【感想・ネタバレ】ハッピークラシー――「幸せ」願望に支配される日常のレビュー

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Posted by ブクログ

幸せの唱道者たちが問題の解決策だと保証したものは「内に逃げろ」ということにすぎなかった
『ハッピークラシー』P.73 より

マインドフルネスに感じる薄っぺらさはこういうことだったのか?と幸せ信仰の虚像を明らかにしてくれる一冊

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2023年05月18日

Posted by ブクログ

ウェルビーイングや幸福度といった指標が重視され、個々人が幸福に至る手法としてのコーチングやカウンセリング、マインドフルネス、そしてポジティブ心理学。それらの根拠が薄弱なこと、そして個々人の幸福に視点を移すことが実は新自由主義の自己責任論と共謀していることを喝破する。個人が幸福であることや幸福を目指すことを否定することはないと思う。ただ、それをすること言うことの背景や根拠は自分なりにしっかり持っておきたい。特にNPOのビジョンや成果としてのウェルビーイング的観点の意味合いやあり方については考えていきたい。

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2023年04月17日

Posted by ブクログ

人生は手に負えないほど複雑で、世界はカオスであり日々混迷を増しているように感じる。
思考停止してシンプルな解決策を求めたい気持ちもわからなくはない。
でも、人生のすべての問題はネガティブであることが原因で、解決策はポジティブであることだなんて乱暴すぎる。

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2023年03月13日

Posted by ブクログ

最近自分もSNSを全てやめました。
理由は幸せやポジティブな気持ちを強要させられている気がしたからです。

罵詈雑言はもちろんダメだが、真っ当な批判や批評も良しとしない空気が現実世界よりも強く漂っている印象がSNSにはあります。

この本はすんなり読むのが難しい回りくどい表現が多かったけれど、とりわけ重要なのは192pにあるくだり。

「たしかに、ネガティヴをポジティブにとらえ直すこと(中略)は好ましいことかもしれない。それは問題ではない。問題なのは、ポジティブであることが専制的になり、人々の不運の大部分と事実上の無力は自業自得だと言い放つ時だ。(中略)さらに問題なのは、こうした態度は経験的、客観的な証拠にもとづいているという幸せの科学の主張だ。(中略)誰でも本来、逆境を強みに変えるのに必要なメカニズムを備えていると言われる世界なら、不平を口にすることもできない。」

不平を口にすることも出来ない世界は不健全なだけでなく、すべての負の側面の原因を個人に押し付けてしまうためそれ以上の社会としての発展も望めません。

ただ、既に不平も言えない世界がSNSから徐々に侵食してきているというのは自分の気のせいでしょうか?

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2023年02月11日

Posted by ブクログ

私たちは「何のために生きているのか?」と問われると答えに窮するが、「幸せになるため」だという解に異議を唱えることは難しい。しかし、マーティン・セリグマンなどが提唱する「ポジティブ心理学」によってさも科学的であるかのように下支えされた幸福信奉に対して私たちは一歩立ち止まって批判的であるべきだと著者は主張する。なぜなら、この考え方には「幸せになれるかなれないかは当人の努力・能力に依存する」、「不幸であることはネガティブである」という、個人主義・能力主義・還元主義・優生学的な思想を強化するからだ。そして、これらは新自由主義的資本主義と好相性であることから、政治的・経済的な問題にも援用されることとなる。主観的な幸福という自明に見える共通価値観を「科学的」に数値化し、政策的意思決定にも利用する考え方は、一見すると功利主義的には公平で合理的に感じられる。しかし、その主観的幸福は経済的豊かさ・所得格差と相関するという研究結果もある。だとすれば、「最大多数の最大幸福」の実現は政策の誤謬となりかねない。
そして、自己の幸福追求には決して終わりがない。そこには、永遠に満たされることのない渇望と増大する不安感・不全感、人生の目的の内面化、そして不幸な他者への無関心や侮蔑を招き、個人主義を加速させていきかねない。外的・構造的な問題を矮小化させ、多くをセルフコントロール可能なものであるかのように責任を過度に個人へと転嫁させた先には、道徳的・倫理的によりよい社会は見えないのではないか?──。
幸福のみを過度に追求し、ネガティブな感情や絶望を軽視することのリスクを本書は示している。社会は極めて複雑で多様であり、不幸な現実に立ち向かうための希望は、幸福の追求にではなく知性と正義にあると言う。しかし、絶対的な正義や解などは存在せず、その対立には必然的に不幸も生まれることになる──。だからといって、安易に幸福の追求に逃げることは思考停止となる。答えは決して出ないのだろうが、現代の行き過ぎた自己幸福優先的な状況を私たちは見つめ直す必要があるのではないだろうか。

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2023年10月28日

Posted by ブクログ

四章に入るまでは完全にハズレ引いた気分だったけど頑張って最後まで読んだよかった。

幸せそのものへの批判ではなく、「幸せ」という本来複雑で、定義不可能な感情を、様々な似非科学を用いて誰にでも再現可能なものとして単純化する「ポジティブ心理学」を主に批判している。 
ポジティブ心理学発展の歴史、それによって誰が利益を得てきたか、それらが能力主義や個人主義を助長しているのではないかなど、実例を挙げながら紹介している。

自己啓発本やインターネットに溢れる幸せになる方法みたいなのも、気分転換や自分について考えるきっかけみたいに使う分には良いと思うが、あくまで批判的な思考をもつことが重要だなと思った。

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2022年12月07日

Posted by ブクログ

自分が、幸せを強要する様な自己啓発本が嫌いな理由が言語化されてた
最初の章と最後の結論は読み応えがあったけど、他は事実をさらう内容だからあんまし入り込めない
周りくどい本って言ってる人いたけどたしかに

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2023年12月01日

Posted by ブクログ

新自由主義とポジティブ心理学の親和性。
個人のマインドセットと努力にさまざまなものを収斂させ、ネガティブな感情を押し込めることを要請する。

「毎年期待値を上回ってこそ“普通”です」と会社の偉い人が言っていたけど、終わりなき幸せ=ハイパフォーマンスの追求ってことなんだろうなと腑に落ちる。

ネガティブであること、批評的であること、大切な力だと思う。

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2023年02月01日

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