【感想・ネタバレ】自動起床装置のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

通信社で『起こし屋』として働く主人公と、聡。
仕事柄ある時間に起きなくてはいけない人々を、眠りを妨げることなく快適な目覚めと共に覚醒の世界に呼び戻すアルバイトに従事する2人。
眠りということに並々ならぬ哲学を持つ聡。その哲学に頷きながらも、どこか適当で迎合的なところがある主人公。
聡の並々ならぬ起こし技術と眠りへの哲学に影響されて、主人公と、もちろん聡は「起こし屋」としてのプライドを持ち、淡々と、しかし確実に仕事をこなしていく。
しかし、「自動起床装置」と呼ばれる定刻にゴム袋が膨らんだりしぼんだりすることで寝ている人を自動的に起こす装置の導入により、ささやかな抵抗を試みるも2人は起こし屋としての仕事を終える。


聡が現代社会に警鐘を鳴らす筆者であり、
主人公が少数の声に耳を傾けながらも、結局は時代の流れに無自覚的に乗っていく、私たち大衆なのかもしれない。
新しいコンビニのバイトに誘おうとする主人公に対して、どこかに消えてしまった聡の姿が対照的だ。こんな風に、”少数”は静かに消えてくかと思うと非常に現実的。きっと、主人公は聡のことを心のどこかに留めつつも、日常をこなしていくはずだ。

”現代人は睡眠時間を削って、さも覚醒している時間(起きている時間)こそが大事で、起きている時間こそに優位性があると考えている。でもそれは違う。睡眠も覚醒も同じようにデリケートであり、その境となる就寝とそして起床・目覚めには細心の注意を払わなければいけない。”
こんなようなことを聡が言っていたのが印象的。

作者の辺見庸を好きだと言っていた友人が、彼の作品が好きな理由を「動物を人間と対等な視線で扱うからだ」と話していた。

まさにそんな風に、私たちがおろそかにしている、眠りや目覚めというものを大切に扱っている。
そこにこの小説の新しさというか、読むおもしろさ、ひいては読む価値があるんだと思いますよ~

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2013年05月25日

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