あらすじ
フィナンシャル・タイムズ紙2021年ベスト・ビジネス書、エコノミスト誌2021年ベストブックスの1冊。
ウクライナ危機の唯一の勝者ともいわれるエネルギー企業。その最たる存在が世界最大級の資源会社、グレンコアに代表されるコモディティー商社だ。グレンコア、ビトル、トラフィギュラ、カーギル。彼らコモディティー商社の存在なくしては世界の資源・穀物・金融取引、そして、国家運営さえもが成り立たない。そして彼らは、日本経済の生命線を握る石油、石炭、鉄鋼、銅、アルミ、その他金属、穀物など、天然資源、農産物取引を牛耳るグローバル資本主義の最後の冒険者でもある。
内戦下のリビアから、コンゴ、クルディスタン、イラク、キューバ、カザフスタン、中国、そしてプーチンのロシアまで。コモディティー商社のトレーダーたちは現金の詰まったブリーフケースを手に世界を飛び回り、脱法行為、賄賂も辞さず、新興国・資源国の権力者に食い込む。そしてグローバル化とスーパー・コモディティー・サイクルの波に乗って巨万の富と巨大なビジネス王朝を築き上げてきた。
だが、その歴史と実像はほとんど知られてこなかった。石油ショックから、ソ連崩壊と冷戦の終焉、中国台頭、新興国・資源ブーム、デリバティブ取引の拡大、世界金融危機に至る世界の大きな変化に、コモディティー商社はどう商機を見出してきたのか。コモディティー業界を長年徹底取材してきたジャーナリストが、その成功・失敗、驚くべき興亡の物語を、規制強化、グローバル化の減速という逆風の強まり、新型コロナ・パンデミックでの本領発揮、新世代トレーダーの登場も交え、スリラーさながらに描き出した話題の書。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
コモディティ商社と著名現物トレーダーの実態と歴史を綴った名著。日本の商社や金融機関のペーパートレーダーは出てこない。
現代の独立系商社の代表格、GlencoreやTrafiguraらの光と闇に迫っている。この業界に関わる人なら間違いなく面白い。
今日のコモディティ商社が、第二次世界大戦後の激動の世の中でどのようにして生まれ、いかにして成長してきたか、マークリッチやグランゼンバーグといった主要人物に焦点を当てながら語られる。
Posted by ブクログ
コモディティ商社について歴史的な背景から踏まえて解説をしている。後半の参考文献のページだけでも50ぺージ以上ある。
コモディティ商社のトレーダーが表舞台に立つことなく、違法も承知の上でビジネスをして世界を動かしてきたことがよくわかる。
特に資源を安く買い付けて時間差で高く売るというようなことを繰り返してきたことが分かる。
政治的な関与はせずにあくまで経済合理性のある取引をすることがポリシーのようだが、実際にはその経済的リターンが取引相手に入ることで政治的な行動が加速されていることもよく分かる。
世界情勢に影響を与えてきたとも言え、知っておいて損はないだろう。
ただ、主に石油やアルミなどの資源の話が多いのである程度天然資源に関する知識はあった方が読みやすいと考えます。
また、最近はコモディティ商社の売り上げ構成比率も変わってきたり、かつての伝説的なトレーダーは皆死去していっているようなので今後はだいぶ流れが変わるだろうとも記載されている。
世界的には気候変動対策が叫ばれて久しいわけであり、需要がまだまだあるとは言え、コモディティ商社も変革を迫られていくのは間違いないだろうと感じました。
資源ビジネスを学ぶ観点としても世界の歴史を学ぶ観点としても有益な本だと感じました。
Posted by ブクログ
コモディティー商社という言葉に惹かれて手に取って見ました。日本では、超大手商社が有名ですが、私の働く外資系企業では、商社は日本の特殊なビジネスモデルとしてアメリカ人に説明をしている先輩たちがいたので、海外にもあるのか?というのが最初の驚き。まぁ、商社とのビジネスがあまりない企業なので深く調べることをしなかっただけとも言えるのですが…
この本、マネーゲームに取り憑かれた人間像に光を当てて詳細に記述されています。内容的には門外漢の自分が読むにはかなりくどい部分もあり読み飛ばした部分もありましたが、オイル、穀物、金属など、地球上で発生する需要と供給のズレ、時間を手玉にとって大金を手に入れるビジネスと言う事が分かります。証券だとアービトラージとか裁定取引とか言われる領域も金融はIT化によって一瞬の鞘取りで大儲けするモデルでは無くなっていますが、物を動かすコモディティー取引では、その儲ける威力は弱まったとはいえまだありそうな感じです。世界で起きている政治問題の裏側で、それとは関係の無いただ儲かるからやると言うビジネスが昔から今も存在し、また、そのシステムに米ドルと言う世界最強の通貨で圧力を掛けるアメリカと、影響を無視する中国。世界情勢などの見方の視点が増えた様にも感じました。公務員に対する賄賂って世界的みても近年まで普通に行われていたのか!とか。まだまだ普通な国はありそう。
この本の想定読者は、一体どう言う人なのか?ちょっと万人受けする感じは無いです。商社に在籍してコモディティー取引に関わる様な人とか?家族が商社で勤めている人、経済のモデルを探求している人? 投資家?
地球規模で物が動く多数のストーリーが載っているので知的好奇心の高い人は気にいる本なのかも知れません。