ハッピークラシー――「幸せ」願望に支配される日常

ハッピークラシー――「幸せ」願望に支配される日常

「幸せの追求はじつのところ、アメリカ文化のもっとも特徴的な輸出品かつ重要な政治的地平であり、自己啓発本の著者、コーチ、[…]心理学者をはじめとするさまざまな非政治的な関係者らの力によって広められ、推進されてきた。だが幸せの追求がアメリカの政治的地平にとどまらず、経験科学とともに(それを共犯者として)機能するグローバル産業へと成長したのは最近のことだ」(「序」より)。ここで言及される経験科学とは、90年代末に創設されたポジティブ心理学である。「幸せの科学」を謳うこの心理学については、過去にも批判的指摘が数多くなされてきた。本書はそれらをふまえつつ、心理学者と社会学者の共著によって問題を多元的にとらえた先駆的研究である。「ハッピークラシー」は「幸せHappy」による「支配-cracy」を意味する造語。誰もが「幸せ」をめざすべき、「幸せ」なことが大事――社会に溢れるこうしたメッセージは、人びとを際限のない自己啓発、自分らしさ探し、自己管理に向かわせ、問題の解決をつねに自己の内面に求めさせる。それは社会構造的な問題から目を逸らさせる装置としても働き、怒りなどの感情はネガティブ=悪と退けられ、ポジティブであることが善とされる。新自由主義経済と自己責任社会に好都合なこの「幸せ」の興隆は、いかにして作られてきたのか。フランス発ベストセラー待望の翻訳。

...続きを読む

ハッピークラシー――「幸せ」願望に支配される日常 のユーザーレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

    Posted by ブクログ 2023年05月18日

    幸せの唱道者たちが問題の解決策だと保証したものは「内に逃げろ」ということにすぎなかった
    『ハッピークラシー』P.73 より

    マインドフルネスに感じる薄っぺらさはこういうことだったのか?と幸せ信仰の虚像を明らかにしてくれる一冊

    0

    Posted by ブクログ 2023年04月17日

    ウェルビーイングや幸福度といった指標が重視され、個々人が幸福に至る手法としてのコーチングやカウンセリング、マインドフルネス、そしてポジティブ心理学。それらの根拠が薄弱なこと、そして個々人の幸福に視点を移すことが実は新自由主義の自己責任論と共謀していることを喝破する。個人が幸福であることや幸福を目指す...続きを読む

    0

    Posted by ブクログ 2023年03月13日

    人生は手に負えないほど複雑で、世界はカオスであり日々混迷を増しているように感じる。
    思考停止してシンプルな解決策を求めたい気持ちもわからなくはない。
    でも、人生のすべての問題はネガティブであることが原因で、解決策はポジティブであることだなんて乱暴すぎる。

    0

    Posted by ブクログ 2023年02月11日

    最近自分もSNSを全てやめました。
    理由は幸せやポジティブな気持ちを強要させられている気がしたからです。

    罵詈雑言はもちろんダメだが、真っ当な批判や批評も良しとしない空気が現実世界よりも強く漂っている印象がSNSにはあります。

    この本はすんなり読むのが難しい回りくどい表現が多かったけれど、とりわ...続きを読む

    0

    Posted by ブクログ 2023年10月28日

    私たちは「何のために生きているのか?」と問われると答えに窮するが、「幸せになるため」だという解に異議を唱えることは難しい。しかし、マーティン・セリグマンなどが提唱する「ポジティブ心理学」によってさも科学的であるかのように下支えされた幸福信奉に対して私たちは一歩立ち止まって批判的であるべきだと著者は主...続きを読む

    0

    Posted by ブクログ 2022年12月07日

    四章に入るまでは完全にハズレ引いた気分だったけど頑張って最後まで読んだよかった。

    幸せそのものへの批判ではなく、「幸せ」という本来複雑で、定義不可能な感情を、様々な似非科学を用いて誰にでも再現可能なものとして単純化する「ポジティブ心理学」を主に批判している。 
    ポジティブ心理学発展の歴史、それによ...続きを読む

    0

    Posted by ブクログ 2023年12月01日

    自分が、幸せを強要する様な自己啓発本が嫌いな理由が言語化されてた
    最初の章と最後の結論は読み応えがあったけど、他は事実をさらう内容だからあんまし入り込めない
    周りくどい本って言ってる人いたけどたしかに

    0

    Posted by ブクログ 2023年02月01日

    新自由主義とポジティブ心理学の親和性。
    個人のマインドセットと努力にさまざまなものを収斂させ、ネガティブな感情を押し込めることを要請する。

    「毎年期待値を上回ってこそ“普通”です」と会社の偉い人が言っていたけど、終わりなき幸せ=ハイパフォーマンスの追求ってことなんだろうなと腑に落ちる。

    ネガティ...続きを読む

    0

ハッピークラシー――「幸せ」願望に支配される日常 の詳細情報

閲覧環境

  • 【閲覧できる環境】
  • ・ブックライブ for Windows PC(アプリ)
  • ・ブックライブ for iOS(アプリ)
  • ・ブックライブ for Android(アプリ)
  • ・ブックライブ PLUS for Android(アプリ)
  • ・ブラウザビューア

※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。

この本をチェックした人は、こんな本もチェックしています

無料で読める 社会・政治

社会・政治 ランキング

作者のこれもおすすめ

同じジャンルの本を探す