神疾患だったかもしれないと知りました。これはホモサピエンスから偉大なシロクマに捧げる、祈りと贖罪の物語なのかもしれません。

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2022年01月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 現実と空想が入り交じった話。人間の社会の中で動物たちが人間と同等の存在になっているかと思ったら、動物園で見世物になっていたり、サーカスの動物になっていたり。
 これは三代のシロクマの話だ。一代目と二代目の「わたし」とトスカは始終生き生きとしているように思う。しかしながら、三代目のクヌートは、最初は生き生きとしていたのだけれど、人と関わらなくなっていくうちに、そうではなくなっていくような気がした。母親が育児放棄をしてしまい、人間に育てられた。だから普通のシロクマとはちょっと違う。でも、人間ではない。クヌートは曖昧な存在だ。シロクマの世界と人間の世界、ぴったりと合う世界はクヌートに存在しないのではないか、と思ったほどだ。だから、クヌートは孤独だと思った。子どもの頃はマティアスがいたから良かったし、自分を理解してくれる人がいた。でも、成長していくにつれて、周りには誰もいなくなってしまう。シロクマも大変だと思った。
 私が一番気に入った話は『祖母の退化論』だった。ソ連が舞台になっていたところや、これぞ社会主義国家!と思うような生活の雰囲気を味わえたのが良かった。(それは『死の接吻』にも言えるけれど)
 『祖母の退化論』の主人公である「わたし」は恋愛に興味があったり読書をしたりと、普通の人間の牝と同じようなことをしていたため、シロクマであるにも関わらず、なんだか親近感が湧いたような気がする。それから、「サーカス」という場から抜けて自由になっても、社会や周囲の者たちに拘束されて、本当の自由は全く得られていないといった印象を持った。「わたし」がひねって書いた作品の中でだけ、彼女は自由なのではないかと思った。

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2012年06月13日

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