あらすじ
わたしがまだ時折、自殺願望に取り付かれていた頃、サラちゃんは殺された──新人脚本家の甲斐千尋は、新進気鋭の映画監督長谷部香から、新作の相談を受けた。十五年前、引きこもりの男性が高校生の妹を自宅で刺殺後、放火して両親も死に至らしめた『笹塚町一家殺害事件』。笹塚町は千尋の生まれ故郷でもあった。香はこの事件を何故撮りたいのか。千尋はどう向き合うのか。そこには隠された驚愕の「真実」があった……令和最高の衝撃&感動の長篇ミステリー。
感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
新進気鋭の映画監督である"香"と、うだつの上がらない脚本家見習いの"真尋"が「笹塚町一家殺人事件」の真相にせまる湊かなえの『落日』。
本作において最も魅力的だったのは、登場人物たちが持つ「知りたい」という価値観の対比と、その関わり合いを通じて価値観が変容していく様である。
香はかつて、父の死や母からの拒絶に対する自己防衛から「知りたい」という欲求にバリアを張っていた。
しかし、同級生が「最後の晩餐」を調べる姿を見たことをきっかけに、父が最後に見た映画を知りたいと強く願うようになり、「知ることが救いになる」という生き方に変容していく。
一方、真尋は姉の死から目を背け、「真相を知っても事実は変わらない、知りたいと思うのはエゴだ」と語った。
香と衝突する中で自分の逃避に直面し、ついに姉のことを「知りたい」と向き合ったことで、事件の真相へと辿りついてゆく。
本作は「知る」という行為が多角的に描かれている。
知ることは生きる支えであり、前に進む力であり、救いであると同時に、エゴでもあるという。
かのアリストテレスが「すべての人間は、生まれつき知ることを欲する」と述べたように、知ることは人間を人間たらしめる根源的な欲求であることは間違いないだろう。
しかし、そこに「エゴ」というどす黒い側面を孕んでいるということを突きつけられたことは、目からウロコだった。
最後に、タイトルについて考えたい。
『落日』とは、太陽の沈みゆく様を意味する。
事件の真相が真尋の脚本によって暴かれるラストは、
まさに本作にとっての日没、つまり物語の激しい終焉そのものであったように感じる。
随所に散りばめられた伏線が、文字を追うごとに回収されていく様は、まるで走馬灯を見ているかのようだった。
このタイトルは事件の闇の終焉と、登場人物のそれぞれの葛藤の終着点を指し、その様を疾走感あふれる伏線回収により表現したのではないかと推し量る。
心躍る読書体験で、忘れられない一冊となった。
Posted by ブクログ
イヤミスな感じでずっと進むのに最後はちゃんとみんなのきもちが昇華されて終わった。文章量は多いのに読み進めたくなるのは流石で、いつもなら2週間くらいかかりそうなのに5日くらいで読み終わった。
お姉さんの存在絶対怪しいと思ってたけど途中でネタあかしして、さらにもう一段伏線がある。
あとあの子の嫌な性格ぷりが凄い。人生狂わされた同級生男子たち可哀想…結局どちらの事件も元凶はあの子ってことか…って思ったけど、あんまりフォーカスされてないあの両親も大概だな。最後は酒飲んで寝たまま死んでるし。
Posted by ブクログ
やっぱり、湊かなえさんの本が好きだ。この本はイヤミスという感じではないけど、でも事件の裏に隠れていた真実は「ほっこり」とか「感動」とか、そういったものとは違って、人間のドロッとした感情を感じさせるものだなって思う。
人は見たいものを見る、知りたいことを知ろうとする。
Posted by ブクログ
湊かなえの本って
1行目からおもしろいんだよね。
そこが好き。
自分が信じていた真実だと思っていたことが
他の人の視点から語られることによって全く真実ではないことに気づくあの感じが好き。
これって実際の人生もそうだよね。何を信じたらいいのか…?自分が思い込んでいただけなのか…
まさかここがつながっていたのか…とか
どんどん明らかになる感じが読み進めていて楽しいところ。
Posted by ブクログ
久々に湊かなえさんの本を読んだ。
成人してからは湊かなえさんの本ばかり好んで読んでいたから、久々に別の作家さんを読んだ時には読みづらく感じた。
しかし今回湊かなえさんの本を久々に読んだら、これはこれで読みづらく感じた。
文章のクセってあるよね。
お姉さんの件は前半から不穏で、まぁ実際はいないか亡くなってるかってとこかな、とそこそこな段階で気がついた。
物語の真相部分は…まぁ予想もつく話ではあるが、序盤には予想していなかった展開だったので面白く読めた。
読み込みが足りないのかもしれないけど、サラちゃんリキトくんのご両親がリキトくんに暴力振るってた理由ってなんなんでしょう?
サラちゃんが虚言癖で悪いやつなのは兄がイケメンなのに嫉妬しているから、だよね。
なんか最近どんでん返しミステリをたくさん読んだ分、この辺りの詰めの甘さは感じた。そんな短絡的なもんかな人間って、と。
でもこれって、最近に色んな作家さんの本を読んだからこう思うだけで、湊かなえさんの本は毎回そうかも。
もう少し語らせてもらうと、湊かなえさんのミステリは本当に独特。
多くのミステリは「犯人は誰だ」「トリックはなんだ」と進んでいくけども、湊かなえさんのミステリは犯人を探しているわけではない。
その背景にある事実を浮かび上がらせていく。けど、作中にまひろも言っていた通りに、全ての事実わわ知った方がいいということは無くて、知らない方が良いことも世の中本当にたくさんある。
その、知らなくても良いはずの事実をつい覗いてみたくなってしまう、いわばゴシップ的な感性が湊かなえさんの本を読みたいと駆り立てるのかもしれない。
実際、未解決事件の特番や、炎上のまとめサイトなんかを読んでる時と感覚が近いんだよね。
そして湊かなえさんの本は気になって一気に読み進めてしまう分、なおかつ犯人探しの本ではない分、脳内に展開が残らないので多分数年したら話の内容を忘れてしまう。
湊かなえさんの本だけは売ったり捨てたりせずに取っておこうと思う。
そうそう、最後にもう一つ。
イヤミスの女王などと言われてるけどこの本は珍しく希望に向かって終わっていったし救いもあった。終わり方は好きでした。