あらすじ
ギリシア・ローマやキリスト教と並ぶもう一つのヨーロッパの源流とされ、 日本でも根強い人気を誇るケルト文化。だが、 近年ではケルト神話やケルト音楽からイメージされるような島のケルトと歴史上のケルト人との連続性にはさまざまな異論があり、なかにはその実在を疑う「ケルト否定論」すら展開されている。では、古代ケルト人とは何者だったのか。 著名な神話を入り口に、それを考古学的・歴史学的知見と照らし合わせることで、古代ケルトの生活世界へと分け入る入門書。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
古代ケルトの社会・文化・風俗について、近年の研究史を踏まえつつ概説した書。「ケルト」という概念をめぐる近年の論争(「ケルト否定論」など)や最新の分子生物学の成果にも触れつつ、中世のアイルランド神話を足掛かりとして古代ケルト人の実像に迫る。
本書は、古代ケルト人の社会と習俗について紹介するものである。ケルトーーと一言で言えば簡単ではあるが、実は学術の世界での「ケルト」像はここ数十年で大きく揺らいでいる。20世紀後半より従来までの通説に対する疑義が次々と提起され、果ては「ケルト」概念そのもの是非すら問われているという状況なのだ(いわゆる「ケルト否定論」を巡る論争)。本書ではそうした議論の流れや最新の分子生物学からの調査結果(遺骨のDNA調査など)を前置きとした上で、中世に筆写されたアイルランドの神話を考古調査の結果や歴史文献の記述と照らし合わせる形で古代ケルトの解説を行っている。食生活や経済といった風俗、暦や宗教といった文化、そして周辺部族(ローマ帝国など)との関わりを幅広く紹介しており、古代ケルトの概要をコンパクトに知れる一冊である。