【感想・ネタバレ】HIV マリコの場合のレビュー

あらすじ

これは、レイプされてHIVに感染した、19歳少女の物語です。母親からも友達からも差別され、日本で居場所を失った彼女は、死に場所を求めて単身ハワイへと向かいます。裏稼業、復讐、恋……彼女の凄絶な10年間の生き様を、著者は全力で受け止め、描き切りました。HIV感染者は増加の一途。この物語は他人事ではありません。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

「HIV(ヒト免疫不全ウイルス)は、主に、性交渉によって感染するが、特に、同性愛者が行う、不自然なアナルセックスによって感染の度合いを高めるということで、メディアが大々的に取り上げ、ー 303ページ」
という表記は同性愛者への差別を助長するのではないでしょうか。「不自然」という言葉には「正しくない」という価値評価が含まれるように思います。
また
「女性の場合は、母子感染の危険が大きく、出産をためらわざるを得ない。ー 306ページ」
という表記も気になります。母子感染の危険は1%(石井光太さんは0.5%と書いていたと思いました)に満たない現況、出産をためらう人も多いでしょうが、「ためらう人が多い」じゃなく「ためらわざるを得ない」と言い切るのはどうなんでしょうか。
確かにマリコは可哀そうでした。犯罪被害によってHIVキャリアになってしまったのだから。しかし、その薄幸さが強調されることで、犯罪のないところでHIV感染した人が不利益を被らないように祈ります。
マリコという女性の運命にそくして読めば、不運に翻弄されながらも悪に染まり切らず、最後には大切なものを見つけた物語(ドキュメント)であり、縁あってマリコを見守り続けた著者の、友愛とその限界のドキュメントでもあります。とても貴重なドキュメントだと思います。

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2012年10月30日

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